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休八写真館デジタルカメラ室

Panasonic Lumix DMC-G2



Panasonic Lumix DMD-G2 趣味で撮るときはフィルムカメラだが、仕事はデジタルカメラ。つまりは、失敗しないカメラも必要。

2004年から始めたキンギョの鱗(ウロコ)の研究が、JAXA の宇宙実験棟きぼうでの実験テーマに採用された。キンギョの 鱗は、コラーゲンとハイドロキシアパタイトを含む骨質層があって、鱗ごと培養することで、骨の培養実験ができる。そこで、これを国際宇宙ステー ションの中で培養し、骨の異常を探る実験を行うことにした。微少重力(もしくは無重力)で長く生活をすると骨粗鬆症のような症状が起こるが、 その 原因やメカニズムを細胞レベル、遺伝子レベルで解析するというものである。

プロジェクト名は Fish Scales という。金沢大学、東京医科歯科 大学、岡山大学、富山大学、東京海洋大学などの研究者が集まって力を合わせた。私はウロコの滅菌・ 培養法の確立と実施、キンギョの飼育、形態学的解析などを担当。また、ウ ロコ実験の国内拠点であるウロコ・ラボを大学内に設置し、プロジェクトの公式マークもデザインした。

宇宙実験用に調整したウロコは、2010年5月14日打ち上げのスペースシャトル・アトランティス (STS-132) で国際宇宙ステーション (ISS) へ運ばれた。ISSでは、野口聡一宇宙飛行士によって微小重力実験が開始され、無事に終了し、5月26日に 同じ STS-132 で地上に戻ってきた。ひとつ前の打ち上げ (STS-131) は1ヶ月遅れたし、ひとつ後 (STS-133) は3ヶ月遅れたから、STS-132 が予定どおりだったのは実に運がよかった。ア トランティスは古い機体だと聞いていたが、結局、追加ミッションで もう一度、打ち上げられ、スペースシャトル最後の飛行 (STS-135) も担う栄えある機体ともなった。

さて、この実験の準備は遡ること2月2日の国内拠点実験室(=ウロコ・ラボ)の開設に始まった。この日の記念の集合写真は宇宙にちなんでハッ セル 503CX を使った。写真は撮れていたけれど、目をつぶっている人や表情の硬い人、人の影になっている人などがいて、痛恨の写真となった。加えて、仕事用に 使ってい たデジタルカメラ、Panasonic Lumix DMC-FZ3 の性能不足もしばしば感じるようになっていたこともあって、このカメラを購入した。東京(ウロコラボ)、つくば(JAXA-TKC)、フロリダ (NASA-KSC) での作業風景やスナップ、さまざまな記録をこのカメラで撮影した。

ハードワークが続いた。3日周期で宇宙に送る試料をウロコ・ラボで調整する。連日10-20名で作業をした。集中力の必要な作業であるため、 みん なが疲れ てくる。単純に仕事をするだけでは駄目だ。それで区切りの度に記念の集合写真を撮った。このカメラの顔認識モードを使い、タイマーで撮る。撮った写真はす ぐに チェック して、いい写真が撮れるまで何度かシャッターを押した。「○○さーん、目をつぶっているよ。○○くん、ちょっと固いねぇ」、とその場で声を出す。 立ち位置 を変えてもらったりしているうちに、みんなの表情がだんだんとやわらかくなってくる。いい雰囲気の集合写真が撮れるようになった。仕事がうまく進 んだ。

我々のプロジェクト Fish Scales には、研究者たちだけではなく、JAXA、宇宙フォーラムなどのサポートスタッフたち、千代田アドバンテック、有人宇宙システムなどの企業からのエンジニ アたち、東京医科歯科大学の学生ボランティアたちなど多くの人々が地道な献身をしてくれた。たくさんの人々 と幸運にめぐまれた宇宙実験になった。

追記1: 宇宙カメラといえば、ハッセルブラッド。アポロ時代の月や宇宙の美しい写 真には圧倒された。宇宙空間には空気がないのできれい な写真が撮れると いうが、やはりそれなりのカメラでないと駄目だと思う。

追記2: キャノンの視線入力AFを EOS7 で愛用していたが、タッチ・フォーカスはそれ以来の大進化であると思う。パナソニックは、超音波モーター、SDカード、手ぶれ防止、セン サー表面のゴミ除 去など、現在のカメラに必須の機能に貢献してきたメーカーだ。規格や標準を作るのも上手で、マイクロフォーサーズはオリンパスと共同、 AVCHD/AVCHD Lite はソニーと共同の規格。

追記3: パナソニックのマイクロフォーサーズ機は、G1 に始まり、ムービー重視の GH1、フラットボディの GF1 と3系統に分かれた。いずれも、小型・軽量のボディとレンズ、簡便ですっきりとした操作系、早くて正確なフォーカス、手になじむデザイ ン、フランジバック の短さ、ハーフ判に相当する撮像サイズ、視野率100%のファインダーなど、カメラ好きのツボをしっかり押さえていると思う。G2 は G1 の後継機で、HDムービー、タッチフォーカス、フォーカス追尾AFなどが導入される一方で、動画撮影中の写真撮影も可能となっていてあく までも静止画優先 のカメラなのが好ましい。

追記4: 後継機として G3 が出た時は、デザインが良く、小型・軽量化されていて、ちょっと心が動いた。しかし、実際に手にとってみるとホールディングがしっくりこなくて、自分の手 に は合わない寸法になっていた。G2 で良かったと思った。

追記5: 
Vitaliy Kiselev 氏のファームアップ・フリーウェア PTool はG2 でも使えるようだ。動画の機能を拡張できる。
 
発売年
2010年4月  愛着度★★★
型 式
レンズ交換式・デジタル カメ ラ(ミラーレス一眼)
撮影素 子 4/3型 Live MOS、1306万 画素 (有効画 素数 1210万画素 4,000 x 3,000 pixel)
プロ セッサ
ヴィーナス・エンジン HD2
レ ン ズ
マウント
マイクロフォーサーズ・ マウント (焦点距離は 2.0倍換算)
標準
Lumix G Vario 14-42mm F3.5-5.6 (35mmフィルム換算で28-84mm相当)
シャッ ター フォーカルプレーン 1/4000〜60秒
測光・ 測距
マルチ測光(144分割)/中央重点測光/スポット測光、 コントラ スト 検出型AF
ファ イ ンダー
ビュー
電子ビューファインダー (EVF / 約 144万画素)
液晶
3.0型TFT液晶モニター (約46万画素・タッチパネル)
記憶媒 体 SDカード(SD、 SDHC、 SDXC)
電池 専用リチウムイオン電池 DMW-BLB13  (7.2V 1250mAh 約55g)
大き さ・重さ w124mm x h83.6mm x d74mm  371g (メモリと電池込みで428g、G Vario 14-42mm 装着で 535g)
その他
顔認識モードあり。カメラ内に手ぶれ補正あり。
関連 web
Panasonic LUMIX G1 でオールドレンズを楽しむ: http://komatsu0513.heteml.jp/G1.html
Panasonic LUMIX G2: https://panasonic.jp/dc/p-db/DMD-G2.html
JAXA きぼうウィークリーニュース 107号: http://iss.jaxa.jp/library/video/spacenavi_wn100623.html

Panasonic Lumix DMD-G2

STS-132 アトランティスの帰還。僕らの 実験サンプル が戻ってきた
Lumix G vario 45-200mm F4.0-5.6

Panasonic Lumix DMD-G2

ケネディ宇宙センターで。アポロの帰還カプセル。
Lumix G vario 7-14mm F4.0

Panasonic Lumix DMD-G2

ケネディ宇宙センターのロケットガーデン。
Lumix G vario 7-14mm F4.0

Panasonic Lumix DMD-G2

ケネディ宇宙センターで。月の石に触ることができた。
Lumix G vario 14-42mm F3.5-5.6


スペースシャトル STS-132 アトランティスの帰還。 Lumix G vario 45-200mm F4.0-5.6

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