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休八写真館35mm判カメラ室

KMZ Horizont



KMZ Horizont水 平線や地平線を撮る。山稜や森林や草原を撮る。街やビルの喧噪を撮 る。神社や遺跡の静寂を撮る。

デジタルコンパ クトカメラの IXY digital を使うようになって、スティッチアシスト機能というパノラマ撮影モードにはまった。パノラマ写真は本当に面白い。で も、分割撮影した写真をPCでひとつに合成する方式だと、広角写真での歪みを補正できなかったり、画角が小さくなったりする。水平線なども微 妙にゆがむ。 やはり、本物のパノラマカメラが欲しくなっていった。

パノラマカメラには、フジTX-1 (35mmフィルム使用)、 ホースマンSW(中判フィルム使用)、首振り型のパノン・ワイドラックス(35mm 判と中判がある)な どがある。でも、いずれも高価だっ た り、デザインや機能に不満があって入手でき ずにいた。

そうした中で、ホリゾントに出会った。KMZ製の首振り型パノラマカメラで、安いのにしっかりした作りで、デザインも気に入っ た。 シャッタースピード は目盛りでは 1/30 から 1/250 まであるけれど、実際には首振りレンズのスリット幅を変えているだけで、実質は単速だ。絞りの目盛りもあるけれど、これもスリット幅調整になって いる可能 性がある。フィルム感度の目盛りは、入れたフィルムの種類を 忘れないためのものでしかなくて、特に意味はないようだ。つまりはかなり単純なカ メラである。

最初は、レンズを振る時間が案外長く感じられて、手持ち撮影は難しいだろうと思えた。 また、かなり広角であるのに、レンズの位置が引っ込んでいて、左右どちらにしても、寄り切った時のレンズ位置から、撮像に自分の指が入りそうにも 見えた。 しかし、実 際には横位置でも、縦位置でも意外なほどよく撮れるし、指が前にかからないように 持てば手が写 ることもなかった。

レンズを左右に振って写真を撮るため、フィルム面が真円に湾曲していて装填方法が独特だし、水平をとるた めに ファインダーに水準器が見えるようにしてあったりする。着脱可能なファインダーとグリップも悪くないし、金属製のボディの堅牢さもいい。ファイン ダーが見 やすくて、撮影に集中できるし、撮れた写真も十分な画質で失敗がない。こんなホリゾントに触れていると、旧ソビエト連邦(現ロシア)のソユーズ・ ロケットとの共通性を感じてしまう。

昨今のロシアカメラブームは、LOMO のチープなカメラ、いわゆるトイカメラがひっぱっているのだけれど、スプートニクやホリゾントのような一時代前の個性派カメラこそ、ロシア工業製 品の本領 だ。音楽もそうだけれど、ロシアをあ などるなかれ と思うのだ。

追記1: KMZ (Krasnogorsky Mechanichesky Zavod; クラスノゴールスク器械工場) はモスクワの光学機器メーカー。Moscow, ZORKI、ZENITなどのカメラ・レンズを製造していた。現在は、LOMO (レニングラード光学器械連合) を構成する一社となって、Horizon Perfekt や Horizon Kompakt を販売している。

追記2: 指を前にかからないように持つには、左手の親指を立てて左側面につけ、人差し指を左下の角から底面に沿ってまっすぐ伸 ばすようにし て下から支える。右手はカメラ背面から人差し指を伸ばしてシャッターを押すようにし、中指・薬指・小指で右側面を押さえつけてフォールド する。この構え方 は、オリンパスのXA でいつもやっていた方法で、XA を使い始めのころ、何度か自分の指を写したり、手ぶれを起こしたことから、編み出した構え方だ。

追記3: ソユーズの打ち上げ ロケットは発射が始まると間もなく、周りの支柱が花のように開いて、 四方にぱったりと倒 れ、同時にロケットがゆっくりと地上を離れていく。この映像を一度でも見ると、もう、 たまらない。積載量に応じてブースターロケットの編成を変えるのも合理的だし、発射事故も少ないし、乗員の安全性も高いようだ。レトロで 無骨なデザ インも実用本位の現れだと思えてくる。11A511 型と呼ぶ のが正式な名称で、もともとは、大陸間弾道弾として開発されたというから、出自はほめられないけれど。

発売年
1966年  愛着度★★★★
型 式
35mmフィルム 24x58mm パノラマサイズ/首振り型パノラマカメ ラ
シャッター 首振りによるスリットシャッター、1/250, 1/125, 1/60. 1/30, s (実際は単速でスリット幅で調整)
レ ンズ
OP-28P 28mm F2.8  (左右120°上下45°実質 110°x 44°)
測 光
なし
ファ イ ンダー
取りはずし式ビューファ イン ダー。水準器が視野内で確認できる。
フィ ル ム交換
1.使用済みフィルムが ある時 は、底面にあるロック・ボタンを押してから、左上面クランクを使って巻き戻す。このクランクはファインダーの下にあって、軽く反 時計方向にまわすと浮き上 がって巻けるようになる。
2.背面を開ける時は、左側面のスライダーを動かす。
3.フィ ルムをパトローネ室に入れ、フィルムのリーダー部を引き出し、2カ所のガイド・スプールの下を通すようにして、右手のスプールに 差込み、巻き付ける。
4.巻き上げは、右手上面の巻き上げレバー。
5.フィルムカウンターは右手上面の巻き上げレバーを引き上げて、下に残る内側ノブを回して0合わせをする。36枚撮りで21枚 撮れる。
その他 右底面の三脚用ねじ穴にハンドグリップを装着できる。
大きさ・重さ w142mm x h100mm x d67mm 910g
関連 web
Horizont vs Widelux:  http://www.zenitcamera.com/archive/horizon/horizon-vs-widelux-eng.html
パノラマ風景.com: http://www.panorama-fukei.com/
参考文献
中村陸雄, 「ソビエトカメラ党宣言」 原書房 2001
「ハラショー ロシア&旧ソビエトカメラの世界」 日本カメラ社 2003
藤田一咲, 「気まぐれカメラ BOOK」 玄光社 2007

<付記: KMZ / Lomo のパノラマカメラ>

KMZ
FT-1
1951-58
銃の設計で有名なトカレフ氏に よる設計 だという。武骨な箱型のカメラで画角が140°もあり、それでいてレンズは 50mm なので、大きな撮像が撮れ、迫力があるという。ただし、問題もあって、35mmフィルムを使うのだが、専用パトローネに詰め 替える必要があり、中古などで はこの専用パトローネが付属していなかったりする。また、無事に入手できたとしても、詰め替えには暗室が必要になる。

FT-2
1958-65

FT-3
1951-52

Horizont
1966-73

LOMO
Horizon 202
1989-92
後継機は Kompact

Horizon S3 Pro
Horizon Perfekt
2001-
単速であったホリゾントが2速になる。現行機。

Horizon Kompakt
2005-
単速のままのホリゾント。これも現行機。コンパクトというが、大きさはパーフェク トとそれ ほど変わらない。

KMZ Horizont

東京・神田明神。OP-28P 
28mm F2.8 / RDPIII

KMZ Horizont

東京都港湾局専用線の春海橋廃線あと。 OP-28P 28mm F2.8 / RDPIII
KMZ Horizont

東京・隅田川春海橋北側に停泊していた工事用はしけ。OP-28P 
28mm F2.8
/ RDPIII

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