| © 2012, Tatsuyuki KAMIRYO | ネアンデルタール人を推理する |
今の義務教育で、「ヒトの進化」がどのように教えられているのか知りません。平成十八年に高知県で開かれた、「小・中・高校における人類学教
育」というシンポジウムの発表要旨集を見てみますと、どうやら今の若い方々には、こういうテーマをまとまった形で学ぶ機会がないようでした。
じゃぁ六十年近く前(昭和30年前後)、自分はどう習ったのか? 小学校か中学校かで(どちらも市立)、「ピテカントロプス・エレクトス」とか
「シナントロプス・ペキネンシス」とかの言葉を、暗記した覚えがあります。「クロマニョン人」もあったから、きっと「ネアンデルタール人」も出て
きたんでしょうね。
哺乳動物の体表の話に進もうとして、また寄り道してしまいました。ごめんなさい。で、体表(ハダカ)
の話なら、ぜひ島さんの『はだかの起源』を
読んでいただきたいのですけど、たぶん無理なお願いでしょう。そこで、教科書のさっきの箇所のあたりと少し重複することをお許し願って、島さんの
説をごく簡単に紹介します。
そこで島さんは、哺乳動物で毛皮がなくなるように突然変異した個体は、たとえ現れたとしてもアルフレッド・ウォレス(Alfred R.
Wallace)とチャールズ・ダーウィン(Charles R.
Darwin)が唱えた自然選択を受けて、直ちに淘汰されてしまっただろうとおっしゃいます。ハーバート・スペンサー(Herbert
Spencer)がいい出し、ダーウィンも使うようになった適者生存(survival of the
fittest、厳密には最適者生存)の原理に反するからです。たしかにコビトカバは絶滅しそうですけど、バビルーサも、ハダカオヒキコウモリも、ハダカ
デバネズミも、種と認められるほどに栄えて、いまだに生存しています。ヒトにいたっては七十億以上の個体数にまで増えています。哺乳動物の一つの
種としては最多数でしょう。(最)適者生存なんてナンセンス! 大学紛争に深く身を投じ、警視庁機動隊の放水と催涙弾を浴びながら「明日あると信
じて来る屋上に旗となるまで立ち尽くすべし」と、『安
田講堂 1968-1969』(中央公論社、平成17年)を著された島泰三さんです。ノラリ
クラリと論点をはぐらかし、理屈の綻びを言葉の綾で取り繕うダーウィンの論法など、一刀のもとに斬って捨てられます。| とびら へ | 前へ 次へ |
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