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休八写真館その他のカメラ室(ボルタ判)

一光社 Start 35 KII



Ikkosha Start 35 KII / 一光社 スタート 35 KII ボルタ判のおもちゃカメラ。ベークライト製カメラ、スタート 35 の最終型でもある。

スタート35シリーズは一貫して基本デザインをほとんど変えなかったが、この KII では、金属板が多用されて、それ以前のレトロな雰囲気とは違う、精悍でモダンな顔つきになっている。レンズはシングル・メニスカスで、絞 りは2段。フィルム交換は背蓋を開けて行う。ベークライトカメラは陶器のように欠けやすく、実 際、この KII でも一部欠けていたのだが、造形用のパテで穴を埋め、エナメル塗料で黒く塗って補修した。

フィルム面はゆるやかな円弧を描いており、撮像の周辺ボケ補正を意図していると思われたが、実際にはスクエア部(中央の 24x24mm 部)の外になるとボケがかなり目立つ状況であった。ロールフィルム特有 の巻きのゆるみやカールが原因かもしれないと考え、ポリスチレン板でフィルム圧板 を作って、背 蓋のフィルム押さえ部に貼り付けた。

もともと、スタートシリーズは、35mmフィルムをシートフィルムのように切って使う start を起源とする。撮像は 24 x 24 mm のスクエアフォーマットだったようだ。その後、start 35 で 35 mm 幅のロールフィルム(ボルタ判)を使うようになったが、撮像は 24 x 24 mm のままだった。だから、Start 35 S から 24 x 36 mm になったものの、広がった撮像部分はいわばオマケのようなもので、ボケても埒外だったのかもしれない。

ボルタ判は35mm幅の無孔フィルムに裏紙を付けたものだが、35mmフィルム(135フィルム)に裏 紙を付けてスプールに巻けば代用できる(作り方はこちら)。パーフォレーション部分 (有 孔部分) には撮像がかからないし、白黒フィルムでもカラーフィルムでもかまわない。白黒ならば自分で現像するし、カラーならばパトローネに再び収納してラ ボに出せ ばよい。

スプールに巻くのは12コマ分であるが、巻いた状態はかなりコンパクト。パトローネ無しの35mmフィルムがこれだけコンパクトになるとは思 いも しな かった。それでいて、撮像サイズは普通の35mmフィルムと同じであるし、巻き上げ機構がシンプルなのでカメラ・ボディを小さく、簡単にできる。 ボルタ 判、あなどりがたし、である。

追記1: 「おもちゃカメラ」は子供の教育玩具としての意識が強く、遊びの要素が強 い「トイ カメラ」とは幾分、性格が異なる。実際のところ、かなり高額な買 い物でもあって、壊れてもよい、きちんと写らなくてもよい、というような現在のトイカメラの「ゆるさ」は受け入れられるはずもな い。というわけで、ここでは「トイカメラ」ではなく、「おもちゃカメラ」。

追記2: 私の KII には付いていなかったが、本来ならば、左肩にストラップが付き、銀メッキのレンズキャップが付属するようだ。スタートカメラのオリジナル は野村勝雄さんと いう方の設計らしい。販売は、一光社とリッチレイ社に委ねられたという。このため、両社から出てい たボルタ判カメラは名前がちがってもほとんど同じ構造だった。

追記3: シングル・メニスカス・レンズ、フィルム面のカーブ、固定焦点、固定シャッター、いずれも後の「写ルンです」などの撮りっきり カメラと共通だ。 これら簡単カメラが出てきた時は、簡単な構造できれいな写真が撮れることに大きな驚きを覚えたが、スタートカメラで育った人たちの設計 だったのかもしれな い。

発売年
1958年  愛着度★★★
型 式
ボルタ判 フィルム 24 x 36mm
シャッター エバレディ・シャッター、 Instant (1/30)、 Bulb
レ ンズ
47mm F4.7  (絞りは S / W の 2 段。 S は夏用で F16, W は冬用で F11ぐらい)
測 光
なし
ファ イ ンダー
ガラスあり
フィ ル ム交換
1.使用済みフィルムが ある時 は、左上の巻き上げダイヤルを使って完全に巻き挙げる。
2.背面を開けて、使用済みフィルムを取り出し、古いスプールを巻き取り部に移す。
3.新しいフィルムを入れ、リーダー部を引き出し、巻き取り部のスプールに差込み、巻き付ける。
4.巻き上げは上面左の巻き上げダイヤルを使い、緑窓を見ながら巻き上げる。
大きさ・重さ
w92mm x h58mm x d61mm  180g
その他
ドイツ式のシンクロ接点あり。
参考 web
ベークカメラの世界: http://park1.wakwak.com/~hisamaro/6bake-camera.htm
ボルタ判フィルムカメラ スタート35: http://www5e.biglobe.ne.jp/~clenssic/camera-start35.html
参考文献
畑鉄彦, 「スタートカメラ」, クラシックカメラ専科 No.21 pp93-94 (1992年)
竹崎春年, 「ボルタ判カメラのすべて(カタログ)」, クラシックカメラ専科 No.21 pp95-105 (1992年)

注) スペックは不明のものが多い。表中のレンズ焦点距離、 F値、 Instant のシャッター速度、S/W の絞り値はいずれも推測。


Ikkosha Start 35 KII / 一光社 スタート 35
              KII

東京・佃堀。真ん中だけフォーカスが合っている。
なんだかミニチュア写真のようだ。
47mm F4.7 / 400TMax
Ikkosha Start 35
              KII / 一光社 スタート 35 KII
東京・ 隅田川を 上る運搬船。
47mm F4.7 / 400TMax


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