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休八写真館中判カメラ室(6x6判)

マミヤ光機 Mamiya-6 K



Mamiya-6 K / マミヤ 6K バッ クフォーカシング。独創性の輝き。

スプリングカメラの泣き所は距離計連動機構の組み込みだ。レンズがボディから離れており、その間は蛇腹があるので連係が難しい。蛇腹の添え 板(前蓋)に、シャフト を入れて連動させるのが正攻法ではあるけれど、スペースが限られている上に、前蓋の開閉があるので結構むずかしい。関節部にいろいろな工夫を凝ら し、 1930年のアグファ・スタンダードから距離計連動ができるようになったけれど、その後、全く違う解法がふたつ寄せられた。ツァイスのドレーカイ ル式 (1933年)とマ ミヤのバッ クフォーカシング式(1940年)だ。

焦点距離を変えるには、レンズとフィルムの距離を変えればよい。レンズを動かすのが普通だが、バックフォーカシング式はフィルム面を動かす。この 方式は大 判の フィールドカメラなどでは普通だが、これを中判や 35mm判に導入した例はそれまで無かった。ボディがやや厚めになるはずだが、フィルム面を動か す方が、距離計までシャフトをのばす必要がないから構造がシンプルでスプリングカメラには向いている。

逆転の発 想でかつ合理的な発想。バックフォーカス部分はまさにシンプルだし、ファインダーもひとつなので操作も簡単だ。美しい解だと思う。

レンズの距離表示がフィートなのは馴染まないけれど、操作性はよい。特に、右手と左手の役割が明瞭なのはありがたい。また、セミ判 (6x4.5) にも対応していて、フィルムセットの際に両側をマスクするプレートを開くだけなのも感心させられる。赤窓もよくできていて、6x6 と 6x4.5 の両方が同時に開かないようになっている。

軍艦部に段差があるが、この段が少し斜めになっているところが個人的には気に入っている。マミヤシックスは、T型〜VI型、K型、KII型、P型 など全部 で 15 種ほどあるのだが、いずれもこの段が直角に立ち上がっているものばかりで、唯一、K だけが斜めになっている。些細なことかもしれないが、この部分はシャッターを押すまでの右手人差し指が待機する場所であり、指先が斜めの部分にあ たること で、 ホールドしている時の安心感がある。そして、デザイン的にも全体とうまく調和し、カメラにやわらかい表情を与えていると思うのだ。

追記1: このカメラは職場でお世話になっている I さんが譲ってくださったもの。ところが、この日の午後2時46分、東京は大きな地震に見舞われた。三陸沖を震源とする岩手県太平洋沖地震(東 日本大震災) だった。都内の電 車と 地下鉄はすべ て停止。徒歩で帰ることにし、このマミヤシックスをカバンに入れて延々と歩いた。2011年3月11日、忘れられない日になるだろう。

追記2: 設計は間宮精一。カメラマンであったが、自分のアイデアを形にするために、マミヤ光機という会社を作り、マミヤシックスを作った。

追記3: AF時代になってから、バックフォーカシングが復活した。ヤシカ・京セラの CONTAX AX という一眼レフである(1996年)。フィ ルム側でフォーカスを合わせるので、レンズ がAF非対応のものでも、AFに出来てしまうという見事なアイデアであった。ただし、京セラは 2005年でカメラ事業から撤退してしまった。

発売年
1954年   愛着度★★★★
型 式
中判フィルム 6x4.5, 6x6cm兼用/スプリングカメラ
レンズ 世田谷光機 Sekor T 75mm F3.5
シャッター COPAL MX:B, 1, 1/2, 1/5, 1/10, 1/25, 1/50, 1/100, 1/250
測 光/ 測距
なし/バックフォーカス 式連動距 離計
ファ イ ンダー
逆ガリレオ式ファイン ダー(二重 合致式の測距ファイ ンダー兼ねる)
フィ ル ム交換
1.使用済みフィルムが ある時 は、左上の巻き上げノブで全部巻き上げる。
2.留め金を外して、背面を開ける。フィルムを取り出す。
3.古いスプールを巻き取り部に移して、新しいフィ ルムをセット。背面閉じる。
4.巻き上げノブを回して、フィルムを巻きあげる。
5.赤窓に1が出たら、撮影開始。
大きさ・重さ w140mm x h104mm x d97mm (収納時 d53mm) 822g
参考 web
NekoさんのHP/マミヤシックス: http://neco.aki.gs/neco99/neco30/00/mamiya/0310.html
参考文献
高島鎮雄, 「クラシックカメラへの誘い」 朝日ソノラマ 2007
井上光郎, 「日本のスプリングカメラ−マミヤ」, クラシックカメラ専科 No.8 pp68-71 (1986年)
鈴木佐太郎, 「マミヤシックス」, クラシックカメラ専科 No.36 pp16-22 (1996年)

Mamiya-6 K / マミヤ 6K

千葉県鋸山・日本寺の大仏。
総高31.05m、御丈21.3m。
石造りの薬師瑠璃光如来。いいお姿だと思う。
Sekor T 75mm F3.5 / RDPIII
Mamiya-6 K / マミヤ 6K

千葉県鋸山・日本寺の羅漢のうち、奥の院無漏窟

十方の諸仏が集まっている様子だ という。
Sekor T 75mm F3.5 / RDPIII

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