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休八写真館35mm判カメラ室

KMZ Zenit 122



KMZ Zenit 122 Zenit の50周年記念モデル。よくも悪くもロシアカメラのタイムカプセル。1992 年製ではあるけれど、ボ ディは1970年製、レンズは1960年製と思えばよい。初期の Zenit は、金属のカタマリだったが、50年目の Zenit は ABS樹脂製になっている。やや大柄に なったが、むしろ軽量で、収まりはよい。Zenit の流れはこちら
 
マウントは、もともとは、φ39mmのスクリューマウント(L39と同じスクリューピッチだが、フランジバックが異なる)だったもの が
TTL 絞り込み測光用の信号ピン付きのM42マウントになっている。ファインダーは周 囲がマット、中央部分は上下スプリットになっていて、距離あわせはやりやすい。

シャッ ターボタン半押しで実絞りTTL測光が働くが、この状態で、絞りまたは シャッター速度ダイヤル を操作するのは、ホールディングが悪くなるので、操作がしにくい。しかも、露出が1段ほどアンダーになるし、絞りやシャッター速度がファインダーに見える わけではないので、はなはだ操作が心許ない。手持ちの露出計を使った方が簡便で正確であるし、気持ちの上でも楽である。

シャッターボタンに沿って、結構、長く飛び出た黒いボタンは、フィルム巻き戻しの時に使う。フィルム送りのロック解除とフィルムカウンターの リセットをしてくれる。右手のグリップ部にはゼンマイが仕込んであって、タイマーレリースになっている。

シャッターはいかにもメカニカルな音をたててリリースされる。
シャッター音が時々おかしく、現像後のフィルムを見ると10枚に 1-2枚は何も写っていない。巻き上げワインダーの巻き上げ角度が200度ほどあるのだが、これを最後 まできちんと巻いていないと起こることがわかった。中途巻き上げでも、フィルムは給装されていて、シャッターレリースも下りるのだが、シャッ ター膜ががきちんと走らない ために撮影がうまくいかないのである。

50周年モデルであるが、初期〜中期の完成度にはだいぶ及ばない。これまで私が入手したロシアカメラ(レンズ含む)はいずれもよき時代のカメ ラ であって、すばらしい工業製品であり、優れた光学製品でもあった。しかし、このカメラはそうではない。そうではないが、いかにも巷でよく知ら れている「ロシアカメラ」という点では全く期待通りである。

露出が不正確であっても、「案外、撮れているじゃないか」、と楽しむことができる。露出がアンダーであっても「これは雪国仕様だからかな」、 と考えることもできる。そして、そういうカメラを使うことが大好きな自分に気づくのである。

 
追記1: シャッターボタ ン半押しで実絞りで露出測定をするわけだが、これにはレンズ絞りとの連動が必要になる。それで、M42 マウントのレンズでも、Helios 44M など、最後にMが付くレンズのみが、実絞りのためのストロークボタンをマウント面に持っていた。内蔵露出計は、シャッターボタンを半押し、左手で絞りまた は シャッター速度ダイヤル を操作するのは、ちょっとしたサーカス状態であり、操作性はかなり悪い。しかも、露出計が不正確で1段ほどアンダーの写真になることが多いようだ。露出の 精度については個体差の可能性もあるが、いずれにせよ、手持ちの露出 計を使った方が、楽ちんであり正確といってよいと思う。

追記2: 
この 50周年モデルは、チタン・モデルともいわれているが、チタン製という意味ではなく、単なるチタン・カラー仕上げという意味 である。ソ連は、かつてはチタンの精錬や加工技術の先進国であったのだから、ここ はチタンをおごって欲しかった。原潜やスプートニクにもチタンが使われたと聞いているが、実は単なるチタン色だった、なんてことは、「無い」と思いたい。 ただし、注意深く調べてみるとKMZはあくまでも 50th Special Edition と呼んでいて、チタンモデル と呼んでいるのは、カメラショップのみという可能性もある。

追記3: このあと、ZENIT はさらに迷走しはじめる。EOS もどきの流体ボディ、動作音の大きな電動ワインダー、など小手先の改造が続く。光学器械として必要なのは光学精度や露出精度だ と思うのだが。

発売年
1992年  愛着度★★★
型 式
35mmフィルム / フォーカルプ レーンシャッター/レンズ交換式/一眼レフカメ ラ
シャッター 1/500, 1/250, 1/125, 1/60. 1/30, B
レ ンズ
M42マウント
測 光
TTL測光
ファ イ ンダー
マット式+スプリット式
フィ ル ム交換
1.使用済みフィルムが ある時 は、シャッターボタンの直前にあるボタンを押し込んでから、左上面ノブを回して巻き戻す。
2.巻き戻しが済んだら、左上面ノブを引き上げる。背面が開く。古いフィルムを取り出す。
3.フィ ルムをパトローネ室に入れ、フィルムのリード部を引き出し、右手のスプールに 差込み、巻き付ける。
4.巻き上げは、右手上面の巻き上げレバー。
5.シャッターボタンを1回空押す。巻き戻し用のボタンが解除され、フィルムカウンターが0になる。
その他 右手のグリップにゼンマイ式のレリーズタイマーあり。
大きさ・重さ w142mm x h97mm x d49mm 530g  (Helios 44-M 58mm F2.0  装着で 900g)
関連 web
寒い国から来た KMZ 122: http://xylocopal2.exblog.jp/6377473/
USSR Photo.com: http://ussrphoto.com/wiki/default.asp?WikiCatID=48&ParentID=1&ContentID=60
参考文献
島 和也, 「私のロシア・旧ソ連製カメラのコレクション」, クラシックカメラ専科 No.40 pp42-81 (1996年)
菊池芳文, 「私のソ連/ロシアカメラとレンズ」, 写真工業 2003年7月号 pp40-41
「ハラショー ロシア&旧ソビエトカメラの世界」 日本カメラ社 2003

KMZ Zenit 122

隅田川にかかる永代橋。コントラストが明瞭で解像感もある。
KMZ Helios 44-M 58mm F2.0 (M42) / 100T-max
KMZ Zenit 122

隅田川の支流のひとつ亀島川。霊岸橋からの風景。
KMZ Helios 44-M 58mm F2.0 (M42) / 100T-max

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