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休八写真館中判カメラ室(6x6判 ステレオ)

GOMZ Sputnik



GOMZ Sputnik / スプートニク スプートニクはロシアの GOMZ (LOMO の前身)のステレオ・カメラ。つまり、立体写真を撮るためのカメラで、6.5cmほ ど離れた2つのレンズで2枚の写真 を同時に撮る。真ん中のレンズはビューファインダー用で、二眼レフと同じ仕組みだ。

1950年代にアメリカで流行したステレオカメラには、Realist、Kodak、 Wollensak、Revere などのメーカー製品がある。Wollensak や Revere などは完成度が高く、フォルムの美しいカメラだ。ただし、多くのカメラが35mmフィルムを使うリアリスト判(24mm x 23mm)で撮像がかなり小さいし、2コマ飛ばしでステレオの組み合わせになるため、撮影後の作業が煩わしい。

対して、このスプートニクは GOMZ の二眼レフカメラ・ルビテルの部品で作られたカメラ。フォルムは武骨だが、中判フィルムを使うので写真のクオリティが断然よい。「うまい なぁ」 と思えるのは、6.5 cm 離してレンズを配置すると丁度 6x6 の2コマ分になることで、撮像は隣どうしがステレオの組み合わせになる。撮影後の作業はいたって簡単だ。

ローライの二眼レフは三眼ステレオカメラから撮影レンズをひとつ除いて作られたものらしいから、二眼レフ2台から作られたスプートニクは逆の流れ だ。二眼 レフのビューレンズは、スペース的にもメカ的にも少々贅沢な気がしていたのだけれど、三眼レフ・ステレオとなるとこ れ しかあ り 得ない必然的な配置だ。というのも、ビューレンズのミラーやフィルムのスプールは、撮像用レンズの死角をうまく利用して配置されるからだ。つくづ く 「うまいなぁ」 と思う。

スプートニクとは「旅の道連れ」という意味。ベークライト製のカメラは大きさの割には軽くて、確かに持ち運びは楽だ。光線 漏れと光の内面反射があるのが欠点だが、植毛紙を内壁に貼り付けることで対応した。ファインダーは見にくいという話だったが、それほどでもないよ うに思っ た。それよりも二重露光防止がないので、巻き上げをしないまま、うっかりシャッ ターを押すこともあってそそっかしい自分には注意が必要だ。

中村陸雄さんの「ソビエトカメラ党宣言」のコムソモーレット(ルビテルの前身の二眼レフ)よろしく、私のスプートニクにも前の持ち主の撮ったフィ ルムが 入ったままだった。現像すると、1枚撮り(ステ レオではなくて)でお母さんと子どもが一緒に写っていた。1枚目はお母さんが目をつぶっている。だめだめ、目をつぶったら。そう言いながら2枚目 のシャッ ターを切る。そういう情景が浮かんできた。古い白黒ネガだった。

追記1: 世界初の人 工衛星ス プートニ ク は1957年10月4日に打ち上げられた。ソ連時代のカメラやレンズは宇宙にちなんだ名前が多く、ヴォスホート(日の出:初の宇宙遊泳をしたレオノフの宇宙船)、チャイカ(カモメ:初の女性飛行士テレ シコワのコール サイン)、ミール(平 和:宇宙基地の名 前)などもあるから、このスプートニクも記念のカメラと思いたい。しかし、カメラのスプートニクは1955年からの販売とする資料が多く、これは打ち上げよりも2年も早い。さ て、真実はどう なのだろう。

追記2: 植毛紙は天体望遠鏡の内面反射を防止するシート。国際光器(マゼラン)のウェブショップで購入した。シールになっているため、 工作も簡単だっ た。

追記3: ローライが製作した三眼レフ・ステレオカメラはローライドスコープという。これからステレオ撮影レンズをひとつ除き、ビューレ ンズと撮影レンズ を縦に配置したのがローライフレックス。現在のローライフレックスを2台あわせて、ステレオカメ ラを作ってみたら面白いかもしれない。

発売年
1957年  愛着度★★★
型 式
ブローニーフィルム/三 眼レフ・ ステレオカメ ラ
シャッター レンズシャッター、1/15-1/125
レ ンズ
T-22 75mm F4.5
測 光
なし。
ファ イ ンダー
レフレックスファイン ダー
フィ ル ム交換
1.使用済みフィルムが ある時 は、上面左ノブを回して巻きあげる。
2.背面を開ける時は、真ん中のスライダーを下げて、左右に開く(ロック機構はない)。
3.フィ ルムをパトローネ室に入れ、フィルムのリーダー部を引き出し、左手のスプールにひっかけて、巻き付ける。
4.上面左ノブを回して巻き上げる。フィルム位置は背面の赤窓で確認。
その他 2眼レフカメラ Lubiter をベースに作られている。
大きさ・重さ w154 mm x h100 mm x d93 mm 809g
関連 web
Ono Shuji さんのHP / Sputnik : http://www2.pair.com/shuono/hobby/3D-Cameras0/sputnik_j.shtml

<付記:コマの並び方>

スプートニクで撮った写真は、順番どおりに並んでいるが、天地逆像で写っており、そのままでは立体視ができない。従って、撮影後、すべて のコマを分離し て、天地をひっくり返す必要がある。しかし、それでもリアリスト判と比べると圧倒的に作業が楽で、立体視のための 6.5cm 間隔に近いのもいい。


stereo film

GOMZ Sputnik / スプートニク
隅田川の中央大橋。右画像の周辺がぼける。レンズ に油汚れ があるのだろうか。 T-22 75mm F4.5 / Velvia 50
GOMZ Sputnik / スプートニク
アカツメグサ。右画像の周辺ぼけが直らない。ビュアーを使って見た時の立体感はす ごい。T-22 75mm F4.5 / Velvia 100

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