休八ノート - 東京医科歯科大学・口腔解剖学教室の沿革

last updated 2024/04/01

東京医科歯科大学・口腔解剖学教室の沿革
History of the Division of Oral Anatomy of TMDU

● 東京高等歯科医学校／東京医学歯学専門学校●
1928年（昭和３年)	10月12日、文部省歯科医師開業試験附属病院を母体として東京医科歯科大学の前身である東京高等歯科医学校が設立された。修業年限は本科４年、研究科２年であった。初代校長には歯科医師開業試験附属病院院長であった島峰徹（しまみね　とおる）が就任した。	藤田恒太郎 Prof. Josef Eschlerの講義風景
1929年（昭和４年)	４月、一回生100名の入学式が行われた。一ツ橋の東京商科大学（現一橋大学）の校舎の一部を改築した仮教室で授業が開始された。４月、藤田恒太郎（ふじた　つねたろう）が解剖学の専任者（副手）として東京帝国大学医科大学から着任し、本学の解剖学教室が開設された。
1930年（昭和５年）	12月、お茶の水の東京女子高等師範学校（現お茶の水女子大）寄宿舎跡を一部改築して、本校及び附属病院が移転した（現在地）。
1931年（昭和６年)	３月、藤田恒太郎が教授昇任。開設当初は教官が手薄で、歯の組織学は口腔外科学の金森虎男教授、歯の解剖学は補綴学の川上政雄教授、系統解剖学は東大の西成甫（にし　せいほ）教授、組織学は東大の森於莵（もり　おと）助教授、発生学は東大の井上通夫（いのうえ　みちお）教授の各先生が非常勤講師としてそれぞれの学科目を担当した。また、当時の解剖学実習は東大の実習室を借りて行われていた。また、本学の創設期から昭和18年頃にかけては、当時のドイツの著名な歯の解剖学者である Wilhelm Dieck, Wilhelm Meyer, Karl Greve, Hermann Gross, Gerhart Steinhardt, J. Eschlerらが相次いで招聘され、歯の組織などの講義を行なった。
1933年（昭和８年）	藤田恒太郎がドイツのベルリン大学に留学（～1935年）。
1935年（昭和10年）	7月、本学旧本館（現２号館）が完成。８月、移転。
1937年（昭和12年）	7月7日　盧溝橋事件。日中戦争始まる。
1941年（昭和16年）	12月8日　真珠湾攻撃。太平洋戦争始まる。
1944年（昭和19年）	４月、文部省直轄諸学校管理の一部改正によって、医学科（定員80名）が増設され、校名を東京医学歯学専門学校に変更。校長はひき続き島峰徹教授。歯学科は従前どおり定員80名のままで、教官の定員は教授31、助教授 21、助手21となった。
1945年（昭和20年)	２月10日、島峰徹校長ご逝去。３月10日と４月13日、東京大空襲。木造建築の建物は大部分が焼失し、旧本館（現２号館）のみが残る。骨標本室は奇跡的に戦火を免れる。８月15日、終戦。 11月、藤田恒太郎教授が東大に転任。

● 東京医科歯科大学●
1946年（昭和21年)	６月、新島迪夫（にいじま　みちお、前橋医専［現・群馬大学医学部］解剖学教室初代教授）が教授に就任された。８月27日、旧制・東京医科歯科大学が設置された。10 月には長尾優（ながお　まさる）教授が初代学長に任命された。	新島迪夫桐野忠大
1949年（昭和24年）	解剖学教室は医学部２講座、歯学部１講座となる。歯学部の解剖学教室には桐野忠大（きりの　ただお）が助教授に就任。教授は解剖3講座で新島教授だけであった。
1950年（昭和25年）	８月、新島迪夫教授が歯学部解剖学教室の併任教授となった。したがって当初は歯学部の解剖学教室が新島迪夫教授と桐野忠大助教授で運営されることとなったが、桐野助教授のもとには富田喜内（とみた　きない）助手（元　北海道医療大学学長）、小林茂夫助手（元　松本歯科大学学長）、橋本　巌副手（鶴見大学名誉教授）などがいて、歯学部でも2講座体制が整いつつあった。
1951年（昭和26年）	２月、新島迪夫教授は医学部から歯学部の専任教授に配置替えとなった。なお、歯学部の解剖学教室の教官は１講座ながらすでに教授１、助教授と講師計２、助手４となっていたが、当時の解剖学の授業と実習は医歯両学部が合同で行っていた。４月１日、新制・東京医科歯科大学が設置された。
1955年（昭和30年）	12月、新島迪夫教授が再び医学部解剖学第二講座の教授に配置替えとなったのにともなって、桐野忠大助教授が歯学部解剖学教室の教授に昇任。

1957年（昭和32年）	歯学部の解剖学教室が２講座となる。口腔解剖学第一講座は桐野忠大教授が引き続き担当。口腔解剖学第二講座には教授任命された大江規玄（おおえ　ただひろ）が担当することになった。同年、窪田金次郎講師（東京医科歯科大学名誉教授）が助教授となり、小林茂夫助手が1958年に講師、1960年に助教授に昇任した。佐伯政友（さへきまさとも）助手（東北大学名誉教授）が1960年に講師に昇任した。
1959年（昭和34年）	10月24日　第1回歯科基礎医学会・学術大会、当番校
1964年（昭和39年)	４月、大江規玄教授が東大に転出。 10月10日　東京オリンピック（第18回夏季大会）。

1965年（昭和40年）	４月、一條　尚（いちじょう　たかし）講師が口腔解剖学第二講座の教授に昇任。同年１月、佐伯政友講師が助教授に昇任。	一條尚
1966年（昭和41年）	10月、平井五郎非常勤講師（松戸歯科大学名誉教授）が助教授として着任。 10月10日　第8回歯科基礎医学会・学術大会、当番校
1967年（昭和42年）	歯学部附属研究施設として顎口腔総合研究施設が設置された。同・咬合研究部に1968年２月、窪田金次郎が教授として着任。（この時期、口腔解剖は、一解、二解、顎研の３講座体制）佐伯政友助教授、東北大歯学部解剖学教室教授に昇任。
1968年（昭和43年）	大学紛争（～69年）。２月、橋本巖助手が講師に、また同年10月には助教授に昇任した。４月、桐野忠大教授、歯学部長併任（1971年３月まで）。
1969年（昭和44年）	１～３月に新築された管理棟（現１号館）4階に口腔解剖学教室は移転したが、大学紛争で管理棟が封鎖され、当分の間建物内に入ることができなかった。
1971年（昭和46年）	３月に管理棟（現1号館）の２期工事が竣工。4月に顎口腔総合研究施設に咀嚼研究部が設置された。7月に管理棟（現１号館）の４階に歯学部の組織実習室が移転した。４月、山下靖雄、助手採用。
1972年（昭和47年）	野末哲夫助教授が着任。 11月、新島迪夫教授、ご逝去。	窪田金次郎
1973年（昭和48年）	９月25日、第15回歯科基礎医学会・学術大会、当番校。
1976年（昭和51年）	３月、山下靖雄助手が講師に、翌1977年４月には助教授に昇任。
1978年（昭和53年）	東京医科歯科大学創立50年記念事業の一環として募集されたシンボルマーク図案として窪田金次郎教授のデザインが採用された。４月、寺島達夫、助手採用。
1979年（昭和54年）	４月、第84回日本解剖学会総会、当番校。会頭は医学部解剖の萬年甫教授。
1981年（昭和56年）	４月、桐野忠大教授の退官。８月、山下靖雄助教授が口腔解剖学第一講座の教授に昇任。
1982年（昭和57年）	１月、寺島達夫助手、口腔解剖第二講座の講師に昇任。翌年４月、助教授に昇任。
1986年（昭和61年）	４月１日、柴田俊一、口腔解剖学第二講座の助手採用。
1988年（昭和63年）	10月29日、第2回エナメル質比較発生学懇話会、世話人は山下靖雄。
1993年（平成５年）	４月１日、柴田俊一助手、口腔解剖学第二講座より第一講座へ配置替え。４月16日、馬場麻人、口腔解剖学第二講座の助手採用。
1994年（平成６年）	３月　一條　尚教授、定年退官。

1996年（平成８年）	１月、高野吉郎（たかのよしろう、前・新潟大学歯学部教授）が、口腔解剖学第二講座の教授就任。これにより、口腔解剖学第二講座は高野以下、寺島達夫（てらしまたつお）助教授、坂本裕次郎助手（現　歯学部口腔保健学科講師）、馬場麻人（ばばおと、現徳島大学教授）助手の4名という陣容になった。一方、口腔解剖学第一講座は、山下靖雄教授、柴田俊一講師（後に北海道医療大学教授として転出、平成23年に教授として帰任する）、鹿野俊一助手、鳥居秀平助手の4名であった。	髙野吉郎
1999年（平成11年)	大学院重点化。大講座制の導入が始まり、口腔解剖学第一講座は顎顔面機構制御学講座・顎顔面解剖学分野と改組。
2000年（平成12年）	口腔解剖学第二講座は硬組織再生学講座・分子発生・口腔組織学分野（旧・硬組織構造生物学分野）と改組。ふたつの解剖学講座がほぼ分離された。以下、分子発生・口腔組織学分野（旧・硬組織構造生物学分野）を中心の年譜を記載。
2002年（平成14年）	10月３日、第４４回歯科基礎医学会・学術大会、当番校。
2004年（平成16年）	４月、坂本裕次郎助手異動。口腔保健学科の講師となる。独立行政法人化。教官は教員、事務官は事務員、技官は技術職員と呼称されるようになった。第10回エナメル質比較発生学懇話会、世話人は山下靖雄。
2006年（平成18年）	寺島達夫助教授異動。顎顔面解剖学分野へ。
2007年（平成19年）	２月、田畑純（たばた　まこと）が助教授着任。 4月、通達により助教授は准教授へ、助手は助教へ呼称を変更された。６月、田畑純は宇宙実験 FishScales のプロジェクトに中心メンバーとして参加。９月からは東工大のシーラカンスプロジェクトにも参加。９月、１号館６階にあった研究室は、新築のM＆Dタワーの８階北側へ移転。 10月、吉見雅之（よしみまさゆき）特任助教が着任。 11月、高野吉郎、新しい講義ユニット「医療と造形」を開設（～2014年度）。スタッフは、教授・髙野吉郎、准教授・田畑純、助教・馬場麻人、特任助教・吉見雅之、技官・井関八郎、秘書・大塚実由季。	M&Dタワー（写真左）
2008年（平成20年）	10月23日、第12回エナメル質比較発生学懇話会、世話人は山下靖雄。終了直後に新潟県中越地震（M6.8）が発生し、大きな揺れを感じる。	Fish Scales の公式デカール (デザインは田畑純)
2010年（平成22年）	１月、田畑純が宇宙実験 FishScales 実施のために、M＆Dタワー８階南側にウロコラボを設置。学生有志 6名がボランティアとして運営と実験に参加。キンギョの飼育から試料採取、無菌化、打ち上げ用のパッケージングまで行えるようにした。５月、同ラボで作成した無菌状態のキンギョウロコをフロリダに空輸し、これをスペースシャトル・アトランティス（STS-132）で打ち上げて、国際宇宙ステーション（ISS）で培養実験を行った。宇宙実験は成功裏に終わり、6月にスペースシャトル・アトランティス（STS-132）で試料が帰還し、解析をスタートした。10月、実験終了に伴い、ウロコラボを閉鎖。
2011年（平成23年）	３月11日、東日本大震災 (M9.0)。 M＆Dタワーひどく揺れる。1号館6階の骨格標本室では標本多数が破損する。翌日から余震が多く、原発停止もあって、節電が続く。5月の連休中にディープフリーザーがダウン。損害大。覚え書きはこちら。３月末に吉見雅之、退職。2012年1月21日永眠。享年50歳。
2012年（平成24年）	カリキュラム移行の年。 2年間だった教養部が1年間に短縮されたため、2年生と3年生が同時に進級してくる。しかも、3年生は旧カリキュラム（コアカリ重視のユニット制）、2年生は新カリキュラム（教科ごとの新しいユニット制）であったため、進行がそれぞれで異なり、多忙を極めた。加えて、4月より田畑純は口腔保健工学専攻の要請を受け、「人体の構造と機能 II」の講義も分担（平成28年度まで5年間）。
	髙野吉郎が参加の宇宙実験　Medaka Osteoclastが実施される。同年7月に HIIB こうのとり2号で宇宙用のメダカ飼育槽が、同年１０月にソユーズ TMA-06Mでメダカがそれぞれ ISSへ輸送され、実験が開始された。実験は2群にわけて行われ、最初の試料は、同年11月にソユーズ TMA-05Mで帰還し、もうひとつは翌2013年３月に Space X CRS-2 で帰還した。	Medaka Osteoclast の公式デカール
2013年（平成25年）	３月、馬場麻人、奥羽大学・教授として転出（後に異動して、2015年10月から徳島大学教授）。５月、杉浦真琴技官着任。古くなった実習用の組織切片の修復と整理を開始。 10月、田畑純は口腔保健工学専攻からの追加要請を受け、「人体の構造と機能 I」の講義も分担（平成28年度まで4年間）。講義・実習のビデオ収録を年間を通して行った。2015年5月のHP改訂で、学内視聴ができるようにした。	Medaka Osteoclast の公式デカール
2014年（平成26年）	12月、組織染色実習室（7号館2階）を大学に返還。この部屋の撤去作業と並行して、同館1階の組織実習準備室の整備に着手。他教室の協力も得て、棚や机の配置を大きく換え、より機能的にする一方で、古い器材の保管整理も可能にした。 2015年３月、髙野吉郎教授、定年退職。

2015年（平成27年）	４月、准教授・田畑純、技官・杉浦真琴、秘書・山本智子。組織実習準備室（7号館1階）の整備。切片整理棚と作業机などを整えた。また、実習用の組織標本（切片）に統一番号を振り、ラベルを貼付しなおした。くわしくはこちら。５月、分野HPを大改訂。講義資料を紙からPDFに切り替えて、HPからダウンロードできるようにする。HPは教育、研究、教室の順に改訂。実習方式も変更し、PBL（課題解決型学習）を導入し、TAを雇用し、教科書の配置（10種18冊）を行った。６月、骨標本室（1号館6階）を顎顔面解剖学分野と共同管理するようになる。所在不明になっていた標本台帳（標本カード）を発見し、デジタル化する。この作業中でアイヌ遺骨の存在が明らかになる。	2015年 2019年　 2020年　 2021年 2024年
2016年（平成28年）	４月、講義資料PDFを高精細化。拡大してもきれいに見えるようにした。同時に、組織写真すべてにスライド番号を明記して、実習中に参照しやすくした。４-11月、全37回分の講義・実習をビデオ収録。ビデオ講義としてHPで視聴可能に。７月、文科省からのアイヌ遺骨再調査に「アイヌ遺骨あり」と返答。北海道への返還事業に加わる（～2019年11月）。全国12大学と文科省、内閣官房などとの協議開始。 11月～2017年２月、骨標本室を大改修。震災などで壊れたままだった収納棚を全て取り替え、標本を整理して再配置。くわしくはこちら。
2017年（平成29年）	10月　骨標本室の動物骨、組織学実習準備室の組織標本をフルに使って、「新十二歯考」を歯界展望に連載開始（全13回、田畑）。 11月11日　第15回エナメル質比較発生学懇話会(世話人は田畑)。
2018年（平成30年）	４月　実習にミニテストと実習ボランティアを導入。７月　アイヌ遺骨のうち、所在不明だった最後の一体が見つかる。文献や保管記録との齟齬がなくなる。 11月　教室移転。MDタワー8階北から6階北へ。移転費用456 万円が必要となり、学内外からの寄付で何とか乗り切る。
2019年（平成31年）	３月　秘書・山本智子退職。
（令和元年）	11月　アイヌ遺骨すべてを北海道白老町に新設の慰霊施設へ返還。前後に現地での慰霊祭（カムイノミ、イチャルパ）に参列（田畑）。
2020年（令和2年）	3月　コロナ禍により対面の講義や実習ができなくなる。講義は全て Web で行う。 6月　バーチャルスライド（VS）を導入して Web での組織実習を行う。口腔組織・発生学のスライドをかなりVS化する。
2021年（令和3年）	4月　コロナ禍つづく。講義は全て Web で行う。実習はVSと顕微鏡実習の併用とする。
	10月　技官・杉浦真琴退職。
2023年（令和5年）	3月　コロナ禍ほぼ収まる。講義は Web で続くが実習は対面になる。 7月　分子発生生物学分野と統合。分子発生・口腔組織学分野となる。
2024年（令和6年）	3月　准教授・田畑退職。口腔組織学教室を閉じる。

参考文献	１．桐野忠大教授ご退官記念会．「座談会－解剖学教室の創設から20年（昭和4年～20年）」桐野忠大教授退官記念誌．58-80 (1981) ２．一條尚教授退官記念会．「口腔解剖学講座略歴　30年のあゆみ」一條尚教授退官記念誌．27-35 (1994) ３．山下靖雄．「東京医科歯科大学歯学部」日本解剖学会100年記念・教室史．109-111 (1995)

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● 東京高等歯科医学校／東京医学歯学専門学校●
1928年（昭和３年)	10月12日、文部省歯科医師開業試験附属病院を母体として東京医科歯科大学の前身である東京高等歯科医学校が設立された。修業年限は本科４年、研究科２年であった。初代校長には歯科医師開業試験附属病院院長であった島峰徹（しまみね　とおる）が就任した。	藤田恒太郎 Prof. Josef Eschlerの講義風景
1929年（昭和４年)	４月、一回生100名の入学式が行われた。一ツ橋の東京商科大学（現一橋大学）の校舎の一部を改築した仮教室で授業が開始された。４月、藤田恒太郎（ふじた　つねたろう）が解剖学の専任者（副手）として東京帝国大学医科大学から着任し、本学の解剖学教室が開設された。
1930年（昭和５年）	12月、お茶の水の東京女子高等師範学校（現お茶の水女子大）寄宿舎跡を一部改築して、本校及び附属病院が移転した（現在地）。
1931年（昭和６年)	３月、藤田恒太郎が教授昇任。開設当初は教官が手薄で、歯の組織学は口腔外科学の金森虎男教授、歯の解剖学は補綴学の川上政雄教授、系統解剖学は東大の西成甫（にし　せいほ）教授、組織学は東大の森於莵（もり　おと）助教授、発生学は東大の井上通夫（いのうえ　みちお）教授の各先生が非常勤講師としてそれぞれの学科目を担当した。また、当時の解剖学実習は東大の実習室を借りて行われていた。また、本学の創設期から昭和18年頃にかけては、当時のドイツの著名な歯の解剖学者である Wilhelm Dieck, Wilhelm Meyer, Karl Greve, Hermann Gross, Gerhart Steinhardt, J. Eschlerらが相次いで招聘され、歯の組織などの講義を行なった。
1933年（昭和８年）	藤田恒太郎がドイツのベルリン大学に留学（～1935年）。
1935年（昭和10年）	7月、本学旧本館（現２号館）が完成。８月、移転。
1937年（昭和12年）	7月7日　盧溝橋事件。日中戦争始まる。
1941年（昭和16年）	12月8日　真珠湾攻撃。太平洋戦争始まる。
1944年（昭和19年）	４月、文部省直轄諸学校管理の一部改正によって、医学科（定員80名）が増設され、校名を東京医学歯学専門学校に変更。校長はひき続き島峰徹教授。歯学科は従前どおり定員80名のままで、教官の定員は教授31、助教授 21、助手21となった。
1945年（昭和20年)	２月10日、島峰徹校長ご逝去。３月10日と４月13日、東京大空襲。木造建築の建物は大部分が焼失し、旧本館（現２号館）のみが残る。骨標本室は奇跡的に戦火を免れる。８月15日、終戦。 11月、藤田恒太郎教授が東大に転任。

● 東京医科歯科大学●
1946年（昭和21年)	６月、新島迪夫（にいじま　みちお、前橋医専［現・群馬大学医学部］解剖学教室初代教授）が教授に就任された。８月27日、旧制・東京医科歯科大学が設置された。10 月には長尾優（ながお　まさる）教授が初代学長に任命された。	新島迪夫桐野忠大
1949年（昭和24年）	解剖学教室は医学部２講座、歯学部１講座となる。歯学部の解剖学教室には桐野忠大（きりの　ただお）が助教授に就任。教授は解剖3講座で新島教授だけであった。
1950年（昭和25年）	８月、新島迪夫教授が歯学部解剖学教室の併任教授となった。したがって当初は歯学部の解剖学教室が新島迪夫教授と桐野忠大助教授で運営されることとなったが、桐野助教授のもとには富田喜内（とみた　きない）助手（元　北海道医療大学学長）、小林茂夫助手（元　松本歯科大学学長）、橋本　巌副手（鶴見大学名誉教授）などがいて、歯学部でも2講座体制が整いつつあった。
1951年（昭和26年）	２月、新島迪夫教授は医学部から歯学部の専任教授に配置替えとなった。なお、歯学部の解剖学教室の教官は１講座ながらすでに教授１、助教授と講師計２、助手４となっていたが、当時の解剖学の授業と実習は医歯両学部が合同で行っていた。４月１日、新制・東京医科歯科大学が設置された。
1955年（昭和30年）	12月、新島迪夫教授が再び医学部解剖学第二講座の教授に配置替えとなったのにともなって、桐野忠大助教授が歯学部解剖学教室の教授に昇任。

1957年（昭和32年）	歯学部の解剖学教室が２講座となる。口腔解剖学第一講座は桐野忠大教授が引き続き担当。口腔解剖学第二講座には教授任命された大江規玄（おおえ　ただひろ）が担当することになった。同年、窪田金次郎講師（東京医科歯科大学名誉教授）が助教授となり、小林茂夫助手が1958年に講師、1960年に助教授に昇任した。佐伯政友（さへきまさとも）助手（東北大学名誉教授）が1960年に講師に昇任した。
1959年（昭和34年）	10月24日　第1回歯科基礎医学会・学術大会、当番校
1964年（昭和39年)	４月、大江規玄教授が東大に転出。 10月10日　東京オリンピック（第18回夏季大会）。

1965年（昭和40年）	４月、一條　尚（いちじょう　たかし）講師が口腔解剖学第二講座の教授に昇任。同年１月、佐伯政友講師が助教授に昇任。	一條尚
1966年（昭和41年）	10月、平井五郎非常勤講師（松戸歯科大学名誉教授）が助教授として着任。 10月10日　第8回歯科基礎医学会・学術大会、当番校
1967年（昭和42年）	歯学部附属研究施設として顎口腔総合研究施設が設置された。同・咬合研究部に1968年２月、窪田金次郎が教授として着任。（この時期、口腔解剖は、一解、二解、顎研の３講座体制）佐伯政友助教授、東北大歯学部解剖学教室教授に昇任。
1968年（昭和43年）	大学紛争（～69年）。２月、橋本巖助手が講師に、また同年10月には助教授に昇任した。４月、桐野忠大教授、歯学部長併任（1971年３月まで）。
1969年（昭和44年）	１～３月に新築された管理棟（現１号館）4階に口腔解剖学教室は移転したが、大学紛争で管理棟が封鎖され、当分の間建物内に入ることができなかった。
1971年（昭和46年）	３月に管理棟（現1号館）の２期工事が竣工。4月に顎口腔総合研究施設に咀嚼研究部が設置された。7月に管理棟（現１号館）の４階に歯学部の組織実習室が移転した。４月、山下靖雄、助手採用。
1972年（昭和47年）	野末哲夫助教授が着任。 11月、新島迪夫教授、ご逝去。	窪田金次郎
1973年（昭和48年）	９月25日、第15回歯科基礎医学会・学術大会、当番校。
1976年（昭和51年）	３月、山下靖雄助手が講師に、翌1977年４月には助教授に昇任。
1978年（昭和53年）	東京医科歯科大学創立50年記念事業の一環として募集されたシンボルマーク図案として窪田金次郎教授のデザインが採用された。４月、寺島達夫、助手採用。
1979年（昭和54年）	４月、第84回日本解剖学会総会、当番校。会頭は医学部解剖の萬年甫教授。
1981年（昭和56年）	４月、桐野忠大教授の退官。８月、山下靖雄助教授が口腔解剖学第一講座の教授に昇任。
1982年（昭和57年）	１月、寺島達夫助手、口腔解剖第二講座の講師に昇任。翌年４月、助教授に昇任。
1986年（昭和61年）	４月１日、柴田俊一、口腔解剖学第二講座の助手採用。
1988年（昭和63年）	10月29日、第2回エナメル質比較発生学懇話会、世話人は山下靖雄。
1993年（平成５年）	４月１日、柴田俊一助手、口腔解剖学第二講座より第一講座へ配置替え。４月16日、馬場麻人、口腔解剖学第二講座の助手採用。
1994年（平成６年）	３月　一條　尚教授、定年退官。

1996年（平成８年）	１月、高野吉郎（たかのよしろう、前・新潟大学歯学部教授）が、口腔解剖学第二講座の教授就任。これにより、口腔解剖学第二講座は高野以下、寺島達夫（てらしまたつお）助教授、坂本裕次郎助手（現　歯学部口腔保健学科講師）、馬場麻人（ばばおと、現徳島大学教授）助手の4名という陣容になった。一方、口腔解剖学第一講座は、山下靖雄教授、柴田俊一講師（後に北海道医療大学教授として転出、平成23年に教授として帰任する）、鹿野俊一助手、鳥居秀平助手の4名であった。	髙野吉郎
1999年（平成11年)	大学院重点化。大講座制の導入が始まり、口腔解剖学第一講座は顎顔面機構制御学講座・顎顔面解剖学分野と改組。
2000年（平成12年）	口腔解剖学第二講座は硬組織再生学講座・分子発生・口腔組織学分野（旧・硬組織構造生物学分野）と改組。ふたつの解剖学講座がほぼ分離された。以下、分子発生・口腔組織学分野（旧・硬組織構造生物学分野）を中心の年譜を記載。
2002年（平成14年）	10月３日、第４４回歯科基礎医学会・学術大会、当番校。
2004年（平成16年）	４月、坂本裕次郎助手異動。口腔保健学科の講師となる。独立行政法人化。教官は教員、事務官は事務員、技官は技術職員と呼称されるようになった。第10回エナメル質比較発生学懇話会、世話人は山下靖雄。
2006年（平成18年）	寺島達夫助教授異動。顎顔面解剖学分野へ。
2007年（平成19年）	２月、田畑純（たばた　まこと）が助教授着任。 4月、通達により助教授は准教授へ、助手は助教へ呼称を変更された。６月、田畑純は宇宙実験 FishScales のプロジェクトに中心メンバーとして参加。９月からは東工大のシーラカンスプロジェクトにも参加。９月、１号館６階にあった研究室は、新築のM＆Dタワーの８階北側へ移転。 10月、吉見雅之（よしみまさゆき）特任助教が着任。 11月、高野吉郎、新しい講義ユニット「医療と造形」を開設（～2014年度）。スタッフは、教授・髙野吉郎、准教授・田畑純、助教・馬場麻人、特任助教・吉見雅之、技官・井関八郎、秘書・大塚実由季。	M&Dタワー（写真左）
2008年（平成20年）	10月23日、第12回エナメル質比較発生学懇話会、世話人は山下靖雄。終了直後に新潟県中越地震（M6.8）が発生し、大きな揺れを感じる。	Fish Scales の公式デカール (デザインは田畑純)
2010年（平成22年）	１月、田畑純が宇宙実験 FishScales 実施のために、M＆Dタワー８階南側にウロコラボを設置。学生有志 6名がボランティアとして運営と実験に参加。キンギョの飼育から試料採取、無菌化、打ち上げ用のパッケージングまで行えるようにした。５月、同ラボで作成した無菌状態のキンギョウロコをフロリダに空輸し、これをスペースシャトル・アトランティス（STS-132）で打ち上げて、国際宇宙ステーション（ISS）で培養実験を行った。宇宙実験は成功裏に終わり、6月にスペースシャトル・アトランティス（STS-132）で試料が帰還し、解析をスタートした。10月、実験終了に伴い、ウロコラボを閉鎖。
2011年（平成23年）	３月11日、東日本大震災 (M9.0)。 M＆Dタワーひどく揺れる。1号館6階の骨格標本室では標本多数が破損する。翌日から余震が多く、原発停止もあって、節電が続く。5月の連休中にディープフリーザーがダウン。損害大。覚え書きはこちら。３月末に吉見雅之、退職。2012年1月21日永眠。享年50歳。
2012年（平成24年）	カリキュラム移行の年。 2年間だった教養部が1年間に短縮されたため、2年生と3年生が同時に進級してくる。しかも、3年生は旧カリキュラム（コアカリ重視のユニット制）、2年生は新カリキュラム（教科ごとの新しいユニット制）であったため、進行がそれぞれで異なり、多忙を極めた。加えて、4月より田畑純は口腔保健工学専攻の要請を受け、「人体の構造と機能 II」の講義も分担（平成28年度まで5年間）。
	髙野吉郎が参加の宇宙実験　Medaka Osteoclastが実施される。同年7月に HIIB こうのとり2号で宇宙用のメダカ飼育槽が、同年１０月にソユーズ TMA-06Mでメダカがそれぞれ ISSへ輸送され、実験が開始された。実験は2群にわけて行われ、最初の試料は、同年11月にソユーズ TMA-05Mで帰還し、もうひとつは翌2013年３月に Space X CRS-2 で帰還した。	Medaka Osteoclast の公式デカール
2013年（平成25年）	３月、馬場麻人、奥羽大学・教授として転出（後に異動して、2015年10月から徳島大学教授）。５月、杉浦真琴技官着任。古くなった実習用の組織切片の修復と整理を開始。 10月、田畑純は口腔保健工学専攻からの追加要請を受け、「人体の構造と機能 I」の講義も分担（平成28年度まで4年間）。講義・実習のビデオ収録を年間を通して行った。2015年5月のHP改訂で、学内視聴ができるようにした。	Medaka Osteoclast の公式デカール
2014年（平成26年）	12月、組織染色実習室（7号館2階）を大学に返還。この部屋の撤去作業と並行して、同館1階の組織実習準備室の整備に着手。他教室の協力も得て、棚や机の配置を大きく換え、より機能的にする一方で、古い器材の保管整理も可能にした。 2015年３月、髙野吉郎教授、定年退職。

2015年（平成27年）	４月、准教授・田畑純、技官・杉浦真琴、秘書・山本智子。組織実習準備室（7号館1階）の整備。切片整理棚と作業机などを整えた。また、実習用の組織標本（切片）に統一番号を振り、ラベルを貼付しなおした。くわしくはこちら。５月、分野HPを大改訂。講義資料を紙からPDFに切り替えて、HPからダウンロードできるようにする。HPは教育、研究、教室の順に改訂。実習方式も変更し、PBL（課題解決型学習）を導入し、TAを雇用し、教科書の配置（10種18冊）を行った。６月、骨標本室（1号館6階）を顎顔面解剖学分野と共同管理するようになる。所在不明になっていた標本台帳（標本カード）を発見し、デジタル化する。この作業中でアイヌ遺骨の存在が明らかになる。	2015年 2019年　 2020年　 2021年 2024年
2016年（平成28年）	４月、講義資料PDFを高精細化。拡大してもきれいに見えるようにした。同時に、組織写真すべてにスライド番号を明記して、実習中に参照しやすくした。４-11月、全37回分の講義・実習をビデオ収録。ビデオ講義としてHPで視聴可能に。７月、文科省からのアイヌ遺骨再調査に「アイヌ遺骨あり」と返答。北海道への返還事業に加わる（～2019年11月）。全国12大学と文科省、内閣官房などとの協議開始。 11月～2017年２月、骨標本室を大改修。震災などで壊れたままだった収納棚を全て取り替え、標本を整理して再配置。くわしくはこちら。
2017年（平成29年）	10月　骨標本室の動物骨、組織学実習準備室の組織標本をフルに使って、「新十二歯考」を歯界展望に連載開始（全13回、田畑）。 11月11日　第15回エナメル質比較発生学懇話会(世話人は田畑)。
2018年（平成30年）	４月　実習にミニテストと実習ボランティアを導入。７月　アイヌ遺骨のうち、所在不明だった最後の一体が見つかる。文献や保管記録との齟齬がなくなる。 11月　教室移転。MDタワー8階北から6階北へ。移転費用456 万円が必要となり、学内外からの寄付で何とか乗り切る。
2019年（平成31年）	３月　秘書・山本智子退職。
（令和元年）	11月　アイヌ遺骨すべてを北海道白老町に新設の慰霊施設へ返還。前後に現地での慰霊祭（カムイノミ、イチャルパ）に参列（田畑）。
2020年（令和2年）	3月　コロナ禍により対面の講義や実習ができなくなる。講義は全て Web で行う。 6月　バーチャルスライド（VS）を導入して Web での組織実習を行う。口腔組織・発生学のスライドをかなりVS化する。
2021年（令和3年）	4月　コロナ禍つづく。講義は全て Web で行う。実習はVSと顕微鏡実習の併用とする。
	10月　技官・杉浦真琴退職。
2023年（令和5年）	3月　コロナ禍ほぼ収まる。講義は Web で続くが実習は対面になる。 7月　分子発生生物学分野と統合。分子発生・口腔組織学分野となる。
2024年（令和6年）	3月　准教授・田畑退職。口腔組織学教室を閉じる。

参考文献	１．桐野忠大教授ご退官記念会．「座談会－解剖学教室の創設から20年（昭和4年～20年）」桐野忠大教授退官記念誌．58-80 (1981) ２．一條尚教授退官記念会．「口腔解剖学講座略歴　30年のあゆみ」一條尚教授退官記念誌．27-35 (1994) ３．山下靖雄．「東京医科歯科大学歯学部」日本解剖学会100年記念・教室史．109-111 (1995)