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休八写真館中判カメラ室(6x6判 二眼レフ)

Alsaphot Dauphin I



Alsaphot Dauphin / アルサフォト ダウフィン たたずまいが、いかにもフランス的である。甲冑を着たジャンヌ・ダルクのようだ。

アルサフォトはシクローペ(Cyclope 単眼の巨人)という超個性的で技巧的なカメラで知られるメーカーだが、このダウフィン(Dauphin イルカ)はいたってシンプル。

レンズはF11でメニスカス単玉。絞りはF11とF16の2つで、スリット切り替え式。シャッタースピードは 1/75, 1/25, B の3つで、しかもエバーレディ。フォーカスも遠景とポートレイトの2ゾーンだけ。ビューレンズは撮影用レンズと連動してないので、いわゆる疑 似二眼レフで、スペック的には
ボックスカメラに近い。

ファインダーはブリリアント ファインダーであるが、ファインダーカバーが前面にしかないのと、開く角度が少し足りなくて、写野の確認に難がある。 また、シャッターの位置がやや微妙 で、シャッターぶれを起こしやすく、慎重にシャッターを切る必要がある。思いの外、抜けのよい写真が撮れる。F11 か F16 での撮影だから、被写界深度が深くなり、誰が撮ってもそれなりに撮れるのだろうけれど、単純なレンズ構成ゆえにちょっと驚く。

ロゴやボディ・ラインに惹かれるものがある。また、真ん中をカバーする銀色のプレートは、横幅のあるボディをスリムで端正なものに見せるもので、 デザインの妙を感じさせてくれる。金属ボディはシボ仕上げになっていて、縮緬のような手触り感がある。ボディ内 面も案外きれいな仕上がりで、シンプルな構成に不釣り合いなほどである。一方で、金属板どうしの接合のすべてがリベットでなさ れており、ちょっとしたメンテナンスや部品修理もやりにくい。

ただ、シンプルではあるけれど、手抜きはない。一見、不親切に見える構造も考え抜いた上での構造、もしくは、はっきりとした思想が底流にあるよう に感じる。やはり、フランスというお国柄なのだろうか。

追記1: 私の所有しているダウフィンは、前玉部分の座りが悪くて、前後に動かすのが億劫である。というのも、3つの小さなネジで止められているのだが、 このネジ先を細く尖らせてレンズ鏡筒にある螺旋のミゾに嵌めるような構造になっていて、このネジ先がいずれもつぶれていたり、折れていたりし ているからである。結局、自作してネジを作ったが、あまりいい工作ができなくて、今ひとつの動きなのである。

追記2: アルサフォト (ALSAPHOT, Société Alsacienne d'Optique et de Photographie) は1949年〜1970年の間、カメラを製造していたフランス
のメーカー。アルザスを本拠としており、ロゴマー クの鳥は、アルザスの象徴、コウノ トリだという。

追記3: Dauphin には Ia (1948)、Ib (1949)、II (1950)、III (1953) などのモデルがある。もっともクラシカルに見えるのが Ib なのが面白い。

発売年
1948年   愛着度★★★
型 式
120フィルム 6x6cm/レンズ固定/疑似二眼レフ (二眼レフ型ボックスカメラ)
レンズ Menix Boyer 80mm F11
シャッター Ever-ready Shutter 1/75、1/25、B
シ ンク ロ接点
なし
測光・測距
なし
ファ イ ンダー
ミラー反射式ファイン ダー。左右 逆像。
フィ ル ム交換
1.使用済みフィルムが ある時 は、右側面上の巻き上げノブで全部巻き上げる。
2.底面の板金をスライドすると、ロックが解除されて、背面を外すことができる。フィルムを取り出す。
3.古いスプールを巻き取り部に移して、新しいフィ ルムをセット。背面閉じる。
4.巻き上げノブを回して、フィルムを巻きあげる。赤窓でフィルム位置を確認できる。
大きさ・重さ w85mm x d94mm x h127mm (突起部含む。駆体のみなら w76 x d78 x h127) 532g
参考文献
Collection-Argentique.fr / Alsaphot :http://glangl1.free.fr/Liste-Alsaphot.html 

Alsaphot Dauphin / アルサフォト ダウフィン

隅田川の中央大橋。白黒写真は綺麗に写る。
Menix Boyer 80mm F11 / 100TMAX
Alsaphot Dauphin / アルサフォト ダウフィン

隅田川の霊岸島水位観測所。緻密な描写。
Menix Boyer 80mm F118 / 100TMAX

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