© 1996-1997, Kyu-hachi TABATA
ヘルシンキだより #17     1997- 9- 1 記

森を歩くとベリーとキノコによく出会います。リスに出会う機会も多くなりました。ピーナッツを与えると距離をおいてついてくることもありま す。冬ごもりのためでしょうか、巣穴のようなところにピーナッツを集めているようです。

この頃は6時20分に日の出、夜8時過ぎに日の入りです。6・7月の頃と比べると4時間から10時間へと夜が長ーくなりました。夜が夜らしく 暗くなるのも妙にうれしくて、ろうそくを部屋に灯して夜を楽しみます。フィンランドはろうそくの消費(一人あたりの)が世界一という変わった 国なのです。


17-1 夏休みの終わり(8月11日)

Irma が 8月4日から復帰。みんなもぼちぼち戻って来ました。8月11日には、ミーティングがあり、ラボ再開です。
綾子も待望の幼稚園パイヴァーコティ・ローヒッコ Pa"iva"koti Louhiko に行きはじめました(8月18日)

。となりの地区ピヒラヤ・マッキ Pihlajamaki にあるのですが、いつもの森を抜け、レイッキ・プイスト Leikkipuisto (短時間の託児施設、広い公園を持つ) の横を抜けて行く小径があり、子供の足でも10分たらずの距離です。綾子は、「朝9時〜昼食〜昼1時」のクラス。クラス名にはムーミンのキャラクターが使 われていて、綾子のクラスは、ヴィリヨンカ Vilijonkka ryhma"ka" でした。月謝は食事付きで月に480Mk。朝食付きというクラスもあるそうです。すぐになじんだようで、3日目から一人で通園するようになり、毎日の様に 新しいフィンランド語や歌を仕入れて帰ってきます。日本語補習校も 8月16日から2学期を迎えました。

17-2 ハリネズミに遭遇(8月13日)

研究所からの帰り道で、ハリネズミ Siiri / Western hedgehog についに出会うことができました。この場所は以前、野ウサギに出会った場所でもあります。ちょっと追いかけて、足でこづくと止まってうずくまり体中の毛を たてます。体長約 15cm。そうっとさわることもできました。

17-3 ピヒラヤの実が熟す

8月に入って、ピヒラヤ Pihlaja / Rowan(バラ科ナナカマド属)の実が熟してきました。ピヒラヤは街路樹としてあちらこちらに植えてあったり、森の日当たりの良い場所に自生しており、 白樺についで目につく植物です。鮮やかな緑の葉と真っ赤な実は、本当にきれいです。綾子がとってきた実はつぶすとさわやかないいにおいがしま した。この実は食用にはなりませんが、実のエキスで作ったゼリー菓子”ピヒラヤ”というのがあります。昔からあるお菓子だそうで、黄色地に赤 いキツネの顔が描かれた袋でスーパーやキオスクに売っており、綾子の好物です。

よく見ていると、真っ赤な実をつけるもの、だいだい色の実をつけるもの、枝がしだれるもの、早生のものなど、幾つかの品種があるようです。ピ ヒラヤは、地名やフィンランド人の名字にもなっていますし、もっとも高額なコインである 10 Mk コインのデザインにも使われています。

(追記)ピヒラヤの結実には当たり年が1年おきにあり、今年(奇数年)はよく実がつく年。幸運に思います。実がまったくついてない木もたまに ありますが、これらは来年(偶数年)、たわわに実をつけるのでしょう。

17-4 オルガン・コンサート

6〜8月は毎夕、ヘルシンキ市内のどこかの教会でパイプオルガンのコンサートがありました。日曜日は大聖堂、月曜日はカリオ教会、火曜日はテ ンペリアウキオ教会・・・となっていて、毎日、違うオルガニストの違うプログラムが聞けます。しかも、大概、入場無料(プログラムを購入する と 20Mk = \500)。全部聞きたいぐらいでしたがそうもいかず、聞けたのは次の6回だけ。特に、8月28日の有終のイベント、オルガン・マラソン(カリオ教会)に 行けなかったのは残念でした。
 7月20日: Aivars Kalejs (Latvia), Organ, Cathedral
 7月21日: Friedhelm Flamme (German), Organ, Kallio church
 7月28日: Risto Valtasaari (Finland), Organ, Kallio church
 8月 5日: Wolfgang Weifen (German), Organ, Temppeliaukio church
 8月11日: Agnes Armstrong (USA), Organ, Kallio church
 8月18日: Dorthy de Rooij (Holand), Organ, Kallio church
F.Flamme と D.de Rooij が印象に残りました。また、オルガンの音も、建物の音響も、プログラムも良い(=人選が良い)カリオ教会が好きでした。この教会には2台のオルガンがあり ます。プログラムの前半を祭壇横のやや小型(といっても高さ 5m ほどもある)のオルガン Kuoriurut / choir organ(1987年製)でこなすことがあり、演奏を見る事が出来るので綾子を退屈させませんでした。後半は、後ろ2階部分にある大型オルガン Lehteriurut / gallery organ(1995年製)を使うのですが、低音から高音までのびやかに出るオルガンで音響もすばらしいものでした。

ちなみにこちらでは教会には必ずオルガンがあるとのこと。「日本ではパイプオルガンはめずらしいよ」というと「教会が無いの?」と勘違いされ ます。

17-5 秋のパーティ(8月21日)

Irma が Tooth Development Group 全員を自宅に招いて、夕食パーティをしました。技官のリーダー Riikka が早めに来て手伝っていましたが、メニューの多くを Irma と Thesleff 氏とで作ってくれていました。夏休み明けには、こうしたパーティを職場ごとにすることが多いとのこと。再会を祝い、これからの長いつらい季節 をがんばって乗り切りましょう、というのが趣旨だということでした。夏休みから療養休職中の技官カイヤ Kaija Kettunen、1月から新たに加わった事務技官エリナ Elina Waris らと同席してバルコニーでゆっくりと食事をしました。庭には、リンゴの木が何本かあり、少し赤みをさした実がいくつもついていました。

17-6 日本酒のゆうべ(8月23日)

TMD97 で来フィンされた栗栖先生から吟醸酒をいただいたのですが、なかなかあける機会がありませんでした。そこで、管木さんに持ち掛けたところ、やはり吟醸酒を 1本持ちよってくれて、「日本酒のゆうべ」となりました。おいしい酒につりあうものということで、ノルウェー産の鮭を 1 kg ほどと、こちらの白身の魚やニシンなどを中央マーケットで買って来て、すべて刺し身や手巻き寿司としました。期待どおりノルウェーの鮭は、吟醸酒に負け ず、あっと言う間に鮭と酒は無くなりました。日本酒はおいしい。本当にそう思いました。また、本当に楽しく美味しい夕食となりました。

17-7 湖上のバレエ(8月23日)

8月最後の週は、ヘルシンキ・フェスティバルがあり、市内のオペラ座や各ホールでさまざまなイベントが開かれます。最初のイベントである トゥーロン湖上に作られた舞台でのバレエを見に行きました。夜9時開始で、空はうす暗くなったところ。照明がバレリーナたちを効果的に浮かび 上がらせます。音響も雰囲気も大変よかったのですが、集まった人の数も尋常ではなく、早々にリタイアして、トゥーロン湖畔を散策してから帰り ました。もやが出はじめ、対岸から遠目に見るバレエは幻想的でした。

トゥーロン湖はヘルシンキ市内中央部にある大きな美しい湖で、湖畔にはさまざまな文化施設がならびます。また、貸しボートもありますし(潤子 と綾子は電動ボートを借りた事もあります。途中で電池切れになったそうですが)、釣りもできます。夏の間は、多くの人が湖畔のベンチやカフェ で過ごします。

(追記)ターリヤさんの話では、8月6日の原爆記念日の日、灯篭流しがこのトゥーロン湖で行われているとのことでした。広島の太田川で見た灯 篭流しを思い出しました。

17-8 綾子、バレエを始める(8月28日)

ひょんなことから、綾子がエシバレというバレエ初級教室に通うことになりました。毎週1回(木曜日)

45分のレッスンで月に 165 Mk(4000 Yen)。4-6 才対象の教室だということですが、みな可愛いチュチュを着ていたとのことで、すぐに綾子のチュチュ(160 Mk)を買わされてしまいました。

場所は以前住んでいたソルナイネンです。ソルナイネンには岩の塊で出来た小高い丘があるのですが、その丘の下に作られた地下施設(もとは核 シェルター?)が、レッスン場でした。丘の上には公園があり、よく綾子を連れて行きましたし、この地下施設の入り口も知っておりましたが、私 達、異邦人にとっては「謎の施設」でした。偶然にも、その謎が解けた事になります。

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