© 2000-2024, Kyu-hachi TABATA last updated 2021/11/24

魚 鱗の形態と発生の研究
Research of the Morphology and Embryology of Fish Scales



魚類のウロ コは、歯と起源を同じくする器官で、その組織や発生様式、発生段階の発現遺伝子などは歯と共 通した部分があります。また、 魚のウロコは皮骨の一種であり、骨の実験モデルとしても有 用です。こうしたことから、2004年からキンギョ のウロコ研究や魚類の歯の研究をしています。 2007年からシーラカ ンスのウロコ研究や、宇宙実験も行っています。

Uroko Scales



■1.研究の動機ハコフグ

1) ハコフグの皮膚には甲羅のようになったウロコが埋伏していますが(右写真)、その中にはたくさんの細管が走っていて、あたかも象牙質の ように見えます。
2) 硬組織の起原と考えられている甲冑魚の甲皮にも象牙質様の層やエナメル質様の層が見られます。
3)ヒトの外胚葉異形成症の原因遺伝子と相同の遺伝子が魚類(メダカやトゲウオ)でも見つかりました。この遺伝子に欠損があると、ヒトでは 歯、汗腺、毛に異常が出ますが、魚類ではウロコに異常が出ます。

こうしたことから、歯とウロコの関係性はかなり強いものと考え、研究に着手しました。


2020 年10月には、「鱗の博物誌」という本を上梓しました。

参考文献
田畑純、遠藤雅人、塩栗大輔ほか 「鱗の博物誌」 グラフィック社 2020
田 畑純: 歯と骨とウロコの話. 骨の健康づくり委員会ホームページ
田畑純: アンコウの歯の話.東京医科歯科大学・献体の会会報 33号3-4 (2007)



■2.キンギョのウロコ研究ヤマト

キンギョにはさまざまな種類・系統がありますが、大和郡山産のヤマトという系統は飼育がしやすく、年中、任意の大きさのものを入手できま す (右写真)。そこで、このヤマトを用いて、ウロコ研究をスタートしました。次のような研究をしています。

1) 魚類は広範な多様性があり、一般的な魚類関係文献では、キンギョのウロコのことがよくわかりません。そこで、ウロコの組織構造の理 解す ることから取り組みました。
2) 抜去したウロコの滅菌法と培養法を開発しました。この技術は宇宙実験を可能にしました。
3) ウロコを抜去したあと、どのようにウロコが再生するのか。どこに幹細胞があるのか。

参考文献
田 畑純、鈴木信雄、服部淳彦: キンギョ. 鈴木範男編 「身近な動物を使った実験 (1)」 三共出版 2009
田畑純、鈴木信雄、服部淳彦:魚鱗:硬組織研究と再生研究のフロンティア. 細胞 39: 55-57 (2007)
鈴木信雄、田畑純、和田重人、服部淳彦:魚のウロコを用いた新しい骨モデル系の開発と歯科医療への応用. デンタ ル・ダ イヤモンド 2006年10月号74-79 (2006)
Yoshikubo H, Suzuki N, Takemura K, Hoso M, Yashima S, Iwamuro S, Takagi Y, Tabata MJ, and Hattori A.  Osteoblastic activity and estrogenic response in the regenerating scale of goldfish, a good model of osteogenesis.  Life Sci. 76:2699-2709 (2005)



■3.シーラカンスのウロコ研究シーラカンスの解剖

シーラカンスは、ヒレが手足のようになっている、脊柱が中空である、上顎にも関節がある、古生代の化石種とほとんど変わらない形をしている、 など非常に興味深い生物です。そして、そのウロコもきわめて面白く、表面に多数の小歯突起があります。そこで、この突起の構造を詳細に調べて みたいと考えていました。

2007年、そのチャンスが突然めぐってきました。東工大の岡田典弘先生が入手されたタンザニア産シーラカンスの冷凍個体を使わせていただけ るこ とになったのです。

まだ解析の途中ですが、面白い成果が得られています。

参考文献
田畑純:シーラカンスのウロコと小歯構造の謎.  遺伝 68:238-244  (2014)
田畑純:ウロコに見られる歯のような構造.国立科学博物館「ダーウィン展」・標本展示(2008)
TV取材
はま・なか・あいづToday 「シーラカンス研究最前線」, NHK福島放送局 2010年4月6日放送
おはよう日本 「シーラカンスの謎に挑む」, NHK全国版 2010年4月20日放送
クローズアップ東北 「シーラカンスに挑む~最先端を走る日本の研究」, NHK東北版 2010年9月24日放送



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