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休八写真館中判カメラ室(6x9判)

Zeiss Super Ikonta 531/2



Zeiss Super Ikonta 531/2 / ツァイス スーパー
        イコンタ 「ス プリングカメラでいこう」(写真工業出版社 2004)という本を読んで、スプリングカメラが欲しくなった。古いカメラであっても、しっかり写るものが多いという。

中判カメラはボディもレンズも大きくて重いものが普通だ。6 x 9cm判ならなおさらで、手持ち撮影はまず無理で、三脚も持ち歩くことになる。しかし、スプリングカメラならば小さく 軽 く、手 持ち撮影 も可能で、実に軽快である。

ちょうど、大不況とデジカメの普及でフィル ムカメラの中古やクラ シックカ メラが海外のオークションサイトで頻繁に出まわるようになっていた。おかげで、欲しかった仕様の 531/2 を購入できた。1937年製らしいので、なんと70年も前のカメラだ。

この 531/2 モデルでは、巻き上げクランクが底面から上面に移ったので、底面がすっきりし、座りがよくなっている。また、上面のクラン クボックスが黒く塗られているのと、前蓋をささえるタスキのレール溝が曲線なのは、他のモデルにはない特徴だ。二重撮影防止機構も付いてい て、 シャッター を押すとロックされ、フィルムを巻き上げると解除される。ボディは堅牢。タスキなどのがたつきもない。金属部分の腐蝕もないし、革や蛇腹もきれい だ。前の 持ち主が大切に使っていたのだと思う。

ただし、レンズにうすい曇りがあって、どうやっても写真の出来がいまひとつだった。こんなものなのかなぁ、と思い始めたころに、白籏史朗さん が スーパーイ コンタの 6 x 9 で山岳写真を撮っていたことを知った。それで、本来の性能はもっといいはずだと思い、レンズの清掃とコーティング、その他の調整を関東カメラサービスに お願 いした。

予定よりも早くできあがってきたスーパーイコンタは、まるで別なカメラのように良くなっていた。レンズが非常に綺麗になった。ドレーカイルの フォーカスがぐっと見やす くなった。フレーミング用ファインダーの曇りも無くなった。シャッターの粘りもなくなった。距離合わせのレンズ繰り出しもスムーズになった。背面 の凹みも 直してくれていた。そして、試し撮りの写真が出来て驚いた。見違えるようによく写っていた。

直ったことも嬉しかったが、直せることがわかったのも嬉しかった。70年前の カメラでも機能修復できる。古いカメラだからとあきらめてはいけない。

追記1: スプリングカメラとは、スプリングを組み込んで自動起立するようにした折 り 畳み式のカメラだ。蛇腹にはトルコ革が使われていて、これに堅牢なボディ と精密なレンズが付く。手にして見ると分かるけれど、まさに金属・ガラス・革で出来た工芸品だ。実用性も高く、見事な写真が撮れる。

追記2: 1930-50年頃が、スプリングカメラの全盛期で、多くのメーカーが多 数の機種 を生産していた。大ざっぱに言って、名前に「スーパー」とつくのは、連動 式距離計を備えた高級機。「シックス」と付 けば 6x6 判だし、「セミ」と付けば、6x4.5 判のカメラだ。ツァイス・スーパーイコンタは、そうした中でもよく売れた機種で、フィルムサイズに合わせて7種類、それぞれのモデルチェ ンジが大きく5 回、レ ンズも数種ずつあった。

追記3: 巻き上げると巻き上げマークが白から赤に変わる。このマークが出ないとシャッターがロックされるようになっているのは便利だ。 ただ、うっか り、シャッターチャージを忘れて、シャッターボタンを押してしまうと大変だ。チャージをしていないから実際にはシャッターが切れていな いのだけれど、巻き上げマークはしっかり白に変わってしまう。だから、写真を撮っていないのに、巻き上げをしないといけなくなる。何か、 こうしたチャージ ミスで生じる無駄を回避する方法はないのだろうか。

発売年
1937年  愛着度★★★★
型 式
中判フィルム 6x9cm/スプ リングカメ ラ (レンジファインダー)
シャッター レンズシャッター(Synchro Compar No. 00)、 1/400〜1秒、B
レ ンズ
固定式、Tessar 105mm F3.5
測 光
なし
ファ イ ンダー
距離合わせ用のファイン ダーとフ レーミング用のファインダーがある。
距離合わせはドレーカイル式で、ファインダー内は二重像合致式。
フィ ル ム交換
1.使用済みフィルムが ある時 は、上面左の巻き上げダイヤルを使って完全に巻き挙げる。
2.背面を開ける時は、右手側面のボタンをスライドする。使用済みフィルムを取り出し、古いスプールを巻き取り部に移す。
3.新しいフィルムを入れ、リーダー部を引き出し、巻き取り部のスプールに差込み、巻き付ける。
4.巻き上げは上面左の巻き上げダイヤルを使い、カウント窓を見ながら巻き上げる。
大きさ・重さ
w165mm x h144mm x d138mm (収納時h92mm x d46mm) 890g
参考文献
高島鎮雄, 「クラシックカメラへの誘い」 朝日ソノラマ 2007
川又正卓・山嵜省一, 「スプリングカメラでいこう」 写真工業 2004年
松田二三男, 「スーパーイコンタ 6x9」, クラシックカメラ専科 No.2 pp44-45 (1980年)
酒井修一, 「世界のスプリングカメラ−ツァイス・イコン」, クラシックカメラ専科 No.8 pp28-37 (1986年)
片山良平, 「スプリングカメラ時代を主導したイコンタの変遷<続>」, クラシックカメラ専科 No.81 pp38-45 (2006年)
白籏史郎, 「私の愛機」, クラシックカメラ専科 No.8 pp101 (1986年)

<付記:撮影手順>

1.露出計で露出を調べておく。
2.カメラを取り出して、前蓋の開閉ボタンを押す。手を添えて、レンズをきちんと引き出す。
3.測距用のレンズ(いわゆる招き猫の手)を繰り出す。
4.測距用ファインダーを除きながら距離を合わせる。
5.レンズの絞りとシャッター速度を合わせる。
6.シャッターをチャージする。
7.フィルムを巻き上げて、新しい面を出す。
8.フレーミング用のファインダーを覗きながら、シャッターを押す。

4−7の順は変更可だが、7(=撮影する直前にフィルムを巻き上げる)は重要。なぜなら、スプリングで自動起立する時、内部が陰圧になる ので、フィルム面 が浮き上がり、平面性が失われるからだ。このため、撮影直前にフィルムを巻き上げ、フィルムにテンションをかけることで平面にもどすよう にする。従って、 撮影後は 巻き上げずに折り畳むように心がける 。

<付記:イコンタの型番号の枝番>

枝 番
フィルム種類
画像サイズ(cm)
な し
120




6x4.5
セ ミ判
/2
120




6x9
ブ ローニー 判
/14
129



5x7.5

/15


116


6.5x11

/16
120




6x6

/18



127

3x4
ペ スト判
/24




135
3.5x2.4
ラ イカ判

Zeiss Super Ikonta 531/2 /
                ツァイス スーパー イコンタ

東京・九段・牛ヶ渕。 Tessar 105mm F3.5
/ RDPIII
Zeiss Super Ikonta 531/2 / ツァイス スーパー
              イコンタ

東京・赤羽・岩淵旧水門。 Tessar 105mm F3.5 / RDPIII

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