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休八写真館中判カメラ室(6x7判)

Plaubel Makina 67



Plaubel
        Makina 67マキナとはラテン語で「機 械」という意味。プラウベルが1911年から使っているカメラの名称で、クラップ型カメラ(スプリングカメラの一種)の代名詞でもある。これ がマキナ67として、1978年に生まれ変わった。

作ったのは「カメラのドイ」の創業者である土居君雄氏。ボディ設計はコニカの内 田康男氏で、レンズはニッコール、レンズシャッターはコパル、製造はマミヤ光機。当時の日本の技術の粋を集めたといってよい。

間宮精一のマミヤシックス (1940)、吉野善三郎のゼンザブロニカ (1956)、土居君雄のマキナ67 (1978) 、と日本にはカメラ好きが高じて作ったカメラの系譜がある。アイデアも独自性も完成度も高く、世界に誇れる中判カメラたちだ。しかし、35mmカメラ全 盛になり、自動露出、オートフォーカスの時代になって、こうしたカメラは姿を消していった。マキナ67は、マニュアルカメラ時代の最後の 輝きなのである。


さて、このカメラ、コンパクトだとよく言われるけれど、手に取るとカタマリ感がある。1,300g もあって、大 判カメラのクラップ式レンジファインダー Chamonix Saber (1,100g) よりも重いのだ。

原因は大きくて重い大口径レンズと堅牢で重厚なボディだろう。レンズに釣り合った、しかも丈夫なボディを据えたのだろうと思うが、レンズを繰 り出すとフロントヘビーになるし、蛇腹部にはさわれないのでホールドが悪く、操作性のよいカメラではない。そもそも、タスキや蛇腹がある限 り、カメラの堅牢性は担保できないのだから、「丈夫なスプリングカメラ」というのは無理がある。

本来、スプリングカメラは軽く小さくするためのカタチであって、堅牢性や機能性など、いろいろなものを切り捨てることが許されているカメラで ある。そして、こうした切り捨てた部分を
細心の注意と技量でもって撮影者がカ バーする。つまり、これがスプリングカメラとしての立ち位置であり、スプリングカ メラと撮 影者の関係である。

従って、高性能なレンズに固執するならば、スプリングカメラではなく、初期型のゼンザブロニカのようなカタチをとるべきだったと思う。一眼レ フになることで、パララックスもなくなるし、ピントも合いやすく、マウントもしっかりして、レンズ交換も可能になる。プラウベルではなく、ゼ ンザブロニカに出資して新しいカメラを作るという手もあり得たのではないかと思うのである。

夢のカメラというけれど、果たして本 当に甘美な夢であったのか? 少なくとも私にはもやもや感のあるカメラなのである。

追記 1: Makina 67 の後は、広角をつけた Makina W67, 220 フィルムにも対応した Makina 670 をリリースしてシリーズ展開したが、後年のマミヤ 光機の倒産に巻き 込まれ、1987年に製造中止。大量に残ったニッコールレンズを東京・夢の島で廃棄したと聞いている。

追記2: 私の購入したカメラは、露出計も距離計も正確だったがモルトが劣化していた。光線漏れはなかったが、劣化モルトの粉がボディ内に散 りはじめていた。ウラ蓋をはずして(ネジ2箇所ではずれる)、古いモルトをきれいに剥がし、フェルトと両面テープで作った手製のモルトを 6mm幅、5mm幅、2mm幅に切って貼って修復した。

追記3: レンズ部の引出ボタンが時々硬く て動かない時があるが、ボタンのやや下側に力をいれて押すと動くようになる。シャッターが降りなくなる時もあるが、シャッター下あたりで蓋と 噛み合う小さな金属ノッチにモルトが載りすぎていないかを確認するとよい。

追記4: 「カメラのドイ」は、1949年創業のカメラ販売店(創業時は卸業)。福岡を拠点に全国に事業を拡大し、1975年には、新宿に進 出して、ヨドバシ、ビックカメラ、カメラのサクラヤなどと新宿カメ ラ戦争と呼ばれる熾烈な価格競争を行った。1990年に創業者土居が急逝。バブル崩壊やデジタルカメラの台頭も影響して業績悪化。2002年に倒産し、再 建もままならず、2006年に破産となった。

追記5: プラウベルは何度か売られた経緯があり、ブルックスに買収された時には、Brooks-Plaubel というブランド名で Veriwide 100 をリリースした。同じように、ドイも Doi-Plaubel というブランドで Makina 67 を売ることもできたはずである。ドイの名前を冠したカメラがあってもよかったのではないか、と思う。

発売年
1978年   愛着度★★★★
型 式
中判フィルム 6x7cm/クラップ式レンジファインダーカメラ
シャッター レンズ・シャッター コパル0番、1/500〜1秒、B
レ ンズ
Nikkor 80mm F2.8
測 光
GPD 中央重点測光
ファ イ ンダー
二重像合致式、パララッ クス自動補正
フィ ル ム交換
1.使用済みフィルムが ある時 は、上面の巻き上げレバーで全部巻き上げる。
2.右側面のロック部のレバーを動かして背面を開ける。フィルムを取り出す。
3.古いスプールを巻き取り部に移して、新しいフィ ルムをセット。
4.巻き上げはスプールを回す。スタート位置までフィルムを巻き取る。
5.フィルムカウンターは背面の開閉で最初に戻る。カウントアップ式になっている。
大きさ・重さ w162mm x h115mm x d56mm 1,300g
参考 web
Nikomat-EL 「プラウベル マキナ」 http://nikomat.org/priv/camera/mednikkor/makina/makina.html
参考文献
川又正卓, 「プラウベル・マキナ67」 in 「スプリングカメラでいこう」 写真工業 2004

Makina 67 / Niki de
              Saint Phale

ニキ・ド・サンファルの「恋する大鳥」。ベネッセ・ビル(多摩市)の前で。
ニキの「蛇の樹」もすぐそばにある。どちらも、色と質感がすごい。
Nikkkor 80mm F2.8 / RDIII

Makina 67 / 縄文の森

縄文前期の竪穴式住居(復元)。東京埋蔵文化財センター(多摩市)の「縄文の村」で。
森にはクルミ、トチ、クリ、カラムシ、ゼンマイなどが多く、縄文の生活を感じられた。
Nikkkor 80mm F2.8 / RDIII


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