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休八写真館35mm判カメラ室

KMZ Zorki Yura



Zorki Yuraカメラ天板とレンズ正面に Юра という印刻(陰刻)がある。

なんと読むのだろう。どういう意味だろう。

やがて、ユーラと読むこと、それがユーリ・ガガーリンの愛称であること、その偉業をたたえた記念モデルであることを知った。

ベースは Leica II の模倣機 Zorki 1d である。シャッター速度ダイヤルは低速部がないためにまだ1軸。距離計のファインダーとフレーミング用のファインダーもまだ別れている。フィルムの出し入 れは底部 を開けて行うのでやや面倒である。タイマーもまだ無いし、ストラップ取り付けのための金具もない。しかし、実にコンパクトなボディで、沈胴のエル マー型レ ンズ Industar-22 もよく似合う。このあたり、Leica II そのものである。

ボディの天蓋部、底部、レンズ鏡筒部などの艶消しのチタンカラーが美しい。Zorki 1d は、1956年に生産終了したモデルなので、部材は使い回しもあるだろうが、チタン(とおぼしき)部分は綺麗で新造品かもしれない。ただし、ボディの方に は傷みもあって、両者のギャップからレプリカ品、再構成品の可能性も高い。真偽のほどはわかりかねるが、各部の仕上げ もよく、質感もあり、動きもなめらかで満足できる。

チタンは製錬と加工にコストがかかるが、軽量性、耐蝕性、耐熱性、耐高圧性にすぐれる。ソ連(ソビエト連邦)は、1960年代からチタン外殻の潜 水艦を建造するなど、その生産技術と実用化では世界をリードしていた。ソ連のロケットや人工衛星にチタンが使われていたかどうかは不明だが、ガ ガーリンの 偉業をたたえるカメラ にチタンが使われたとしても不思議ではない。チタンカメラの始まりとしては、ニコンの F2 ウエムラスペシャル (1978年)や、F2 チタン (1979年)がよく知られているが、このゾルキー・ユーラ(1961年)こそがチタンカメラの始まりなら面白いと思う。

ユーリ・ガガーリンの宇宙飛行は、1961年4月12日のことである。ヴォストーク1号で 108分の大気圏外飛行をして地球を一周し、ロシア領内に帰還した。地上7kmのところで、カプセルから脱出し、パラシュートで降下したという。宇宙飛 行中の彼の言葉、「地球は青かった」や「神はいなかった」は有名だが、やはり、宇宙飛行という行為そのものが世界中を驚かせた。

軍拡競争の一端で あったことを差し引いても、ガガーリンの勇気と能力、ソ連の英断とロケット技術はいくら賞賛しても足りないぐらいである。そして、このカメラはそれを思い 出させてくれるのだ。

追記1: Leica II や Leica III は、世界中で模倣された。バルナック型ライカの全生産量が170万台だったのに対して、ソ連で 700-800万台、その他の国で170万台が生産されたという。ウクライナの FED やモスクワのZorki 1 は模倣機の最たるもので、かつ、さまざまな記念モデルやバリエーションもあった。ただし、ありもしない記念モデル や限定モデル、フェイク、デッドコピー、カウンターフィットと いうべき偽装カメラなどもあって購入には注意が必要。

追記2: ユーラには多くのバリエーションがあり、どれが本物か実はよくわからない。私の所有モデル以 外だと、陰 刻が単色のものが多く、軍艦部が クローム仕上げのモデル、鏡面仕上げのモデル、黒塗りのモデルなどがある。Zorki 3 ベースのものや Fed をべースにしたものもある。また、一体、何台作られたのかわからないし、シリアル番号も信じてよいのかどうかわからない。

追記3: インダスター 22 (N22) は沈胴式エルマー型のレンズだが、レンズ構成はむしろテッサー型なのだという。

発売年
1961年  愛着度★★★★
型 式
35mmフィルム/ フォーカルプ レーンシャッター/レンズ交換式/レンジファインダーカメ ラ
シャッター 1/500, 1/250, 1/100. 1/50, 1/25, B
レ ンズ
L39 (ライカスクリュー)、インダスター22 が付属 (ボ ディと同じく Юра の印刻) 。
測 光
なし
ファ イ ンダー
レンジファ イン ダー、 二重像合致式
フィ ル ム交換
1.使用済みフィルムが ある時 は、シャッターレリーズボタンの前にあるレバーをB位置にし、左上面ネジを上に引き出して巻き戻す。レバーを元に戻す。
2.底辺のネジを回して底面を開ける。
3.巻き上げ用スプールを取り出し、フィ ルムを巻き付けてから、フィルムをまっすぐにパトローネ室に入れる。フィルムを奥まできちんと入れる必要がある。テレカのような 薄いカードでガイドをするか、タイムでシャッターを開いておいて、レンズ側から指で押し込む。
4.両方のスプールネジを回してフィルムのたるみをとる。何枚か空写しをして、フィルムを送っておく。
5.フィルムカウンターは巻き上げノブを回して0合わせをする(レリーズボタンの前にあるレバーをB位置にしておく)。
大きさ・重さ w134mm x h68mm x d33mm 397g (付属レンズ装着時 d47mm 500g)
その他
手前から見て、ファインダー右下 のネジを外す と中 に距離計の調整ネジがある。
参考文献
高島鎮雄 「クラシックカメラへの誘い」 朝日ソノラマ (2007) (ライカの歴史、模倣機について)
Jean Loup Princelle "Made in USSR, The Authentic Guide to RUSSIAN and SOVIET CAMERAS 2nd ed." Le Reve Edition (2004) 
関連 Web
チャンスパパの写真館: http://youkun2007.at.webry.info/200812/article_4.html
Fedka.com: http://fedka.com/catalog/product_info.php?cPath=26&products_id=549

Zorki Yura / 昌平橋からの眺め

外神田の昌平橋からの眺め。総武線が渡橋する。
Russar MP2 20mm F5.6 / RDPIII
Zorki Yura / 淡路町のビル

神田淡路町にあるKA111ビル。総ガラス張りに足場のような装飾がある。
Jupiter-12 35mm F2.8 / RDPIII
Zorki Yura / 岡本太郎 こどもの樹

岡本太郎の「こどもの樹」。渋谷神宮前のこどもの城で。
Industar-22 50mm F3.5 / RDPIII
Zorki Yura / VW Transporter T1

フォルクスワーゲン・トランスポルター。美しいクルマだと思う。
Industar-22 50mm F3.5 / TMAX 100


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