updated on 2015/01/25

休八写真館＞針穴カメラ室（大判）

ViSt phf 45 clap type

バルト三国のひとつ、リトアニアのハンド・クラフト・カメラ。

前板と後板に分かれていて、アームとジャバラで連結されている。収納時は実にコンパクトで、使用時には、前板を繰り出して使う。フォールディング式（折りたたみ式）であるが、昔のプラウベルマキナのような形式なので、クラップ式といってよい。

前板は3枚の板の貼り合わせになっており、中板の大部分がくり抜きになっていて、そこに入れたシャフトの支柱を上下の羽根つきネジで締める。また、アームは基部のところで金属板の補強があり、堅牢である。背面のフィルムホルダー押さえは、バネをうまく使っていて、簡単な構造だが光線漏れは無い。

アームを最大に伸ばした時のピンホールとフィルム面の距離は85mmで、このときの対角線画角は 86度。35mm判の24mmレンズ相当の広角である。ただし、アームを途中でも固定できるので、もっと広角寄りの写真も撮ることができる。この自由さはピンホールカメラ特有のもので、レンズが無いために光が焦点を結ばないことに起因する。つまり、ピンホールカメラは、ピンホールとフィルム面の距離が遠くても近くても常にピントがあうという特性があり、結果として距離を自由に変えられるのである。

試写したところ、絵が粗い。ピンホール径は φ0.4mm ということだったが、実測したら φ0.5mm だった。焦点距離 85mm の時の最適ピンホール径は、φ0.33mm であるから、これを 0.1mm厚の真鍮板で自作して取り替えた（作り方はこちら）。このほか、水平をとるための水準器とアクセサリーシューを付けた。撮影時には、シューに 21mm のビューファインダーを付ける。

このカメラは軽くてコンパクトで、スポット露出計を合わせても、撮影バッグは一番小さなものでよい。フィルムホルダーはせいぜい二組ぐらい。三脚も軽量なものでよい。天気のよい日はピンホールカメラ日和なのである。

追記１：　画角とF値の計算式は次のとおり。arctan は tan の逆数で、tan -1 とも表記する。画角の計算はこちら。関数計算はこちら。

[画角] 画角 a, 画面サイズ d, 孔とフィルム面の距離 f　として、a = 2 arctan (d / 2f)
[F値] ピンホール径 r, 孔とフィルム面の距離 f　として、b = f / r

発売年

2015年　　　愛着度★★★★

型式

大判フィルム 4x5 inch ピンホールカメラ

シャッター

遮光シャッター式（＝タイムのみ）

ピンホール

φ0.40mm 焦点距離 85mm F210 / φ0.33mm 焦点距離 85mm F260

焦点距離 (mm)		85	80	70	60	50	40	30
最適な針穴径		0.33	0.32	0.3	0.28	0.25	0.23	0.2
画角 (°)		87	90	98	106	116	127	139
35mm 判換算				20	16	12	10	8
F値	0.4	212.5	200	175	150	125	100	75
F値	0.33	257.6	242.4	212.1	181.8	151.5	121.2	90.9

焦点距離(f) はピンホールからフィルムまでの距離。画角(a)は対角線（160mm）と焦点距離から求められる。F値(b)は使用する針穴の径によって変わる。朱色の部分は焦点距離と針穴のよい組み合わせ部。

[画角] 画角 a, 画面サイズ d, 焦点距離 f　として、a = 2 arctan (d / 2f)
[F値] F値 b, ピンホール径 r, 焦点距離 f　として、b = f / r
［最適な針穴径］　最適な針穴径 c,焦点距離ｆとして、c = √(0.0013 x f)

フィルム交換

１．フィルムホルダーを取り付けて、遮光板を抜く（白面）。
２．写真を撮る。
３．遮光板を入れる（黒面）。

大きさ・重さ

w180mm x h170mm x d50mm 446g (前板引き出して d105mm)
(ファインダーとフィルムホルダー装着時 w195mm x h170mm x d75mm 510g）

参考 web

ViSt Kamera ：　http://www.vist.lt/

隅田川の中央大橋の下面。マンガ「３月のライオン」でも背景に使われていた印象的な風景。巨大な生きものの腹部を見ているようだ。
縦横に走る橋梁にはゆがみが無い。ピンホールカメラはどんなに広角であっても撮像にひずみが出ないのがよくわかる。
隅田川の河面が長時間露出で霧のようになる。85mm φ0.33mm F260 2m10s/ Neopan 100 Acros

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