| © 2012, Tatsuyuki KAMIRYO | ネアンデルタール人を推理する |
ご自分の雨具がまるで役に立たない暴風雨の中でも、サルの群れを観察し続けてこられた島泰三さんは、そんなことを百もご承知です。それで毛皮の
ことを、あれは野生動物の「衣類」というだけでは足りなくて、どんな雨でも吹雪でも丸くなってやり過ごすことのできる「家」でもあるのだ、という
ふうに述べておられます(『はだかの起源』)。昭和三十三年からの一年間を、南極「昭和基地」周辺のブリザードの中で生き抜いたタロ、ジロを思い
出せば、そのとおりでしょう。そうだからこそ島さんは、一トンを越えるほど巨大でもなく一生を水中で暮らすわけでもなく、これといった自然選択上
の利点もなしに毛皮を失った哺乳動物は、子孫を残すことなく消えていっただろう、とおっしゃいました(「そろそろ体表の話題へ」の項)。そのうえ
で、例外的な数種の動物を挙げられて、例外なんだから、いたとしても大所帯の「目」の中に、ただ一種だけいるくらいだ、といわれたのです。| とびら へ | 前へ 次へ |
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