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休八写真館大判カメラ室(4x5判)

Toho Shimo FC-45X


TOHO Shimo FC-45X
野 外撮影用に作られたモ ノレール型ビュー・カメラ。

ビューカメラといえば大判カメラの典型であり、5-7kg もあるのだが、この FC-45X はわずかに 1.36kg しかない。超軽量である。携行が前提の
フィー ルドカメラと比べても軽いほどである。しかも、組 み立て式になっていて、二つに分離でき(下記)、それぞれをコンパクトに折りたためる。
カメラ部 = 前板+ジャバラ+後板
ベース部 = 前支柱+モノレール+後支柱
連結は、前後の支柱の先にクランプがあって、それぞれ前後の板をはさむようにして行なう。このはさむ位置を左右にずら せば、シフトになるし、板の短辺をつかめばタテ位置撮影、長辺をつかめばヨコ位置撮影ができる。クランプの付け根には、2 つの関節があり、前後に振ってティルト、左右に振ってスィ ングができる。支柱そのものも上下に動かすことができるので、ラ イズとフォールができる。普通のアオリをする上では、十分な自由度だろう。

関節部の動きの殆どは、摺動(フリクション)であり、ネジをゆるめ て動かし、ネジを締めて固定する。ギアを使って微動できるのは、リアの焦点あわせだけであるが、野外で撮影する時 は、これで必要十分である。組立てる時のことを考えても、こちらの方が、スピーディである。そして、これらの動きがきわめてスムーズで仕上がりの精巧さに 驚かされる。小型軽量でありながら、質感も高い。

東邦機械は、音響機材のメーカーであるが、1990年代から大判カメラを製造するようになった。スムーズな動きのよさや がたつきのなさに音響メーカーの製品であることを感じ る。
ちょっとした振動 や音でも、 音響の世界ではありえないからだ。
 
レンズボードは、円形の専用ボードを使うのだが、リンホフボードも
斜 めに差すことができる。裏面の円形の凸部分を合わせるように装着するのだ が、ボードの中央にレンズ穴が無い場合は、若干、光軸がずれることに留意する必要がある。ただ、これもビューカメラでは、前板と後板 を自在に動かせるのでさしたる問題ではない。

組み立て式のビューカメラとは、ありそうで無かったカメラである。野外でビューカメラを日常的に使えるようにするという発想も無かっ た。自由なアオリ機能を実現するために、関節を増やすのではなく、極力減らしていくという考え方もいい。ネジの数が最小限になるか ら、操作自体も早くなる。小さく、軽くすることで、三 脚などの器材も小さくできるし、自宅での収納にも場所をとらない。

Shimo FC-45X は、独創的な大判カメラである。日本のメーカーらしい工夫と仕上がりで質感も高い。そして合理的な設計と合目的性に富む。こういうカメラが、今、作られて いないのは残念なことだと思う。


追記1: 先行機の FC-45A (1995年) と比べると、カメラ部はほぼ同じだが、ベース部がかなり改善されている。4x5 だけでなく、5x7 や 8x10 も製造していたようだ。

追記2: FC はフィールドカメラ、Shimo は創業者の下田誠輔(しもだせいすけ)氏の名字からとったものらしい。私はてっきり、会社近くの志茂(しも)からのネーミングだと思っていた。志茂は、
荒 川から隅田川が分流する赤羽の岩淵水門付近の地名で、明治時代に下(しも)の好字二字化で志 茂となったという。近くに上(かみ)から転じた加美という地名もある。

追記3: 50mm前後の超広角レンズでは、くぼみのあるレンズボードが使われることがしばしばだが、このタイプのボードはFC- 45にはめることができない。

発 売年
1998年?月  愛着度★★★
型 式
大判フィル ム/モノレール・ビューカ メ ラ(アルミ)
前 枠部
レ ンズ ボード
専用円形ボー ド、リンホフ・ テヒニカボー ド
対応レンズ
46-364mm
対応シャッター
#00, #0, #1 
アオリ機構 ラ イ ズ 24mm (縦位置 13mm)、フォール21mm、シ フト左右各18mm、ティ ルト前後各30°、ス イング左右各25°
後 枠部
ファインダー
フレネルグ ラ ス、脱着可能な折 り畳みフード付き
フィル ムバック
国際規格
アオリ機構 ラ イ ズ 24mm、フォール6mm、シ フト左右各35mm、ティ ルト前後各30°、ス イング左右各25°
フ ラン ジバック 52-395mm (ベースのモノレールは伸縮で きる)
そ の他
タテヨコの変更は、カメラ部取り付けを90°変え て行う。カメラ部とベース部を分離して収納。
大 き さ・重さ
w236mm x h195mm x d265mm  1360g  (カメラ部 660g + ベース部 700g) レンズ装着で1700-1900g
参 考 web
Kerry Thalmann's HP : http://www.thalmann.com/largeformat/toho.htm
Mark Darragh Photography :  http://www.markdarraghphotography.com/
東邦機械株式会社(アーカイブ): https://web.archive.org/web/20090421091039
参 考書 籍
玄光社Mook 「ビューカメラマニュアル」 玄光社 2000 (5版)
「風景写真で使ってみたい大判カメラ トーホー SHIMO FC-45X」 写真工業 61 (2003年7月号) p23, p94

Toho FL-45X / Toyosu Unga

東京・豊洲埠頭から見る晴海埠頭。周辺は建設ラッシュである。三脚使用。 Nikkor-M 300mm F9 / Neopan 100 Acros

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