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休八の OSCE タイマー

Dolphin   ver 1.50


■1.背景

6年教育の医・歯・薬学部では、5年生ごろから臨床実習が始まりますが、この臨床実習の前に行われる試験制度がH18年から新たに始まりまし た。 「共 用試験」といい、コンピュータを 使って学力を 問うCBT(シービーティー)と、模擬患者や患者模型を相手にする実習形式のOSCE (オスキー)というふたつの試験からなります。そして、この二つに合格しないと学生は臨床実習を受けることができません。自動車学校で、仮免に合 格 しないと路上教習を受けられないのと似ていますね。

さて、OSCE の試験は、実技試験のため、受験者がステーションと呼ぶ試験室(大学病院の診療室ひとつひとつをあてることが多い)を、順々に移動して室内に設置 された 課題を解く 形式になっています。移動時間、課題読み時間、試験時間、と3つの制限時間があり、これが一人当たり6題あります。実際には受験生が1問ずつずら して出発 し、順次解いていくので、60名いたら65サイクルの試験を管理することになります。この間、休み無く計時を行い、アナウン スをする必要がありますが、これを自動で行うのが、Dolphin です。


■2.Dolphin の仕様と特徴

1.あらかじめ録音したアナウンスを必要なタイミングで必要な回数だけ再生し(図1)、それにあわせて、時間を表示します。また、各ステップ の中 でも終 了までの2分、1分、30秒、10秒にアナウンスで、最後の3秒間は時報で時間経過を知らせます。これらの設定は動作中でも自由に変えられます。 練習用に フィードバック(簡単な説明)の時間も設定できます。音声ファイル や表示メッセージは各大学の実状(試験の様式)にあわせて、細かなカスタマイズが可能です。

LAN 2.たくさんの試験室におかれた PC を LAN で結び、1台のPCを中心にしてシンクロ(=同期)させて計時します(図2)。LAN接続は、ディスプレイケーブルや RS-232C などの接続よりも、敷設が容易で、分岐などの自由度が高く、かつ経費が格段に安いというメリットがあります。また、大学内ではLANが 敷設ずみである部屋が多いため、敷設が不要な場合もあるはずです。無線LANも利用可能です。

3. 計時の中心になるPCをサーバー (Dolphin サーバー)、サーバーにシンクロするPCをクライアント (Dolphin クライアント) と呼びます。クライアントは最大256台まで設置できるように設計しています。Dolphin は、サーバーであっても、作業負荷が軽いため、普通のノートPCが利用できます。

*なお、ここでいうサーバー (Dolphin サーバー) とは、Dolphin をサーバーモードで動かしているPCのことで、ネットワークサーバーやメールサーバー、Webサーバーとは別物です。

*複数のPCに同じ動作をさせる場合、一台のPCから画像情報や音声情 報などを流す方法(=モニターやスピーカーをたくさん接続するような方法)もありますが、Dolphin では個々のPCに計時をさせ、画像を表示させ、音声を再生させています。ただし、これでは個々のPCの音声や計時の一致が難しく、またト ラブル時などの一 斉停止もできません。それで、全PCを LAN でつなぎ、シンクロさせているのです。シンクロのための信号はサーバーから発信されますが、通信の負荷を軽くするため、制御命令と同期信 号のみの通信に留 めています。すなわち、分散型 の実行であり、一種の遠隔操作をしていると言い換えることもできます。

4. 万が一、LAN のトラブルなどで通信が途切れても、個々のPCはスタンドアローンモードに自動で切り替わり、計時を続けます。サーバーの途中切り替えも 可能です(■11 参照)。

5. 対応機種は Windows XP です。なお、Win 2000 / Vista でも動作確認はしておりますが、UACの解除が必要になりますので注意が必要です(■5参照)。

6.
クロック補正機能によって、内部クロックの時間誤差を補正をできるようにしました(■9参 照)。現 在の時間精度は 0.01秒で、時間誤差は1%以下です(ver 1.45 以降)。もちろん、できるだけ内部クロックの正確なPCを選ぶことも大事です。

7. ネットワーク通信時のタイムラグから生じる計時誤差も対応ずみです。Dolphin では PC間のシンクロ精度を誤差0.05秒程度になるようにしています (ver 0.96 以降)。


■3.画面表示

起動直後は、スタンバイという表示になっています。そして、スタートボタンを押すと、OSCE開始前のアナウンスとカウント(プレカウント) が始 まりま す。

 

プレカウントが終わると、いよいよ移動→読み取り→試験の繰り返しになります。 OSCE練習などで利用できるようにフィードバック(簡単な説明)も設定できます(本番ではフィードバックはありま せん)。





 試験中にトラブルがあれば「一時停止」、全ての試験が終了したら、時間の表示が消えて、「OSCE終了」の文字が出ます。





■4.LAN について

(1) 学内ネットワーク(汎用ネットワーク)でも、専用ネットワークでも利用できます。他の無関係のPCが接続していても、障害はありません。ハブの分 岐も可能 です。

(2) 動的IP(DHCP)、静 的IP(固定アドレス)のどちらも利用できます。サーバー・クライアント間での相互認識は、サーバーPCの IP をクライアントから参照する(Dolphin でクライアントモード切り替え時にサーバー IP を入力)ことで、コネクトが成立するようにしています。

*ただし、ルータ機能を持ったハブを使って、部分的に動的IPを導入することは でき ません。 ルーターハブ直下のPCはプライベートアドレスが振り分けられるため、ルーター外のPCからはIPを識別できなくなるからです。ハブで分 岐する時は、ブ リッジ型のハブを利用してください。なお、サーバーもクライアントも全てがひとつのルーターハブの下に置かれる時には、相互の識別が可能 です。

(3) 無線LANも利用できます。有線では届かない場所や設置が難しい場所にもPCを設置できます。

*2006年の鹿大歯学部OSCEにおいては、学内LANとは独立した専用ネッ ト ワークを構 築し(ルータハブがあれば簡単にできる)、かつ無線LANにし て 15台のノートPCを接続させました。思いの外、うまくいきました。音声などのシンクロ状況から見て、有線よりもシンクロ精度が高いよう に感じました。専 用線にしたおかげで設定が楽にな り、無線のおかげで、LANケーブルの敷設が不要となり、準備と撤去がきわめて簡便になりました。

(4) 各PCのファイアウォール設定は障害となりますので解除するか適切に設定してください。


■5.Vista/7 使用時の注意(UACの解除)

XP では特に問題がありませんが、Vista や 7 では、UAC (=ユーザーアカウント制御) の干渉によって動かないことがあります。OSCE 試験の間だけ、UAC を無効にし(=解除)、終了後、速やかにUAC を有効に戻すという方法で対処してください。

<手順>

(1) スタートメニュー>コントロールパネル>ユーザーアカウントで、右の画面を出す。
(2) 「ユーザーアカウント制御の有効化または無効化」をクリック。
(3) 警告画面が出るけれど、「続行」ボタンを押す。
(4) 「ユーザーアカウント制御の有効化または無効化」の画面が出るので、警告をよく理解した上で「ユーザーアカウント制御(UAC)を使ってコン ピュータの保 護に役立たせる」という項目のチェックボックスをオフにする(=UAC を無効化する)。


■6.3つの動作モードについて

Dolphin には3つの動作モード(サーバー・モード、クライアント・モード、スタンドアローン・ モード)があります。設定は起動してから行いますが、トラブルが生じた時の切り替えも可能で柔軟な対応ができます。

[モー ド]
[用 途]
[LAN]
[備 考]
スタンドアローン 練習・ デモ
実習試験用
不要
単体で動かす時のモードです。起動直後はこのモードになっ てい ます。ま た、 クライアント・モードで使用中、何らかの理由でサーバーとの通信が途切れると自動でこのモードに切り替 わり、計時を続行します。
サーバー OSCE実施
(制御用)

全クライアントPCを制御する役割です。自身で計時をしな が ら、 TCP/IP による通信でシンクロ信号と動作命令を全クライ アントPCに送信し続けます
クライアント OSCE実施
(ステーション用)

サーバーから の信号と命令を受けて、計時やアナウンスをします。各ス テーション 内で、受験者と評価者に見える位置に設置してください。


■7.基本操作

 1) 画面表示

・通常の画面(=主画面)はシンプルで、受験生に必要な「時間」と「作業ステップ」が大きく表示されています(右図)。
・全画面表示が基本ですが、右上隅にならぶアイコンをクリックすることで、画面を小さくして使用することもできま す。
・動作中の状況は左下に(下図)、操作ボタンは右下に表示されています(次項)。
・起動時はスタンドアローン・モードになっています。

←100サイクルのうちの1回目
←現在の動作モードと現在時刻

2) ボタン操作

・主画面の右下にボタン群があり、これで殆どの 操作ができます。
・ボタン群は使用できるボタンだけが表示されるようになっています。
・下記のようなボタンがありますので、スタンドアローン・モードで基本的な操作を試してみてください。

[start] 計時の開始。表示パターンは1から2に替わります(右 図)。
[pause] 一時停止。 トラブルなどの時に押して、計時を一時的に止めることができます。表示パターンは3になります (右図)。
[contn.] 計時の継続。[pause] の解除ボタンです。
[?] ヘルプの表示。さらにヘルプを印刷したいときは、ヘルプ画 面 (今、ご覧 になっているこの画面)の上でマウスを右クリックしますとポップアップメニューがで ますので、「印刷」を 選んでください。
[cfg] 設定画面の表示。くわしくは次項。
[ctrl] サーバーモードとクライアントモードの時には [ctrl] ボタンが表示されます。このボタンを押すとサーバー・パネルやクライアント・パネルを開くことができ、サーバーとクライアン トの間での交信ログを見たり、モードの停止などができます。計時中でも使用できます。
[exit] プログラムの終了。時間設定が保存されて終了できます。一 方、 画面右上 の×印のボタンを押しても終了できますが、この 時は時間設定が保存されません。


■8.設定画面

主 画面 右下のボ タン群にある [cfg] を押すと、設定画面(右図)が現れま す。

1. 動作モード
3つのラジオボタン(○ボタン)があります。スタンドアローン、クライアント、サーバーのどの動作モードにするかを選ぶことができます。

2. 各ステップの時間
移動時間、読みとり時間、試験時間、フィードバック、繰り返し数のところに数字を入力し、リターンを押してくださ い。不要なステップには 0 を入れます。

注) リターンを押さないと入力したことになりません。入 力が 正しく行 われたかどうかは、入力時に背景が黄色くなり、これが元の白色に戻ることで確認できま す。計時中でも切り替えできます。

3. アナウンスの On/Off
アナウンスのオン・オフができるチェックボックス群です。計時中でも切り替えできます。

なお、試験開始前のアナウンス開始は3分前からに設定されていますが、 Dolphin.cfg の第1行第1パラメータを変えることで、1分前でも5分前でも、自由に設定を変えられます(■12を参照)。

<以下はボタン群>

[時 刻 合わせ] OSから指定する(システムのコントロールパネルから呼び 出 す)プロパ ティ画面を直接呼び出すことができます。サーバーとして使用する時 は、正確な時刻あわせが必要ですから、これで時刻合わせをしたり、インターネット時計との同期を行ってください。

*現在時刻が全PCで一致していることは運営上、必須です。しかし、タイムサーバーへのアクセス(OS の net time コマンド)が、通信状況やPCの設定によってうまくいかないことが多いようです。それで、Dolphin では計時開始時にPC間の時刻あわせを行っています。

[画 面 の設定] OSのプロパティ画面を直 接呼び出します。スクリーンセーバーや省エネ設定などを 解除してください。これをしておかないと、計時中にスクリーンセーバーなどが発動します。
[作 者 HP] HP「休八ソフトウェア」を参照できます。最新の情報など が入 手できま す。
[ヘ ル プ] ヘルプファイルを参照できます。今、お読みになっている、 この ファイル が開かれます。
[閉 じ る] 設定画面を終了します。
[クロック補正]
PC の内部クロックの実測を行い、補正をすることができます(■9を参照)。


■9.クロック補正画面

コ ン ピュータの 中には、計時のためのクォーツ時計があります。この時計は、コンピュータの操作に影響されないよう、電源も別 (多くはボタン型電池) なのですが、精度にばらつきがあり、また、熱に弱いため、時間精度が悪い場合があります。また、OSや常駐ソフトの設定などによっても十分な精度 が得られ ない場合もあるでしょう。そこで、これらを補正するための機能を ver 1.45 より追加しました。手順は次のとおりです。

(1) 設定画面(■8参照)の [クロック補正] を押す。クロック補正画面が表示される(右図)。

(2) ストップウォッチや精度の高い時計を使って、3分間を測る。この計時の始めと終わりで [計時開始]  と  [計時終了] を押す。これによって、3分間に刻んだ PC内の時計の時間(=クロック示数)がわかる。

注) クロック示数は、私が便宜的に定義した目安で、基準値は 18000 です。これよりも低い値が出た時は、クロックの遅いPC(時間がどんどん遅れるPC)、高い値が出た時は、クロックの早いPC(時間が早 くなるPC)で す。最初は 18000 が表示されるようにプログラムしています。

(3) このクロック示数を採用するならば、[補正する]、そうでないならば、[やり直す] を押します。クロック示数は Dolphin.clk というファイルに保存され、次回以降はこのクロック示数を使って、時間補正されます。

<補足>

1.Dolphin は、サーバー、クライアント、スタンドアローンの3つの動作モードがありますが、いずれの場合も内部クロックの発振に依存して計時しています。し たがっ て、正確に計時するには、この補正作業が必須となります。

2.Dolphin の時間精度は 1/100 秒 (10 ミリ秒) です。すなわち、1/100秒以下のずれ(1%以下の時間誤差)は、現時点では補正できません。 ご了承ください。

3.クロック示数を直接入力することもできます。クロック示数の表示枠(図で 11562 と表示されている部分)に直接数字を入力してください。これでよければ、[補正する]ボタンを押します。これによって任意のクロック 示数を設定でき、微調整がしやすいと思います。

注) リターンを押さないと入力したことになりません。入 力が 正しく行 われたかどうかは、入力時に背景が黄色くなり、これが元の白色に戻ることで確認できます。

4.サーバー・モードでこのクロック補正作業を行うと、全クライアントPCでも同時に補正作業を行うことができます(ver 1.47)。作業効率をかなりあげることができますので、ご利用ください。


■10.OSCE 実施手順


サーバーPC
クライアントPC
試験前(1)
a) LANを敷設します。各試験場のPCをLAN に接続します。それぞれでPCを起動します。

b) スクリーンセーバーやスリープ機能は切っておいてください。

c) OSのセキュリティプログラムが働いて、「ブロック解除をしますか?」というようなメッセージが出ることがあります。ブロックを 解除する、ファイアウォー ル を解除する、としてください。

d) Dolphin がインストールされていなければ、インストールします。

e) Dolphin を起動します。
試験前(2)
a)  [cfg] ボタンを押して、設定画面(■8を参照)を開き、時間や繰り返し回数を入力します。

b) モードのラジオボタンを「サーバー」にします。



c) 「Server Panel」というパネルが開きますので、下の [Server on] を押します。押すとこのボタンは[Server off] となります(上図は押したあと、2つのクライアントが接続した状態)。

d) 「クライアントの接続待ち」から始まる交信ログがパネルのテキストボックスに表示されます。

主画面では左下に「server mode」と表示され、右下には [ctrl] という黄色いボタンが出現します。

e) 接続チェックをするなら、主画面の[start] ボタンを押して計時を始めます。すでにクライアントが接続されていれば、それらがシンクロして動き始めます。また、先にサーバー が動いている状態で、クラ イアントを後から接 続すると、その接続と同時にシンクロされて、サーバーと同じタイミングで計時とアナウンスがされるようになります。こうして接続 の確認と制御のチェックが できます。

f) サーバーパネルに表示されている IP address (上図の例では 172.24.31.31)はクライアント接続に必要です。放送設備を利用するか、担当者に印刷したものを取りに来て もらうとよいでしょう。また、固 定アドレスを使用していれば、IP address に変更がないので、事前の通知が可能です。

[右のクライアントの作業へ続く]
[左のサーバーの操作のあと で]

a) サーバー担当者からの通知(サーバーIPアドレスとサーバー起動の連絡)を受けてから、作業にとりかかります。

*サーバーPCのサーバー機能がオンになり、チェックのための 計時 を開始した後 で す。

b) まず [cfg] ボタンを押して、設定画面(■8を参照)を開きます。モードのラジオボタンを「クライアント」にします。

時間や繰り返し回数を入力する必要はあり ませ ん。サーバー とつながると サーバーの設定情報に従うからです。



c) 「Client Panel」というパネルが開きますので、次の2カ所に情報を入力してから(必須)、下の  [Client On]  を押します。このボタンは [Client Off] に変わります(上図は Off になった状態)。

server IP:  サーバーの IP アドレス(例 172.24.31.31)
client name.: クライアントの識別名(例 1B-tanaka)


d) 「接続要求」から始まる交信ログがパネルのテキストボックスに表示されます。接続が成功すると、主画面左下のところに「client mode」と表示されます。また、右下ボタン群が無くなり、 [ctrl]  という黄色いボタンだけが表示されるようになります。また、サーバーと同じタイミングで計時とアナウンスが始まるはずです。
試験前(3)
全PCとのコネクト(=LANでTCP/IP通信が相互に可能になった状態)が成立したら、 ク ロック補正 をサーバーで行います。すると、全PCでのクロック補正がシンクロして行われ、それぞれのPCで固有のクロック示数が得られ、よ り正しい計時が可能になり ます。
*特に作業はありません。全て の操 作がサー バーからの命令で自動実行されます。
本番
a) すべてのPC接続が確認できたら、テストランの計時をとめてリセットします。本番での計時は、サーバー担当者が主画面 で  [start] を押すことで始まります。

b) 実行中は、すべての命令がサーバーから出され、全クライアントを支配します。なお、サーバーのコントロールパネルにある  [Client List] ボタンを押すと、クライアントリストパネル(下図)が開き、現在接続されているPCを調べることができます。



c) 各クライアントのパワーの差によっては、計時に遅れが生じることもあります。このため、移動時間、読み込み時間、試験時間それぞ れの最初の15秒目に同期 信号がサーバーから出され、サー バーと全クライアントの同期をとっています。これらの信号の交信状態は、サーバー・パネルやクライアント・パネルに表示されま す。

d) 何事もなければ、最後まで計時が進んで、自動で計時が終了します。サーバー担当者が  [exit] を押しますと、クライアントPCも一斉にプログラム終了となります。
*特に作業はありません。全て の操 作がサー バーからの命令で自動実行されます。

*ただし、次のようなチェックメッセージ(=通信エラー発生)が出た時は、速やかに担当者(サーバーPC担当者な ど)に 知らせて、復旧作業をしてください。


<エラー表示が出た時>

a) LANケーブルの断線やハブの故障などの通信エラーが生じると、下記のようなメッセージがでます。



b) この警告は、多くの場合、サーバーPCに表示されますが、トラブルの種類や場所に依ってはエラーの起こったクライアントPCのみ に表示されます。

c) エラーの種類は、サーバーパネル、クライアントパネルの通信ログにコードで示されていますが、試験中は原因追及より現状復帰が重 要ですので、不調の 原因を大まか に把握して、ハブやケーブルを取り替えていく作業を優先してください(詳細は■10)。

d) この警告は [cfg] ボタンや [ctrl] ボタンを押すと消失します。また、サーバー・パネルやクライアント・パネルにある[ChkMsg Clear] ボタンでも消えます。

e) 断線しているのに、クライアント・オン状態で動いていることもあります。そういう場合は、一旦、クライアント・オフして、クライ アント・オンしなおして通 信を復旧してください。


■11. トラブル回避策

1.準備

a) ネットワークやコンピュータに精通した人が対処するのが大事です。係りと分担を決めておきましょう。

b) 予備のPC、ハブ、ケーブルなどは必須です。係りに持たせましょう。

c) 連絡体制をきちんとしておきましょう。病院内PHSが使えると便利です。

d) トラブル回避の練習をしておきましょう。テストランの際に行うとよいでしょう。対応を間違って、状況を悪くするようなことは避けねばなりません。

2. 停電、天災など規模の大きなトラブルが発生した時

a) 全体を一時的に停止します。

b) サーバー係は  [pause] ボタンを押して、計時を一時中止します。この時刻は記録しておく方がよいでしょう。また、断線などにより通信が先に切れていたら、各ステー ションでは計時がスタンドアローンに自動切換えとなって計時が進んでいる場合があります。すぐに各ステーションの状況を確認し、部屋ごと に動 作が異なって いるような状況がないようにします。再開までに各PCとの接続チェックをしておきます。

c) 接続チェックと再開については、状況次第です。テストランから行った方がいい時も、すぐに再開できる時もあるでしょう。テストランから行う時 は、途中まで カウントしていたのをリセットすることになりますから、現在のカウント段階を記録しておきます。そして、再開時には「設定画面」の回数設定を 減らして(た とえば最初100回で設定していて、42回目のサイクルで中断したなら、59回に減じて始める、など)、使用します。

3.ひとつの部屋でのみ生じたPCや回線の不調の時

a) 全体は動かしたままで、問題の部屋のみに対処します。基本的に試験を止めない。

b) 問題のPCがスタンドアローンで動いていれば、そのまま計時を続行させます。PCが止まっていたり、明らかに表示の時間がおかしい場合は、近 くのステー ションのタイマーを参考にスタッフが口頭で時間の修正や学生への指示を行います。

c) まず断線チェックを行い、次に PCの操作や交換を行うことになると思います。なお、ステーションへの出入りは最小限にし、交換などの作業はできるだけ「移動時間」中に行っ て、受験者へ の影響を最小限にする配慮が必要です。また、PCが止まっている場合は、予備PCで計時します。

d) 状況、原因、対処を表にまとめます。実際には原因を特定することよりも復旧が優先されるので、下記の★印の作業をまず行う方がよいと思います。

[状 況]
[原 因]
[対 処]
計時が止まっている。
再開できない。
クライアント接続できない。
OSCEタイマーの不調 再設定。再操作。
クライアントPC自体の 不調 予備のPCに取り替える(★)。
PCがスタンドアローンで動いている。
クライアント接続できない。
ハブのランプが消えている。
ケーブルの断線か接続不 良 ケーブルのつなぎ直し。ハブのランプが点灯しなけれ ば、取 替え。それで も駄目ならハブの不調が考えられる。
ハブの不調 ハブを代える(★)。

4.途中からのクライアント参加の時

a) 計時の途中であっても、クライアントモードでサーバーに接続しますと、瞬時に同期され、サーバーと同じ計時とアナウンスがなされるようになり ます。こ れは、実施中、トラブルなどによって必要となるPC切り替えを想定した仕様です。

b) なお、この仕様を利用することで、設営時の接続チェックもできます。すなわち、サーバーを先行して計時させておき、クライアントをその後で接 続させていき ますと、接続がうまくいったら、すぐにサーバーと同期して計時するようになるからです。

5.サーバーPCの不調の時

a) サーバーの不調に備え、必ず予備サーバーとしてPCを1台用意しておき、サーバー室においておきます。このPCはクライアントとして接続して おきます。

b) サーバーが途中でおかしくなったときは、全クライアントはスタンドアローンに切り替わってそれぞれで計時しているはずです。これでしばらくは 持ちますの で、この間に、各ステーションに連絡をして、予備サーバーのIP アドレスに書き換えてもらってクライアント接続をしてもらいます。

注) 計時は停めずに再接続できます。ただし、再接続 の際 に、時間の修 正が行われ、場合によっては試験時間が1秒長くなった(または短くなった)というケースも生じえます。ですから、できれば再接続はこうし た影響の少ない 「移動時間」中に行うとよいでしょう。

c) なお、スマートな方法としては、予備サーバーのIPアドレスを正規サーバーのIPアドレスに書き換えてしまう手があります。これがうまくいく と、各ステー ションからのクライアント接続の際に、IPの書き換えが不要になり、より簡単に接続を復旧できます。


■12.カスタマイズ

(1) Dolphin の設定は Dolphin.cfg というファイルに保存されています。Dolphin の実行ファイル( Dolphin.exe )と同じフォルダにあります。この設定ファイルはテキスト形式ですから、エディタなどで開き、直接、設定内容を書き換えることができます。そし て、 Dolphin 上からできる変更よりも さらに細かい設定の変更が可能になります。

(2) Dolphin.cfg の内容は次のとおりです。例として、デフォルト設定の内容を示します。


[内 容] [内容の説明]
[対 応する音 声ファイ ルの内容]
1行目
3,1,1,5,1,100 試験開始前の時間、移動時間、読みとり時間、試験時間、フィードバック時間、 繰り 返し数
2行目
1,1,1,1,1,1,1
アナウンスのオン・オフ(On=1, Off=0)
3行目 b2min.wav 2分前のアナウンスの音声ファイル名 "残り2分です"
4行目 b1min.wav 1分前のアナウンスの音声ファイル名 "残り1分です"
5行目 b30sec.wav 30秒前のアナウンスの音声ファイル名 "30秒前"
6行目 b10sec.wav 10秒前のアナウンスの音声ファイル名 "10秒前"
7行目 serif0.wav 試験開始前のアナウンスの音声ファイル名 "まもなくOSCEを開始します。最初の受 験生 は準備を してください。 "
8行目
serif1.wav
移動開始のアナウンスの音声ファイル名 "次のステーションに移動してください。"
9行目 serif2.wav
読みとり開始のアナウンスの音声ファイル名 "課題を読んでください。"
10行目 serif3.wav
試験開始のアナウンスの音声ファイル名 "試験開始です。"
11行目 serif4.wav フィードバック開始のアナウンスの音声ファ イル 名
"フィードバックを受けてください。"
12行目 serif5.wav 試験終了のアナウンスの音声ファイル名 "OSCEが終了しました。ご苦労様でし た。"
13行目
jihou440.wav
3, 2, 1秒前を示す時報の音声ファイル名 440Hzのビープ音
14行目
jihou880.wav 0秒を示す時報の音声ファイル名 880Hzのビープ音
15行目 試験開始前
試験開始前に表示されるメッセージ
16行目 移動時間 移動時間に表示されるメッセージ
17行目 課題読み時間 課題読み時間に表示されるメッセージ
18行目 試験時間 試験時間に表示されるメッセージ
19行目 フィードバック
フィードバック中に表示されるメッセージ

20行目 スタンバイ
試験開始前に表示されるメッセージ

21行目 一時停止
一時停止時に表示されるメッセージ

22行目 1001
通信に使用するポート(ここの変更は要注 意!)

23行目 172.24.31.31
サーバーIP(クライアントパネルで入力)
24行目 1A-yamada
クライアント名(クライアントパネルで入 力)

(3) 1行目: 試験開始前のアナウンス開始は3分前からにしてありますが、第1パラメータを変えることで、1分前でも5分前でも、自由に設定を変えら れます。 第2パラメータ以降は、設定画面での指定どおりです。

(4) 3-12行目: アナウンスに使われる wav ファイル名です。ここを別なものに代えることもできます。

(5) 13-14行目: 最後の3秒間の時報(ピ・ピ・ピ・プーンという時報)の音声ファイル名

(6) 15-21行目: 主画面に表示されるメッセージです。ここも任意のメッセージに書き換えることができます。ただし、あまり長いメッセージですと 画 面が乱れて、却って見づらいものになりますから、ご注意ください。

(7) 22行目: サーバーとクライアント間でTCP/IPによる通信を行う際のポート番号です。デフォルトとして 1001 番を使用するようにしていますが、このポートがふさがっている場合などは、変更が可能です。ただし、学内ネットワークなどを利用する場合は、ネッ トワーク 管理者に相談して、空きポートの使用許可が必要です。ここの変更は十分な知識のある方のみ、行ってください。

(8) 23-24行目: クライアントパネルの server IP と client name の入力欄の内容を保存します。

(9) 書き換えの際には、改行箇所やピリオドなどの打ち方を変更しないでください。なお、書き換えの際の不備が原因で、Dolphin がうまく動かなくなった場 合、書き換えたファイルを消去してから、Dolphin を起動します。すると、デフォルト設定の Dolphin.cfg が自動作成されます。


■13.コマンド引数

コマンドラインから実行する時に、次のような引数をつけることができます。

引 数
動 作
1
起動後、設定画面を出した状態で待機します。
2
起動後、クライアントパネルを出した状態で待機します。
3
起動後、サーバーパネルを出した状態で待機します。

この機能は、バッチ処理を前提に作ったものです。たとえば、次のようなバッチを組み、解凍した状態の Dolphin のファイル群(setup.exe, setup.lst, dolphi.cab)を一緒にUSBメモリやCDに入れておけば、設定の手間をかなり短縮できます。たくさんのPCをセッティングする時などと ても便利 です。

control.exe firewall.cpl         
control.exe ncpa.cpl          
setup.exe                     
copy "Dolphin.cfg" "c:\Program Files\Q-soft\Dolphin\Dolphin.cfg" /Y
cd "c:\Program Files\Q-soft\Dolphin"
c:
Dolphin.exe 2

1行目: ファイアウォールの設定
2行目: ネットワークの接続先
3行目: Dolphinのインストール(setup.exe, setup.lst, dolphi.cab が同じディレクトリにあること)
4行目: 設定ファイルのコピー(サーバーIPなどを入力した設定ファイル Dolphin.cfg を作っておく)
5行目: c: のディレクトリを変えておく
6行目: c: に移る
7行目: Dolphinをクライアントモードで実行。実行後、Client name などを入れて Client on する。


■14.補足

(1) Dolphin という命名

錦江湾(=鹿児島湾、桜島がある)には野生イルカの群れが回遊しており、時々、見ることができます。何匹も並んで泳ぎながら、しかも水面を縫 うよ うに くるりくるりとローリングしながら泳ぐことがあります。息もぴったりで、いったい、どのようにやっているのだろうと思います。きっと、先頭のイル カが小さ な合図を送っていて、それに従って後続のイルカが同じ動作をするのではないかと想像しているところです。それで、PC群をイルカ群のようにするソ フトウェ アということで、Dolphin と名付けました。サーバーモードのPCが先頭のイルカで、動作命令や同期命令をクライアントPC群に送り続けるのです。

ちなみに TCP で信号を送受信する部分は、最初は別ソフトとして作成しました。名前は Flipper です (^o^)。

(2) 関連論文

田畑ほか、「ローカル・エリア・ネットワーク (LAN) を利用して同期と制御を行う OSCE 進行プログラム "Dolphin" 」 日本歯科医学教育学会雑誌 22(3):61-67 (2006)

(3) 使用実績

2005年・H17年度〜 鹿児島大学・歯学部  [歯学系OSCE]
2006年・H18年度〜 鹿児島大学・医学部  [医学系OSCE]
2007年・H19年度〜 大阪大学・歯学部
 [歯学系OSCE]

大阪大谷大学・薬学部
 [薬学系OSCE]
2009年・H21年度〜
第一薬科大学
 [薬学系OSCE]

日本薬科大学
 [薬学系OSCE]
2011年・H23年度〜
東京医科歯科大学・歯学部
 [歯学系OSCE]

*この他にもご利用実績のある大学がありましたら、お知らせください。



■15.履歴

ver 1.50 ヘルプとパッケージの見直し。公 開
2012/8/17
ver 1.48 第4回鹿児島大学歯学部OSCE(2009 年9月)で使用。非公開。
(1) 横長画面に対応。
(2) 時間精度を 0.1秒から 0.01秒に上げる。
(3) PCのクロック誤差を補正するため、クロック補正機能をつける。
(4) クロック補正をシンクロして全PCで一斉にできるようにする。
(5) エラーメッセージを改良。
2009/6/6
ver 1.30 フリーウェアとしてベクターにて公開
(1) 音がくぐもる現象があったが、wav ファイルの Prev のタイミングを替えることで解決。
(2) サーバーパネル、クライアントパネル、PCリストパネルを可変ウィンドウに替える。
(3) サーバー・オンとクラインアント・オンのオン・オフをトグルスイッチ化。

(4) サーバーパネルを改善し、 エラー発生時の原因PCを表示できるようにした。
2006/10/1
ver 1.26 第1回鹿児島大学歯学部OSCE(2006 年9 月)で 使 用。非公開。
(1) デジタル表示のちらつきを最小限に。表示色の一部変更。
(2) 試験前のカウントとアナウンスができるように変更。これに伴い設定ファイルの書式を変更。
(3) 設定画面に、時刻合わせ、画面設定、HP参照などができるボタンを設置。
(4) 練習用にフィードバックの時間を加えた。これに伴い、設定画面と設定ファイルを変更。
(5) クライアントパネルの入力情報を保存できるようにした。ポート番号も設定変更可能に。
(6) 実行時に引数をつけ、任意の動作モードを指定できるようにした。
(7) 断線などによる通信エラー発生時、「エラー発生」という点滅表示で示すようにした。
(8) サーバーモードで表示されるクライアントリストパネルを改良。つねにソートされるようにした。
(9) 待機時にもシンクロをできるようにして、最初のアナウンスからタイミングが合うようにした。
2006/9/22
ver 1.00 フリーウェアとしてベクターにて公開
(1) 表示メッセージを増やす。こ れにより設定ファイルの書式を変更。
(2) 各PCの計時誤差を0.5秒から 0.05秒までに短縮。
(3) 計時の精度をあげるために内部クロックの参照をすべて取りやめる。net time コマンドも使わないようにする。
(4) 現在時刻の表示を追加。
2005/10/30
ver 0.90 鹿児島大学歯学部OSCE最 終トライアル(2005年9月)にて使用。非公開。
(1) サーバー側のエラートラップを強化。テスト時の頻繁な断 線/再接続操作に耐えられるようにする。
(2) サーバー側にはサブパネルを新規作成し、接続されているクライアントのリストを表示。
(3) クライアント側はIPアドレスの入力画面をひとつにまとめる。
(4) チャット機能を削除し、代わりに通信状態を表示できるよ うにする。
(5) 遅れ補正信号の方式を変更。
2005/9/13
ver 0.60 通信エラーのトラップ、誤操作のトラップ、 時間 の同期 ルーチン、音声ルーチン、内部クロックの参照など、予定していたルーチンのほぼすべてが完成。こ れで最初のテストランを行 う。非公開。 2005/8/1
ver 0.00 通信部(フリッパー)が完成し、本格的な作 成に とりかか る。
2005/7/15


■16.謝辞

このソフトは、私が鹿大歯学部に居た時に開発しました。これまでお世話になった次の方々に感謝します。

・LAN使用のタイマー作成のきっかけをくださった小椋幹記先生(鹿大歯学部)
・本番での導入を決断してくださったの宮脇正一先生(鹿大歯学部)
・アナウンスの録音に協力してくださった五月女さき子先生(鹿大歯学部)
・ネットワーク設定で助けてくださった竹原重信先生(鹿大歯学部)
・無線LAN、専用LANの機器整備と、プログラムの改良箇所を指摘された仙波伊知郎先生(鹿大歯学部)
・そのほか、OSCE運営にたずさわった鹿大歯学部の先生方、学生の皆さん
・平成19年より使用してくださっている、阪大歯学部の先生方


■17.著作権と免責事項

このソフトは、フリーウェアであり、著作権を放棄したものではありません。ヘルプファイルやアイコンも含めて、改変したものを第三者へ譲渡す るこ とを禁じ ます。また、商用にご利用される場合、雑誌等でご紹介される場合は、あらかじめご連絡ください。

このソフトを用いて OSCE や試験を実施する際は、十分に作業確認をしてください。さまざまな状況を想定してプログラムしておりますが、万全だとは言い切れません。そして、 いかなる 事態が 生じても私は責任を負えません。各大学で責任を負うことができる時だけ、導入を決めてください。

バグレポートやご意見、感想、質問、改善のアイデア等はメールで私までお願 いします。下記HPにメールアドレス、最新情報、自作ソフトの紹介などがありますので、ご利用ください。

http://www.geocities.jp/qqbjj485/Q-soft/index.htm

田畑 純 (休八)
たばた まこと (きゅうはち)