© 1999-2000, Kyu-hachi TABATA
フィンランドの習慣 (ヘ
ルシンキだより #22)
22-1 家の中では靴をぬぐ
玄関に入ったら、靴を脱ぎます。玄関といっても段差がなく、ドアをあけるとそのまま部屋になっているのですが、たいがい左手か右手の壁にハンガー
が据え付けてあります。そこでコートを脱いでハンガーにかけ、帽子と手袋を上の棚にのせ、靴を脱ぎコートハンガーの足下に置きます。部屋の中は、
スリッパのような室内履きを履くか、靴下だけで歩きます。
22-2 室内は薄暗い
部屋の中にあまり明るい電灯をつけません。オフィスなどには蛍光灯がついていて比較的明るいのですが、それでも、机の上にスタンドをおくことは
めったにありません。普通の家庭では、蛍光灯を使うことはまずないようで、大概、白熱灯を部屋の隅にちょっとつけているだけという程度。食事の時
などは、ろうそくをテーブルにおきます。カーテンは夏は厚手のもの、冬は薄手のものを使います。夏は白夜でいつまでも明るいため、これをさえぎる
ためです。冬は日照時間が極端に短くなるため、少しでも明るくするためです。
22-3 タバコは外で吸う
室内での喫煙が法律で禁じられていますので、スモーカーは建物の外でタバコを吸います。私のいた研究所では、各階の一番はしに小さなバルコニーが
あり、そこでスモーカーたちがタバコを吸っていました。その出入り口には、厚手のコートや傘がおいてあり、最初はなぜこんなところに? と思って
いたのですが、スモーカーたちはそれを使って、どんな寒い冬の日でも雨の日でも、外で喫煙していました。「自分たちは人一倍、外の空気を吸ってい
るので健康だ」とへらず口をたたいている人もいましたが、ちょっと気の毒なぐらいでした。列車の中などでも喫煙はできず、貨物室の一角の小さな喫
煙コーナーにスモーカーが並ぶようにして立って、タバコを吸っているのを見たことがあります。
22-4 息を吸いながら話すことがある
普通は息を吐きながら話をするものですが、フィンランドでは息を吸いながら「ヨーヨー」などと相づちをうったり(=「うん、うん、そうだね」と
いった意味)、時にはそのまま話をしたりします。女性に多いように感じます。また、驚いたときにも「息をのむ」ように息を吸いながら「ヨーー」な
どと発声します。驚くのはこちらのほうです。その後、なれてくると自分も少しできるようになりました。
22-5 自分の名前の日がある
フィンランドのカレンダーを見るとすべての日にそれぞれ個々の人名が印刷されています。4月28日なら、Ilpo,
Ilppo, Tuure、6月19日ならば Siiri
といった感じです。ほとんどの場合、その日が誰かにちなむ日というわけではなく、ランダムに割りふれられているようです。また、毎年のように、何名かの名
前(現代風の名前や外国風の名前)が新たに加えられているという話も聞きました。この自分の名前の日は、その人にとっては特別な日であり、親戚や
友人からカードが送られてきたり、ケーキを職場の人にごちそうしたりします。赤ちゃんが生まれた時、その日の名前をそのままその子の名前にするこ
ともあるようです。
22-6 敬称は使わない
ミスター、ミス、ミセス、ドクターといった敬称は使いません。手紙の宛名書きのところでも敬称は使いません。最初は奇妙でしたし、相手に失礼な気
がしましたが、慣れてきました。でも、言葉遣いにはやはり礼儀があり、目上の人に対しては言葉を選んで使うようでした。
22-7 入り口でのマナー
集団で入り口に向かうときは、若い人や男性がドアをあけ、全員が入り終わるまでドアをあけて待ちます。他人同士でも、あとからすぐに続く人がある
場合、必ず、最後の人が入るまで待ちます。レディファーストのような習慣はありません。そのとき、そのときで一番先頭にいた人や手の塞がっていな
い人がマナーとしてやるようです。
22-8 洗濯物は中に干す
洗濯物を外に干す習慣がないようです。洗濯物はバス・トイレの部屋や室内の隅に干すとのこと。室内は冬でも暖かく、しかも乾燥していますから、洗
濯物は適度の湿度を与えてくれ、よく乾きます。洗濯機はドラム式の全自動。服も多くはコットンが多く、殆どが洗濯できるものばかりでした。そのた
めかクリーニング屋さんが市内に数件しかありません。
22-9 お店にはいったら挨拶
ショッピングなどでお店にはいったら、お店の人に軽く挨拶をします。パイヴァ(こんにちは)とか、ハローと言えばOK。頭を下げて挨拶をすること
はまずありませんので、挨拶は口元がそれらしく動けば大丈夫。聞こえた方がいいのですが、聞こえなくても全然かまわないと思います。少し、くだけ
た感じになってくると、ヘイとか、モイなどといいながらお店に入ります。出るときも(特に買い物をせずに出る時)、バーイ、とか、サンキューと軽
く挨拶をしましょう。
22-10 ハンカチはもたない
トイレなどについているほとんどの手洗い場では、紙タオルが設置しています。このためハンカチを持ち歩かなくてもまず大丈夫。こちらの人もほとん
どが持ち歩いていないのでは? 冬などは零下10度前後の日が続きますから、濡れたハンカチをたとえばズボンのお尻のポケットに入れて持ち歩くな
どするのは、あまりよろしくありません。たぶん、ハンカチはみんなもっていないはずです。
22-11 廊下は走らない
私は、ついつい廊下を走る癖があります。しかし、こちらでそれをやると、何人もの人に
emergency
(緊急事態)か? と聞かれました。走ってはいけません。外でも走る人は皆無。走ると汗をかき、それがすぐに冷えて体調を崩し、風邪をひく原因になりま
す。バスに乗り遅れそうになっても、信号が替わりそうになっても、走ってはいけません。
22-12 チップはいらない
チップはいりません。タクシーであれ、ホテルであれ、すべてサービス料にあたるものが含まれています。