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休八写真館35mm判カメラ室

KMZ Zenit 3M



KMZ Zenit 3M 手の中におさまる一眼レフ。初期の Zenit はなんとコンパクトなのだろう。 フォーカスを合わせ、絞りとシャッターを合わせて、巻き上げレ バーの軸上にあるレリーズを押す。ひとつひとつの動作にメカニカルな音が伴う。フィ ルムの巻き上げレ バーはやや重く、ファインダーもやや暗いが、金属カメラなら ではの操作感と質感がたまらない。

デザインは秀逸で、 Zenit の中でも特にスポーティな感じがする。標準レンズのインダスター50が小型で薄く、コン パクトなボディとよく似合う。

装着できるレンズはゼニットマウント。フランジ径は ライカ L39スクリューと同じ39mmだが、フランジバックはかなり長めだ。関連するマウントを比較すると、下記のようになる。

マウント名
フランジ径
フランジバック
ゼニット (M39 Zenit) 39mm 約45.46mm
ライカスクリュー(L39)
28.8mm
チャイカ (M39 Chaika)
約25mm
プラクチカ (M42)
42mm
45.46mm

インダスター50には、ゼニット版、L39版、M42版とあるが、いずれもゼニット版を ベースに鏡筒を長くしたり、フランジ径を大きくしているように見える。逆に、チャイカ II についているインダスター69では、フランジバックを切り詰めかつ内筒が後ろにほとんど出ない構造にしているように見える。また、フランジ径が同一である ため、ゼニットに は、ゼニットレンズ、ライカレンズ、チャイカレンズを装着できる。無論、普通に使えるのはゼニット版のみであるが、ライカレンズ(L39)を付けると 25-30cmぐらいでのマクロ撮影ができるようになり、チャイカ II に付いているインダスター69を付けると、5-6 cm という超マクロ撮影ができるようになる。

このように、初期のゼニットは、ライカやチャイカのレンズを付けることで、マクロ撮影ができる一眼レフとなる。この裏技は、一部の愛好家には 知られて いたようであるが、さすがに、チャイカ II のレンズを装着した例はこれまでなかったと思う。なお、チャイカ II には交換レンズが存在しないために、なぜ、レンズ脱着できるのかがわからなかったが、レンズは有効に使えることがわかった。 チャイカはハーフ判であるが、レンズは35mmフル判をカバーしていることがわかったし、超マクロに使えるのもありがたい限りである。

KMZ Zenit 3M, back view
追記1: KMZ (Krasnogorsky Mechanichesky Zavod; クラスノゴールスク器械工場) はモスクワの光学機器メーカー。Moscow, ZORKI、ZENITなどのカメラ・レンズを製造していた。現在は、LOMO (レニングラード光学器械連合) を構成する一社となって、Horizon Perfekt や Horizon Kompakt を販売している。

追記2: Zenit C (輸出名 Zenith C)、Zenit 3、Zenit 3M、Cristal、Zenit E とモデルチェンジしたが、この Zenit 3M までは、初代とよく似た雰囲気を残していた。Zenit は天頂という意味で、1953 年の発売。Zenit シリーズはM39 マウント、独自マウント、M42マウント、Kマウント などがあるが、M39は初期の3Mまでである。

追記3: 1957年は革命50年で、Zenit 3M と Zorki 4 などに記念モデルがあった。私の Zenit 3M も記念モデルで、ロケット、クレムリン、アヴローラ号(二月革命で活躍した巡洋艦)のデザインがペンタ部の天蓋にプリントされている。細長い部分をうまく 活かしたデザ インで、結構、気に入っている。

追記4: Zenit 3M は、N.Marienkov のデザイン。KMZ のカメラでは、Zenit Crystal/Kristall (1961), Zorki 3 (1951), Zorki 3M (1954) などのデザインをしているようだ。カメラ名にある M は Marienkov のイニシャルにちなむという。 Zenit カメラの流れはこちら

発売年
1967年  愛着度★★★★
型 式
35mmフィルム / フォーカルプ レーンシャッター/レンズ交換式/一眼レフカメ ラ
シャッター 1/500, 1/250, 1/125, 1/60. 1/30, s
レ ンズ
ゼニットマウント(フランジ径はM39 だが、フランジバックはM42相当)
測 光
なし
ファ イ ンダー
マット式
フィ ル ム交換
1.使用済みフィルムが ある時 は、シャッターダイヤル右にあるロック・ボタンを押しながら、左上面ノブを回して巻き戻す。
2.背面を開ける時は、左側面のスライダーを動かす。
3.フィ ルムをパトローネ室に入れ、フィルムのリーダー部を引き出し、右手のスプールに 差込み、巻き付ける。
4.巻き上げは、右手上面の巻き上げレバー。
5.フィルムカウンターは巻き上げレバー上面のダイヤル。ゼロ合わせをする。
その他 ライカレンズなどを装着するとマクロレンズとして使用でき る。
大きさ・重さ w137mm x h91mm x d53mm 623g (Industar-50 50mm F3.5  装着で 687g)
関連 web
SovietCams.com / Zenit 3M: http://www.sovietcams.com/index.php?-2070516641
USSRPhoto.com / Zenit 3M: http://www.ussrphoto.com/Wiki/default.asp?WikiCat....
参考文献
島 和也, 「私のロシア・旧ソ連製カメラのコレクション」, クラシックカメラ専科 No.40 pp42-81 (1996年)
菊池芳文, 「私のソ連/ロシアカメラとレンズ」, 写真工業 2003年7月号 pp40-41
柴田三雄, 「M39 一眼レフ・ゼニット」, 写真工業 2003年7月号 pp55-59
「ハラショー ロシア&旧ソビエトカメラの世界」 日本カメラ社 2003

KMZ Zenit 3M

隅田川テラスに沿ってところどころに置かれる道しるべ。

KMZ Industar-50 50mm F3.5
/ RDPIII
KMZ Zenit 3M

ガクアジサイ。Zenit 版 N50での最近接撮影。
KMZ Industar-50 50mm F3.5 / RDPIII
KMZ Zenit 3M

ガクアジサイ。ライカスクリュー版 N61 での マク ロ撮 影。
KMZ Industar-61 52mm F2.9 (L39) / RDPIII
KMZ Zenit 3M

ガクアジサイ。チャイカ版 N69 で の超 マ クロ撮影。
KMZ Industar-69 28mm F2.8 (Chaika) / RDPIII

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