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休八写真館その他のカメラ室(ベスト判)

六櫻社 パーレット (昭和9年型)



Rokuoh-sha Pearlette / 六櫻社 パーレット 尋 常ならざ る美しさ。日本の美の体現。

矢来のかたち、前板のかたち、畳んだときのたたずまい。前板の六櫻社マークがいい。レンズ周りの虎縞模様が、独特の美しさであり、 1934年モデ ルとわかる。ボディの側板(底板)には、漆黒でしだれ櫻がレリーフされている。カメラではなく、まるで伝統の漆器や 錫器 のような作り込みで、日本の工芸品的な仕上がりである。

華奢に見 えるが、案外、丈夫に作られている。前板のみをつかんで持ち上げても剛性があって、レンズ・ボディ間のゆがみはほとんど無い。レンズは旭光学合資製の Optor 75mm F6.3 が付いている。トリプレットの固定焦点レンズだが、 フレームファインダーの真ん中にあるプロクサーレンズを付けると 1-2m に焦点が合う。しかも、このときの警告として、反射式 ファイン ダーの前に黄色いレンズが入る。シャッターは、六櫻社製の Echo で、虎マスク部に組み込まれている。また、フレームファインダーの照準部をボディ背面から引き出すとその下に赤窓が開く。このように、カメラとしても なかなか 凝った作りだと思う。

ただし、あまり使い勝手がよいわけではない。ファインダーは反射式とフレーム式の二つあるが、反射式はあまりに小さいし、暗いところ ではほとんど 像が見 えなく なる。フレーム式の方は照準部のどこが芯になるのか、ちょっとわかりにくい。また、一番の問題はシャッターボタンで、前板の裏に付いているため、 押しにく い上、ストロークが深いので、どうやっても不安定で、手ぶれがこわい。それでも、コンパクトで手になじむボディは不思議な魅力があって、使いたく なるし、 外に持ち出したくなるのである。

昭和9年(1934年)、日本はこれだけのカメラを作れるようになっていた。しかし、世界は世界恐慌(1929年)に揺れていた。ド イツではナチ ス政権が 発足し(1933年)、ポーランド侵攻を始めてしまう(1939年)。日本もシナ事変(1937年)を起こして中国への侵攻を始め、太平洋戦争 (1941〜45年)へと突入していく。

追記1: パーレットは、1925年(大正14年)以降、何度かモデルチェンジし たが、虎マ スクを持つカメラは1932年(昭和7年)から1934年(昭和9年)の 3年間に限られる。レンズもシャッター もすべて国産品に切り替わった時期と一致する。127フィルムを使う、いわゆるベスト判は、1912年のベスト・ポ ケット・コ ダック(VPK)に始まり、1920年の ピコレット(ネッテル社)、1925年のパーレット(六櫻社/小西六商店)などが続いた。また、1931年には 4x4 判の二眼レフ、ベビーローラ イも発売された。

追記2: 私の入手したパーレットは蛇腹のすり切れによって多数の穴が開いていた。ゴム塗料を丁寧に何度も塗って、補修した。内側の ホコリも結構あって、 ブロアーで丹念にホコリ取りをした。

追記3: ベスト判は127フィルム(4.5cm幅)を使っ て、4.5 x 6.0 cm の像を撮る。スプールがかなり細いため、これに巻くフィルムは薄手で、巻きぐせがつきやすい。現在は127フィルムの流通はほとんど なくて、 クロアチアの efke が作る製品だけのようである。

追記4: 1933年〜1936年製造のパーレットについていた Optor 75mm F6.3 などは、旭光学(現ペンタックス)の製造。旭光学は、この時、レンズメーカーであり、まだカメラを製造していなかった。

発売年
1934年   愛着度★★★
型 式
127フィルム 4x6.5cm/フォールディングカメラ
レンズ 旭光学合資 Optor 75mm F6.3
シャッター レンズシャッター、六櫻社 Echo B, 1/25, 1/50, 1/100
測 光/ 測距
なし
ファ イ ンダー
フレームファイ ンダー、 反射式 ファインダー
フィ ル ム交換
1.使用済み フィルムが ある時 は、左上の巻き上げノブで全部巻き上げる。
2.留め金を外して、背面を開ける。フィルムを取り出す。
3.古いスプールを巻き取り部に移して、新しいフィ ルムをセット。背面閉じる。
4.巻き上げノブを回して、フィルムを巻きあげる。
5.赤窓に1が出たら、撮影開始。
大きさ・重さ w128mm x h70mm x d102mm (収納時 d38mm) 390g
参考 web
寺崎さんのHP/パーレット: http://www2f.biglobe.ne.jp/~ter-1212/sakura/pearlette.htm
参考文献
片山良平, 「パーレット」, クラシックカメラ専科 No.2 p57 (1980年)

Rokuoh-sha Pearlette / 六櫻社 パーレット
              (1934 model)

東京・湯島聖堂。杏壇門(大成殿の門)から見た入徳門。
Optor 75mm F6.3 / efke R100

Rokuoh-sha Pearlette / 六櫻社 パーレット
              (1934 model)

東京・神田明神の山門(随神門)。左手は五分咲きの桜。
Optor 75mm F6.3 / efke R100


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