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フィンランドの言葉 (ヘ ルシンキだより #23)


23-1 Junko はユンコ

日本人は、R や V、Th の発音が苦手ですが、フィンランド人は J の発音が苦手のようでした。もともと Jo を「ヨ」と読む習慣があることから「ジョ」とか「ジャ」という言葉を使うことがないのです。ですから、Junko はユンコと読まれていましたし、ラボの同僚 Hyun-jung の名前に至っては、みんなが発音できないため、洗礼名の Rosa が通り名になっていました。また、母音の組み合わせによっても発音できない単語があるとかで、Olympic は発音できないと言っていました。私の耳には十分「オリンピック」に聞こえましたが。

 一方、L と R の発音の違いは明確で R は舌をトレモロのようにふるわせて(タンギング)発声します。上手な発音を聞くと耳に残るぐらい美しく感じます。女性の名前には、 Tarja,Marja,Merja,Riita,Riika,Irma....などなど、R の入っている場合が多かったのは偶然でしょうか? ところで、このタンギングができるかどうかはメンデル遺伝で決まっており、できない人もいま す。そうした場合は、子どもの名前に R を入れないのだ、と言う話も聞きました。親が出来るけど、子ども自身が出来ない時は、どうするのでしょうか?

23-2 英語は BBC じこみ

週末のテレビでは、BBC(英国放送協会)制作の英語番組を見ることができました。短波ラジオだと英国からの放送が直にいい感度で入ってきていた ようです。普通のAMラジオでも聞くことができる放送がありました。これはフィンランドに限らず、ヨーロッパのどこでも同じかもしれません。本場 の英語が身近にある環境はうらやましい限りでした。

 ちなみにフィンランドの学校で使っている英語の教科書がよく出来ていました。少ない単語数でも十分通用する英語力を身につけるよう配慮されてい ましたし、内容も外国旅行をするとう設定で、1年をかけて世界のいろいろな国を巡るといった趣向などが凝らしてあり、英語教育が国際社会の理解を 深める教育にもつながっていました。最近の日本の英語教育の現状をよく知りませんが、私の受けた英語教育は、まず単語の暗記から、という典型的な 詰め込み教育でしたからその違いに驚きました。

 英語は若い人は誰でもしゃべれるようでした。スーパーなどで店員さんに声をかけると皆、単語数は少ないものの、十分に生きた英語を使って会話を してくれました。単語力に頼る我々の英語とは対極にあり、明らかに彼らの英語の方が柔軟性がありスマートでした。

23-3 公用語は4つ?

フィンランドはフィンランド人が多数を占めていますが、少数のひとびとが使う言語に対しても配慮がされています。たった500万人という小さな国 でありながら、すべての言語で教育を受ける権利を認めており、例えば電話帳にはそれぞれの言語に対応したヘルプダイヤルが載っていました。国語 は、フィンランド語、スウェーデン語の2つですが、各自治体ごとに公用語の制定ができるそうで、サーミ語(ラップランドのサーミ人の言葉)、ロマ 語(ジプシーの言葉)をも認めている自治体があるとのことでした。また、その自治体で8%以上の人々が使う言語は公用語とすることが法によって定 められているとも聞きました。公用語とはまさに公文書などの作成に使われる言語であり、警察などで公の文書を作成するときは、いずれの公用語を使 うかまず聞かれます。そして、その答えに応じて、その言語で書かれたフォームが渡され、その言語での記入が要求されます。英語がどこでも通用しま すが公文書だけは英語不可でした。公用語や公文書の意味を知る機会になりました。

23-4 テレビ放送

テレビは、YLE(フィンランド放送協会)のもつ TV1, TV2, MTV の TV3、スウェーデン語放送の TV4 の4チャンネルがありました。これらのいずれも、昼の間は放送をしていません。男女ともに働く国ですから、昼の放送があっても誰も見ないということなので しょう。夕方になるとテレビが始まります。オリジナルの番組もありますが、ときどき、よその国の番組を使っている番組もありました。日本の動物番 組を使った番組では、日本のタレントがそのまま出ているコーナーなどもあり、ちょっとびっくり。

 テレビの信号形式は PAL 形式(日本は NTSC形式)でしたから、日本からもってきたビデオカムをつなげると写りの悪い白黒画像が写るだけでした。

23-5 国歌「我が祖国」

スウェーデン語詞とフィンランド語詞があります。もとはスウェーデン語の歌詞につけられた曲だったと聴いています。日本語詞もありますのでご紹介 します。渡辺忠恕さんはフィンランディアの合唱の歌詞の和訳で知られている方です。

■渡辺忠恕・訳詞
わが祖国スオミ、
その名ひびけ。
谷間も山も湖(みず)も、  
父祖の残せる国よ、
汝をわれ愛す、
祖国スオミ。
国の栄え愛で、
咲くよ花が。
われらの愛は国の 
希望と喜び覚ます、
高らかに歌おう、
国を讃え。
■松村一登先生による和訳
私たちの国「スオミ」,
母国よ響け この黄金のことば
これほど愛すべき渓谷や山や湖や岸辺が 
どこにあるだろう
この北国の祖国のほかに
愛する父たちの国のほかに
お前の繁栄がその殻を破り
今こそ花を咲かせるだろう  
私たちの愛国心はさらに高まり
お前の希望が,喜びが光り輝き
そして今,祖国よ,お前の歌が
より高らかに響きわたるだろう

在日本フィンランド大使館のHPにはこの国歌の楽譜と音声ファイルがあります。
http://www.finland.or.jp/index-j.html
フィンランド語の研究をされている松村先生のHPではフィンランド語とスウェーデン語の歌詞が紹介されています。松村先生は白水社「エキスプレ ス・フィンランド語」の著者であります。
http://plaza3.mbn.or.jp/%7Ekmatsum/Finn/maamme-j.html
面白いことに、フィンランド国歌の旋律は、バルト三国のひとつであるエストニアの国歌としても使われています。またシベリウスの「フィンランディ ア」が第2国歌のような存在なのですが、このフィンランディアの旋律も、アフリカのある国で国歌として使われています。これらは、それぞれの独立 の時にフィンランドが重要な支援をしたことに感謝してのことだと聞いています。国歌のあり方を考えさせられます。

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