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休八写真館中判カメラ室(7x11判)

Ensign Carbine No.12 Tropical



Ensign Carbine No.12 Tropical エンサイ ン・カーバイン(カービン)のトロピカル・モデル。

金属製ではなく、朴の木のボディ。その表面を覆うのは黒革ではなく、ブロンズ風に加工した真鍮。蛇腹も内側は防虫加工したもの。すべては高温 多湿 な熱帯で の使用を前提に したつくりなのだという。だが、そうした仕上げの違いだけがトロピカル・モデルの目指すものではない。

感光板が湿式から乾式になり、ガラスがセルロイド(フィルム)になり、シートフィルムがロールフィルムになった。そういうフィルムの劇的な進 化に よって、 撮影場所を選ぶカメラの時代が終わろうとしていた。どこでも写真を撮れるようにする、そのためには既存のカメラの耐久性を改良する必要がある、そ れがトロ ピカル・モデルだった。

しかし、既存のカメラをベースにする限り、設計の新旧はそのままだ。そうした中にあって、このカメラはフォールディングカメラであるから収納 時は 薄く なるし、感光板もロールフィルムであるから機動性抜群であって、まさに「真正トロピカルカメラ」であったと思う。

惜しむらくは、フィルムの規格が今はすでに製造されていない 116 フィルムであることだが、120フィルムを116フィルム幅にするアダプタを作ればよい。 120フィ ルムを使うと撮像は本来 7 x 11 cm のところが 6 x 11 cm となり、パノラマ的な像になる。

エンサインはイギリスのカメラ・メーカー、ホートン&ブッチャーのブランド名。会社名は変遷があって何度か名称が変わったが、エンサインとい う商 標はその まま受け継がれた。中判フィルムカメラを作り続けたが、35mm フィルムカメラの勃興に抗しきれなかったのか、ついに1961年に終焉した。

トロピカル・カメラが実際に熱帯地方でどれほど使われたのかは知らない。使われたとしてもごく少数台であったかもしれない。むしろ、未開の地 に対 するヨー ロッパの人々の憧れによる産物であったのかもしれない。そんなことが、ノスタルジーを感じる要因なのだろうかとぼんやりと思う。

追記1: トロピカル・カメラとは、高温多湿の熱帯でも使用できるよう金属の部品を減らしたり、防錆加工を施したカメラ。ドイツでもトロー ペン・カメラと していくつもの機種が作られていた。大型のカメラが多く、工芸品としても完成度が高かった。「真正トロピカルカメラ」という言葉は高島鎮 雄さんの「クラ シックカメラへの誘い」から。カーバイン・フロレンタイン No. 4 と No. 5 のトロピカル・カメラを紹介して、この言葉を使っていた。

追記2: 120フィルムは、そのままでも多くのカメラで使用できるが、ベスト版(127 フィルム)に切り出して使用したり、 116 フィルムや 616 フィルムの代用にもできる、本当にありがたいフィルムだ。

追記3: 何度か撮影をしているうちに光線漏れが出るようになった。調べてみると、蛇腹の補修のあて布が剥がれはじめていたので、手芸用 ボンド(=木工用ボンド)で貼り 直した。この他に新しい穴が開きはじめていて、これらはゴム塗料  PROT (黒・油性)を塗って補修した。このゴム塗 料、プラクチカの シャッ ター幕補修にも使ったすぐれもの である。

追記4: 116フィルムの現像をする機会を得た。60年ぐらい前のフィルムで あったが像が写っていた。タイムカプセルのようだった。

発売年
1926年  愛着度★★★
型 式
116 フィルム 7 x 11cm/フォールディングカメ ラ (トロピカル仕様)
シャッター レンズシャッター(Synchro Compar No. 00)、 1/400〜1秒、B
レ ンズ
Aldis-Butcher Anastigmat 120mm F4.5
測 光
なし
ファ イ ンダー
反射式ファインダー、フ レーム ファインダー
フィ ル ム交換
1.使用済みフィルムが ある時 は、上面左の巻き上げダイヤルを使って完全に巻き挙げる。
2.背面を開ける時は、右手側面のボタンをスライドする。使用済みフィルムを取り出し、古いスプールを巻き取り部に移す。
3.新しいフィルムを入れ、リーダー部を引き出し、巻き取り部のスプールに差込み、巻き付ける。
4.巻き上げは上面左の巻き上げダイヤルを使い、カウント窓を見ながら巻き上げる。120フィルムを使う時は、6x4.5の枚数 表示が赤窓に出るので、 3、6、9、12、15で撮影するとよい。
大きさ・重さ
w98mm x h205mm x d165mm (収納時 d40mm) 935g
参考 web
Ensign History Page: http://www.ensign.demon.co.uk/ensigncamerapage.htm
Houghton and Ensign: http://www.camerapedia.org/wiki/Houghton_and_Ensign
Early Photography: http://www.earlyphotography.co.uk/site/entry_C455.html
参考文献
高島鎮雄, 「クラシックカメラへの誘い」 朝日ソノラマ 2007

Photo by Ensign Carbine No.12
              Tropical
東京・隅田川の勝鬨橋(かちどきばし)を南側か ら撮影。 フォーカスが軟らか気味だったので、スキャン後にアンシャープネスをかけた。
Aldis-Butcher Anastigmat 120mm F4.5 / T-max 100

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