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休八写真館大判カメラ室(4x5判)

Chamonix 045N-2


Chamonix 045 N-2
ハンザ・ フィールド 69 II で大判の面白さに引き込まれた。 Natasha 45 で大判を手軽に扱えるようになった。軸足がだんだんと中判から大判へと移り始める。デジタル一眼レフの世界では、ニコンの D800、キャノンの EOS 6D がフルサイズ機を牽引しているが、マイブームは大判カメラである。

本格的な大判カメラの購入を考え始める。操作性、サイズ、材質、機能など細 かなところまで見るようになる。写真やスペックを見ながら、実際の撮影作業をシミュレーションする。どういう時にどういう操作をするか、丹念に考える。す るとネジやレバーの位置などが使いやすいかどうかがわかってきて、自分との相性がわかってくる。こうしたシミュレーションは、おいそ れとはカメラを買えなかった子供の頃に覚えた遊びだ。大型カメラ店もネットも無い時代だったけど、どこのカメラ店でも中高生相手にカ タログをちゃんとくれていろいろと教えてくれた。おかげで、今の自分がある。ちょっとノス タルジックな気持ちになる。

最初は、ワ イズ 45 light の購入を考えていたのだが、そこから中国製のカメラを検索するようになり、Chamonix に行き着いた。値段が安いことにまず惹かれたが、スペックやデザインも結構いい。ネットでの評判もチェックしたが、ショップ、ユー ザーともにかなりよく、ネガティブなものが見あたらない。最近、仕事で導入した機械が中国製品だったのだが、性能や品質の高さ に驚かされたばかりだったので、そうした評価も素直に納得できた。最新モデルを購入することにした。

最大の購入動機はリア部にあるフォーカスネジ。これを動かすと底部中央にあるモノレールが前後して、前方に取り付けた前枠(レンズ ボード)が前後する。リア部スクリーンを見ながら、前枠・後ろ枠の操作の大半を手元でできる。底部中央のモノレールは5つの取り付け 穴が空いているが、大体、前からひとつめ(最前方)が300mm、3つめ(真ん中)が150mm、5つめ(最後方)が90mmの取り 付け用と考えてよいようだ。また、後ろ枠はスライドレールに接続していて、左右のネジをゆるめると一気に後方へ延ばすことができる。 撮影時は、この後方移動がかなり便利で、ピント合わせをここでざっとやってからフォーカスネジで精密に合わせる。使いやすい。大判カ メラの最新進化 形だと思う。

木部は チーク材。後に出たクルミ材やメープル材のモデルと比べると、やや重いが堅牢であり、他社の同等品と比べると軽量。金属部品にはチタンが 使われていて安心感があ る。関節部が必要最小限でシンプルに見えるが、自由度は高く、少々、複雑なアオリでもこなすことができる。また、底板が金属なのも斬新で合理的。ここを木 板にすればかなりの軽量化ができるが、金属にした英断がいい。焦点あわせやアオリを入れるために大判カメラは重心が真ん中に来にくい ことから、底板はしっかりとしたものでないとたわみやぶれが出やすい。ただでさえ、重い機材であるから、底板の堅牢性は重要である。

レンズボード はリンホフ規格。スクリーンも標準 規格で、とりはずすと、ビュワーや中判フィルムバッグを付け られる。HPを見ると、オプションとして湿式フィルムホルダーまで用意されていてちょっと驚かされる。フ ランジバックは、52-395mm あるので、大概のレンズを装着できるが、延長ラックもあるし、長い蛇腹も用意されている。アフターケアや耐久性など未知数の部分も あるけれど、こうしたメーカーが新たに生まれてきたことに感 謝するばかりである。

写真は、ピント、露出、フレーミングの3つで決まる。実像を見ながら、これらをじっくり考える。大判だとアオリを入れられるので、ピ ントとフレームの自由度がかなり高い。従って、写真家の意図が大きく反映される写真が撮れる。大 判カメラのスクリーンに映る像は、まるで別な世界のように 見えることがある。目の前の風景が、写真の世界に変わって映し出されているからだと思う。見えたもの をそのまま写す(=自分の意図をはさまない)のも「写真」であるが、まるでゴッホの絵のように、まるでムンクの絵のように、自分の見 えている世界を表現する(=自分の意図するように撮る)のもやはり「写真」なのである。

アオリをいれた撮影は、ピ ント合わせが面倒だ。一カ所合 わせると他の 箇所がずれる。そこをあわせると、また別なところがずれる。でも、忍耐強く作業をしていると、だんだんとイメージどおりになっ ていく。ピントを合わせ、露出 を合わせ、シャッターを切 る。自 分の意図する写真の世界をリアルタイムで確認しながら撮影できる面 白さ。

風景が自分の風景になっていく。写真を撮る喜びがある。

追記1: 今、中国のカメラメーカーが元気 だ。大判の Chamonix, Frica, Shen-Hao、中判パノラマの Dayi, Gaoersi など、フィルムカメラの面白さや凄さを形にしたようなカメラを作ってくれている。なかでも Chamonix は、普通の大判カメラだけでなく、8x20, 12x20,  20x 24 など超大判のカメラまで作っている。 Chamonix view camera というのが正式なメーカー名で、中国人の写真家と登山家によって創業されたという。中国の浙江省海寧市にある。

追記2: N-1 (2008年6月発売)から N-2 (2010年7月発売)での変更は、中央モノレール部のベアリング、リアのスウィングネジの新設など。蛇腹は袋蛇腹で取り外し可能、スクリーンはフレネル レンズになっている。 N-1 は、メープル材で1410g だったが、N-2 は、チーク材(初期ロットのみ)、クルミ材、メープル材のいずれか。重量は順に 1500g、1420g、1380g。金属部品もチタンが使用されている。ワ イズ 45 light は、N-1 をベースにしているようだ。また、最近では木工針穴写真機の Jerry Chen 氏が N-1 相当の改良機を製作・販売している。

追記3: 大判カメラは完成されたカメラだと重々言われてきたが、Chamonix のおかげで、進化の余地が結構あったのだな、と気づかされる。日本のメーカー、どんな対抗モデルを出せるだろうか。

発 売年
2010年7月  愛着度★★★★
型 式
大判フィル ム/フィール ドカ メ ラ(チーク/チタン)
前 枠部
レ ンズ ボード
リンホフ・ テヒニカボー ド
対応レンズ
52-395mm
対応シャッター
#00, #0, #1 
アオリ機構 ラ イ ズ 45mm、フォール30mm、シ フト左右各20mm、ティ ルト前°後°、ス イング左右各°
後 枠部
ファ イ ンダー
フレネルグ ラ ス。縦・横の 配置可 能。
フィ ル ムバック
国際規格。
アオリ機構 ティ ルト前随 意、後20°、スイング左右20°、シフト無し。
フ ラン ジバック 52-395mm
そ の他
前枠近くの蛇腹は袋蛇腹になっている。
大 き さ・重さ
w195mm x h225mm x d205mm (収納時w195mm x h90mm x d180mm)
1500g (本体のみ/レンズ装着で1800-2000g)、ホースマン 6x9 フィルムバッグ 530g
参 考 web
Chamonix View Camera: http://www.chamonixviewcamera.com/cameras/45n2
ワイズ「大判カメラの全て」: http://www.ohban4x5.com/
マツバラ光機/chamonix 045 の紹介ページ: http://www.m-camera.com/camerabody/big_body/bm-471.html
参 考書 籍
玉田勇 「大判写真入門」 写真工業 2007 (改訂7版)
玄光社Mook 「ビューカメラマニュアル」 玄光社 2000 (5版)

Chamonix 045N-2

江東区越中島の路傍におわすインドの神々。としまえんにあったものだという。左か ら、ガネーシャ、ラクシュミー、ハヌマーンだろうか。
八百万(やおよろず)の神々を見るようである。三脚使用。 Nikkor-SW 90mm F8 / Neopan 100 Acros

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