| © 2015, Tatsuyuki KAMIRYO | ネアンデルタール人を推理する <追 記> |
女性
(にょしょう)の裸身ではない。人類はどの段階でケモノでな
くなったのか、という疑問である。よく見せられる図では、一端にチンパンジーのようなケモノが、そして他端にはハダカのヒトがいて、その中間にヒ
トへ向かって段階的に膝が立ち、背筋が伸びると共に身長も高くなって、そのたびに体毛が少なくなる二、三頭(人)の生き物が描かれている。みごと
なご都合主義だ。
島泰三(しまたいぞう)氏は、ハダ
カ
の哺乳動物をきわめて特殊な存在だと述べ、三群に分けている(『はだかの起原』木楽舎)。第一群は一生を水中で送るクジラの仲間、第二群は体重一
トンを越える巨体のもち主、第三群は生存不適格種の掃き溜めである。水中では毛皮の保湿性も保温性も無効であるし、巨体であると体積に対して体表
の面積が少なくなるから保温よりも冷却の方が重要だ。だから、第一群と第二群のハダカ化は理に適っている。問題の第三群にはブタイノシシ、ハダカ
オヒキコウモリ、ハダカデバネズミ、ヒト、この四種しかいない。古風な分類用語を使えば、イノシシは偶蹄目、コウモリは翼手目、ネズミは齧歯目で
ヒトは霊長目に属する。いずれの目(もく)も多くの種をかかえているけれど、ハダカの種は各目の中で唯一の奇形種である。陸棲する哺乳動物にとっ
て毛皮は衣類とも家屋とも頼む必需品だ、というのが島氏の卓見である。ただ残念なことに、前掲書の「裸の人類はどこで、いつ出現したのか?」とい
う章には、この問いへの答が記されていない。| とびら へ | 前へ 次へ |
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