そこで島さんは、哺乳動物で毛皮がなくなるように突然変異した個体は、たとえ現れたとしてもアルフレッド・ウォレス(Alfred R.
Wallace)とチャールズ・ダーウィン(Charles R.
Darwin)が唱えた自然選択を受けて、直ちに淘汰されてしまっただろうとおっしゃいます。ハーバート・スペンサー(Herbert
Spencer)がいい出し、ダーウィンも使うようになった適者生存(survival of the
fittest、厳密には最適者生存)の原理に反するからです。たしかにコビトカバは絶滅しそうですけど、バビルーサも、ハダカオヒキコウモリも、ハダカ
デバネズミも、種と認められるほどに栄えて、いまだに生存しています。ヒトにいたっては七十億以上の個体数にまで増えています。哺乳動物の一つの
種としては最多数でしょう。(最)適者生存なんてナンセンス! 大学紛争に深く身を投じ、警視庁機動隊の放水と催涙弾を浴びながら「明日あると信
じて来る屋上に旗となるまで立ち尽くすべし」と、『安
田講堂 1968-1969』(中央公論社、平成17年)を著された島泰三さんです。ノラリ
クラリと論点をはぐらかし、理屈の綻びを言葉の綾で取り繕うダーウィンの論法など、一刀のもとに斬って捨てられます。