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休八写真館その他のカメラ室(ボルタ判)

宮川製作所 Boltax I


Miyagawa Boltax I
最小クラスの大きさながら、金属カメラの王道を行くカメ ラ。

ボルタ判は、ドイツ・Bolta Werk 社の Boltavit (1936年) から始まるが、宮川製作所のボルタックス(1938年) が無ければ、その普及は無かったと思う。ボルタ判カメラというと、スタート35やリッチレイなどのベークライト・カメラがよく売れたが、これらは 単速・単 絞り・エバレディシャッターの単純なカメラであって子供向 けという要素が強かった。

一方、ボルタックスは本格的なカメラで、3群3枚のレンズ、シャッター3速、絞りは8枚羽根で F4.5 から F16 まで開閉でき、2枚羽根のレンズシャッターから構成されるレンズ群がヘリコイドで前後する。距離は目測だが、ファインダーが見やすく、ボディデザ インも秀 逸だ。特に樽型のファインダーはデザイン的にいいアクセントに なっている。

発売当時の広告では 「ベ ビーライカ」 という愛称が付けられていたが、デザイン、機能ともにオリジナル性が高く、下手な 35mmフィルムカメラや中判フィルムカメラよりも魅力的であったと思う。そして、このボルタックスというカメラが初期に出たからこそ、100台 を優に越 えるボルタ判カメラが後に続き、ボルタ判の世界が広がったのだと思う。

ところで、ボルタ判とは、裏紙のついた35mm幅フィルムである。本来は無孔フィルムだが、現在の有孔フィルムである35mmフィルムを代用 でき る。作業は簡単で、暗室でパトローネからフィルムを出して、ボルタ判のスプールに裏紙と一 緒に巻き直すだけだ(くわしくはこちら)。カメラへのフィルム装填は天蓋部を外して行 う。フィル ムの位置合わせは、自動でも 赤 窓式でもなく、巻き上げノブにある巻き上げ番号で合わせるのが面白い。スタート位置から1枚目までの巻き上げは、およそ3回転することでいいよう だが、こ のあたりは練習が必要。

撮像は、24 x 24mmのスクエア。ハインツ・キルフィットの設計したロボット(1931年)やメカフレックス(1951年)などが、35mmフィルムでスクエ ア写真を 撮るカメラとして有名だが、これらと比較しても、ボルタックスは、より小さく、シンプル、安価という魅力がある。

唯一の欠点は、手ぶれをしやすいことだろうか。シャッター速度が最速で 1/100 ということ、カメラが小さいためホールドしにくいこともあるが、シャッターボタンの位置が原因である。シャッターがレンズの先端付近にあるため、 シャッ ターを押すと 「てこ」 のような動きとなって、カメラが下に押されてしまうのである。このシャッターの位置さえ改良されたら、間違いなく名機であっただろうと思う。

追記1: 購入したカメラの外観はかなり程度がよかったが、レンズを分解 して、ゴミ やカビを 取り除いた。また、シャッターを切ると開いたままになることがしばしばあったのだが、シャッターチャージ部の簡単な修理で解決した。

追記2: 宮川製作所は Picny シリーズ(ベスト判)を作製しており、その姉妹機として、Boltax を作製した。販売は三越デパート。その後、プリズムファインダーを取り付けられるシューが付いた Boltax II、35mmフィルムをそのまま利用できるようにした Boltax III (パーフォレーション部分で音が出るようにした。音響式と呼ぶようだ) が続いた。しかし、ほとんど同型、同性能であり、戦後、萩本商店から発売された Dan 35 も同型、同性能であった。

追記3: ボルタカメラの Boltavit は教育用カメラであったが、Boltax に刺激されたからか、後継機の Photavit は本格的なカメラであったという。一方、一光社やリッチレイ社から出たスタート系のカメラは、もともと35mmフィルムを切り出してシー トフィルムとして 使用するのが原型で、やがて、ボルタ判を使用するようになった。

発売年
1938年  愛着度★★★
型 式
ボルタ判 フィルム 24 x 24mm
シャッター レンズシャッター、 1/100, 1/50, 1/25, B
レ ンズ
Picnar 40mm F4.5
測 光
なし
ファ イ ンダー
透視型
フィ ル ム交換
1.使用済みフィルムが ある時 は、左上の巻き上げダイヤルを使って完全に巻き挙げる。
2.ロックレバーをLからOの位置にして、天蓋部を外す。背板を開けておいて、使用済みフィルムを取り出す。
3.新しいフィルムのリーダー部を空スプールに少し巻いてから、装填する。天蓋を閉じる。
4.背板のところを見ながら巻き上げノブを回してフィルムを巻き、スタートマークが出てきたところで背板を閉じる。
5.巻き上げノブをさらに3-4回転させて、ノブ周囲の1のところに合わせる。1枚目を撮影。
6.2枚目以降は、巻き上げノブ周囲の2, 3, 4, に合わせるように巻き上げていく。
大きさ・重さ
w79mm x h56mm x d50mm  195g
参考 web
Camerapedia / Boltax : http://camerapedia.wikia.com/wiki/Boltax
ごちゃまぜ歴史写真 / 国産カメラの広告: http://syasinsyuu.cool.ne.jp/camera/syasinki-v.htm
ASAやんのHP / Boltax のページ: http://asacame.fc2web.com/htmcbolta/boltax.htm
Boltavit & Photavit の紹介: http://www.submin.com/35mm/collection/photavit/index.htm
参考文献
金井浩, 「ボルタックス、ダン35、フォタビット3機種の愛用記」, クラシックカメラ専科 No.21 pp88-90 (1992年)
藤島廣一, 「私とボルタックス」, クラシックカメラ専科 No.21 pp90-91 (1992年)
竹崎春年, 「ボルタ判カメラのすべて(カタログ)」, クラシックカメラ専科 No.21 pp95-105 (1992年)

Miyagawa Boltax I

東京・佃堀。スタート35でも同様の写真あり。

Picnar 40mm F4.5 / Tmax 100
Miyagawa Boltax I

東京・佃堀。Pentacon six でも同様の写真あり。

Picnar 40mm F4.5 / Tmax 100
Miyagawa Boltax I

東京・中央大橋。

Picnar 40mm F4.5 / Tmax 100

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