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休八写真館35mm判カメラ室

KMZ Zorki 4



KMZ Zorki 4 1956年製と1967年製の Zorki 4 を相次いで入手した。

1956年のものは、Zorki 4 の発売年のもの(写真左)。レンズは Jupiter-8 50mm F2 がついている。ファインダーが明るく鮮明。ホールドする部分は金属のシボに厚地の塗りをほどこしたものだ。Zorki 4 のロゴが陰刻になっているところや、鋳造部の精度など丁寧に作られたカメラだと思う。

一方、1967年のものは、軍艦部が黒く塗られており、ソ連の革命50年を祝う記念ロゴがついている(写真右)。無論、黒ペイントは明らかに 後塗 りであり、記念マークもあやかったものにすぎない。しかし、黒と白の配色がよく、またペイント部のエナメル光沢が非常にきれいで、映り込みが美し い。レ ンズはインダスター61 52mm F2.8 で、これも黒バージョン。ファインダーはやや茶色く翳っているが鮮明。ホールドする部分はナイロンが貼られている。Zorki 4 のロゴはプリントになっており、鋳造部の作りもやや粗い。レンズの停止位置も不正確で真ん中に来ない。量産されるようになって質が低下したのだろうか。

Zorki-4 はシャッターは1軸、ファインダーもフレーム用と測距用がひとつになっているので、レンジ ファインダー機としては進んでいる。ライカやコンタックスの模倣で終始したソ連 時代のカメラ・メーカーの中で、KMZ だけはいち早く模倣から抜け出そうと していた。だが、ライカM3のように、ファインダーの中にフレームがあるわけでは無いし、キャノンのように変倍式に なっているわけでもない。レンズから距離計への連動はライカのようなローラー式ではなく、だるまのようなカタチをしたアーム。巻き上げはノブ を回す方式。フィ ルム装填は底板と 一 体となった裏蓋を外して行う。

こうした点を見ると、独自の工夫やデザイン、意匠が盛り込まれているが、まだまだ改良の余地もある途上のカメラといってよい。しかし、実際の ところ、後継機が出ても販売が芳しくな かったのか、結局、Zorki-4 のみが製造され続けた。必要以上の機能を求めない国民性のようなものがあるのだろうか。

何にせよ、ソビエト時代のカメラには、他国のカメラとは明らかに異なる感触がある。 それが面 白く好ましい。

追記1: Zorki とは「洞察力のある、めざとい、注意深い」という意味らしい。Zorki-1 はライカ II のコピーであったが、Zorki-3 あたりから徐々に独自の機構やデザインが見られる。Zorki-6 まで改良されたが、 Zorki-4 が最も長く生産された。Zorki-4 はいくつかのマイナーチェンジをしており、また、いくつか記念モデルがある。

追記2: どちらの Zorki-4 もシャッター速度はほぼ正確だった。ただし、1967年製はレンズの停止位置が不正確で真ん中に来ない。フィルムカウンターもちゃんと動かない。しかも、 フィルム巻き戻しをするために押し込むボ タンが巻き戻しのあと、元の位置に戻らない。この現象はいろいろやっているうちにシャッターボタンを少し回転させることで解決できたが、どうも作りが今ひ とつである。

追記3: シャッターボタンは押し込んだ位置で、反時計回りに回すことができる。バルブ位置でこの操作をするとタイムにすることがで きる。便利である。しかし、追記2で書いたような巻き戻しのトラブルの原因になっている可能性もある。

発売年
1956年  愛着度★★★
型 式
35mmフィルム/ フォーカルプ レーンシャッター/レンズ交換式/レンジファインダーカメ ラ
シャッター 1/1000, 1/500, 1/250, 1/125, 1/60. 1/30, B, T, X
レ ンズ
L39 (ライカスクリュー)
測 光
なし
ファ イ ンダー
レンジファ イン ダー、 二重像合致式
フィ ル ム交換
1.使用済みフィルムが ある時 は、シャッターレリーズボタンの周囲を時計まわりに回してから(スプールロック解除)、左上面クランクを使って巻き戻す。
2.背面を開ける時は、底辺2カ所のネジを回す。
3.フィ ルムをパトローネ室に入れ、フィルムのリーダー部を引き出し、右手のスプールに 差込み、巻き付ける。
4.巻き上げは、右手上面の巻き上げノブ。
5.フィルムカウンターは巻き上げノブのリングを回して0合わせをする。
大きさ・重さ w143mm x h91mm x d72mm 620g (1957年製)  590g (1967年製)
その他
手前から見て、ファインダー左下 のネジを外す と中 に距離計の調整ネジがある。
左上のフィルム巻き戻しノブの基部にあるレバーは、ファインダーの視 度調整用。
シャッター速度ダイヤル基部のダイヤルはフラッシュの発火タイミング。ストロボでは0に合わせる。
関連 web
SovietCams.com / Zorki 4: http://www.sovietcams.com/index.php?-629362375
Xylocopal's Photolog / 最終進化型バルナックライカ KMZ Zorki 4: http://xylocopal2.exblog.jp/8819210/
参考文献
島 和也, 「私のロシア・旧ソ連製カメラのコレクション」, クラシックカメラ専科 No.40 pp42-81 (1996年)
菊池芳文, 「私のソ連/ロシアカメラとレンズ」, 写真工業 2003年7月号 pp40-41
高野栄一, 「ロシアの光学技術」, 写真工業 2003年7月号 pp74-77
中村陸雄, 「ソビエトカメラ党宣言」 原書房 2001
「ハラショー ロシア&旧ソビエトカメラの世界」 日本カメラ社 2003

KMZ Zorki 4 / Tokyo Sky tree

浅草・吾妻橋の上流側で。巨大なスカイツリーがほぼ同じに見える。

Jupiter-12 35mm F2.8 / RDPIII
KMZ Zorki 4 / Tokyo Sky tree

浅草寺の境内から。五重塔の左向こうにスカイツリーが見える。
Russar MP2 20mm F5.6 / RDPIII
KMZ Zorki 4 / Kanda-gawa

両国近くの柳橋から見た神田川。
隅田川にここで注ぐ
Russar MP2 20mm F5.6 / RDPIII
KMZ Zorki 4 / Sensou-ji

浅草寺の大草履。
ルサールならではの描写。
Russar MP2 20mm F5.6 / RDPIII
KMZ Zorki 4 / Tokyo Hirakawa-Mon

皇居・平川門
。初夏の景色。雲が絶妙。
Jupiter-12 35mm F2.8 / RDPIII
KMZ Zorki 4 / Gakushi-Kaikan

神田錦町にある学士会館。これもルサールならではの描写。

Russar MP2 20mm F5.6 / RDPIII

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