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休八写真館その他のカメラ室(APS)

Canon EOS IX E



Canon EOS IX E EOS はゴジラ、IX E はメカ・ゴジラ。

EOS 本流のボディ・デザインは、1980年代にルイジ・コラーニが提案したバイオ・フォルムにある。実際は、1986年のT90 から、なめらかな曲線を取り入れたデザインになり、それが EOS に受け継がれた形だ。コラーニのデザインは人間工学や流体力学に基づくといわれていたが、私にとっては軟 体動 物や 扁形動 物、粘菌や担子菌を連想する造形であって、精悍さを感じられないのが残念だった。

だから、メカ・フォルムとでもいうべき IX E の登場にはぐっときた。カメラの正しい未来形だと思えた。カタチは丸と四角、 マテリアル はプラスチックとス テンレス。柔ら かさと堅さの対比のような巧妙な組み合わせが面白い。デザイン優先のように見えるが、 ホールド感や操作性 にも優れる。今から15年も前のデザインであるが、今でも新しさを感じる。

アドバンストフォトシステム(APS)カメラであり、フィルムは左肩の蓋を開けて上から装填する。 液晶は背 面にある。操作系は本流の EOS とさほど違わない。EOS 55 をベースにしており、視線入力が可能。ファインダーには露出とシャッターの情報に加え、H, C, P のアスペクト比変更のための表示もあって、これも視線入力で切り替えられる。

ファインダーの情報は実像に重なって表示される。アスペクト比を替えるとファインダー像の上下や左右にシェードがかかって撮影されな い部分がわかる。液 晶画面を重ねているのだろうけれど、ファ インダー内の像はかなり鮮明だ。ただし、AF は甘いところがあり、縦位置だと精度が怪しい。結局、適当なところであきらめて、MFを併用することになる。セレク ターはいずれもダイヤ ル形式でわかりやすい。

16mm判、110判、ハーフ判、ボルタ判、そして APS。いずれも、カメラの小型化、 フィルム装填の簡易化、フィルムの経済性や利便性などをアピールして 35mm判に挑んだ。しかし、そのたびに 35mm判も進化して、その牙城を守り続けた。結局、35mm判と共存できたのは、より大きな撮像のブローニー判だけであった。しかし、35mm 判がその 座を 明け渡す時代が来た。デジタルカメラの登場である。

EOS APS機に話をもどすと、同じデザインコンセプトのAPSコンパクト機 IXY が大ヒット。APSのブームは去った後も、その名前とメカ・フォルムはデジタルコンパクト機として今も継承されている。一方、EOS 本流もデジタル機に移行して、本流のデザイン−バイオ・フォルムはいまだゆるぎない。でも、いつか EOS デジタル機で IX デザインの復活があってもいいと思う。平成ゴジラ・シリーズでもメカ・ゴジラが作られたように。

APS size 追記1: APS (IX240) は、従来よりも小型、カートリッジからフィルムを出さない、いつでもフィルムを取り出せる、3種類の画面サイズ(H, C, P)を切り替えられる、文字情報は磁気で記録する、といった特徴を持つ。コ ダック、フジ、ニコン、キャノン、ミノルタが共同でこの規格を策定。キャ ノンは、 一眼レフの EOS IX、コンパクトカメラの IXYを発売した。

追記2: APS は、1996年4月から販売が開始されたが、2011年、コダック、ついで富士フィルムが生産を終了した。デジタルカメラの撮像素子としての APS-H や APS-C がAPS規格の遺産ともいえるが、各社それぞれにサイズの微妙な違いもあって、フルサイズ素子までのつなぎ規格のような感も否めない。ちなみに、APS- H は EOS-1D で使われていたが、EOS-1Dx の登場でフルサイズ判へと統合され、途絶した。

追記3: IX E は、EOSシリーズのEFレンズを装着するが、撮影画面が 35mm よりも小さいため、実焦点距離=表示焦点距離 x 1.25 となる。なお、デジタル EOS の EF-S レンズは APS-C 用であるが、 IX E に付けることはできない。EF-Sができる前だったこともあるが、APS-C よりも大きいAPS-H にも対応させねばならないことも考えると当然かもしれない。

追 記4: 本文に書いたようにデジタル版 IX-E を考えている方は他にも居られた。面白い。→ EOS IX-D

追記5: 海外モデル IX は視線入力機能がない。国内でも少数販売されたようだ。

発売年
1996年10月  愛着度★★★★
型 式
APSフィルム/フォー カルプ レーンシャッター/レンズ交換式/一眼レフカメ ラ
レンズ EFシリーズ (焦点距離は 1.25 倍に換算して使用)
シャッター 電子式フォーカルプレーンシャッター、最高 1/4000
シ ンク ロ接点
X=1/200 (ホットシュー式)
測 光
TTL測光、 EV2-18.5
測距
オートフォーカス(位相差検出方式 AFフレームは3点)
ファ イ ンダー
倍率 0.60。視野率 95%。視線入力機能あり。
フィ ル ム交換
1.フィルムを途中で巻 き上げる 時は、左下、ボタン部の巻き戻しボタンを押す。
2.背面を開ける時は、左側面の開閉ボタンを押す。
3.フィ ルムをパトローネ室に入れ、フィルムのリーダー部を赤いマーク部まで引き出してから蓋を閉める。
4.巻き付けと巻き上げは自動。フィルムカウンターも自動。カウントアップ式。
その他
データ写し込み機能あり。内蔵ストロボ(GN=11)。
大きさ・重さ w132mm x h80mm x d59mm 445g (EF 28-80mm 装着で 645g)
関連 web
キヤノン・カメラ・ミュージアム / EOS IX E ページ: http://web.canon.jp/Camera-muse/camera...
カメラナビ / EOS IX E ページ: http://navi.kitamura.jp/camera/0000000192.html
私が間違っておりました。(エンゾーさんのブログ): http://plaza.rakuten.co.jp/enzzo1972/2009
APSフィルムを取り出して保管: http://actualproof.seesaa.net/article/134817936.html

Canon EOS IX E /
              キャノン EOS IX E

隅田川を上る水上バス。
EF 28-80mm F3.5-5.6
V USM
/ Fuji Nexia 400
Canon EOS IX E /
              キャノン EOS IX E

隅田川を下る石油運搬船。
EF 28-80mm F3.5-5.6
V USM
/ Fuji
Nexia 400



(*)カンムリカイツブリだと思っていました。140122訂正。
Canon EOS IX E / キャノン EOS IX E

ウミウ(*)。
EF 75-300mm F4-5.6
III USM / Fuji Nexia 400
Canon EOS IX E / キャノン EOS IX E

隅田川の中央大橋。
EF 20-35mm F3.5-4.5
USM / Fuji Nexia 400

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