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休八写真館工作室

円周魚眼中判カメラの作製



Gyogan
                Bronica
Gyogan Bronica
Gyogan Bronica
魚眼には円周魚眼と対角魚眼がある。

35mm カメラ用の円周魚眼レンズは 35mm フィルムに内接する円を描き(図A)、対角魚眼レンズなら 35mm フィルムに外接する円を描く(図B)。つまり、35mm カメラの対角魚眼レンズは実は大きな円周像を持っているので、これを中判フィルムに 投影すれば、円周像が全て現れて丸い撮像になる(図C)。この円周は少なくとも 直径43mm になるので、結構な大きさだ。そこで、中判ボディに、35mmフィルムカメラの対角魚眼レンズを組み合わせたカメラを自作することにした。

1年ほどかけて、どういう組み合わせにするか考 え、必要な部品を集めた。心がけたのは、できるだけコンパクトにすること、使いやすくすること、コストを抑えること。選んだのは、レンズにロシア のM42 マウントのゼニター・フィッシュアイ、レンズシャッターにコパル1番、ボディに小型でフィルムバックの種類が豊富なブロニカSQ。

以下は製作の覚え書き。操作や作例はこちら

A.レンズ: KMZ MC Zenitar Fish-Eye 16mm F2.8 

KMZ製のゼニターは、新品でも安い。しかも、35mmカメラの魚眼レンズとしては、トップクラスの明るさ。マウントは、M42 なので 単純だし、フランジバックが45.5mm と長めで、レンズシャッターを組み込むのに好都合だ。フードはネジ止めになっていて、簡単にはずすことができるのもいい。

このレンズは自動絞り専用なので、絞り連動ピンがフランジ面についており、このピンが押し込まれた時だけ、絞り羽根が動くようになっている。 そこ で、アダ プタの内径部にピンがあたるようにして、アダプタ装着時には、ピンが押し込まれているようにした。

B.アダプタ: 注文製作

ゼニターの取り付け部はM42マウントなので、直径 42mm、ピッチ 1mm、ネジ幅 6mmのヘリコイド。レンズシャッター1番のレンズ側ネジ(前玉ネジ)は、直径 40mm、ピッチ 0.75mm、ネジ幅 6mm のヘリコイド。径が違うので両者を直結できない。接着するという手もあったけれど、それをすると 各パーツの脱着が できなくなるし、強度に不安を感じた。

そこで、アダプタを作ることにして、簡単な図面を書いた。製作は野方電 気工業に依頼。材質はアルミ。黒アルマイト塗 装、脱 着のためにローレット加工(外周にギザギザを入れる加工)などもしてくれた。

C.レンズシャッター: COPAL No. 1

大判カメラ用のレンズシャッター。3番を使った方が無難な気もしたが、できるだけ薄く小さくしたかったことと、1番でも光路幅は十分に思えた こ と、シャッ タースピードが1/500 まであること、などの理由でこれを選んだ。幸いにも、程度のいい中古 を安く入手できた。

絞りは 5.6 からだが、実際の絞りはレンズ側で行うので、開放のままで使う。撮影中にレンズシャッター絞りが閉じてくると、絞り羽根が撮像にかぶってくるので 注意が必 要だ。絞りが開放位置で止まったままになるよう、使用時にはゴムで作ったパッキンを取り付けている。

D.レンズボード: 注文製作

1mm厚のアルミ板を 93 x 88 mm に切り、真ん中に1番シャッターの入る直径(φ35mm)の穴を空けないといけない。また、この穴の中心はフィルムの真ん中に来るようにする。ボ ディに固 定するためのネジ穴も4ヶ所必要だ。

簡単な図面を書いて、きりい た.com で製作してもらった。裏には内部反射防止の黒い塩ビ板を貼った。

E.ボディ: ZenzaBronica SQ

M42レンズのフランジバックは45.5mm なので、ボディを切断しないといけない。でも、ブロニカは本当にいいカメラで、最初購入したジャンクはジャンクといいながら修理すれば使えそうな カメラ。 切断するのが忍びなくなって、製作延期。8ヶ月ほど経って、入手できたボディは外観はきれ いなのに、ミラーを支えるフレームが壊れていて、シャッターが動かなかった。これを使うならば、生き返らせるのに近い。そこでやっと製作が始まっ た。

第1段階は分解と切断。グッタペルカを剥がしてネジ、クランク、ボタン類、側板、底板などをはずす。さらに内部の器械、基板、配 線、ミラーなどを除去。ほとんど除去したあとに必要なパーツのみを戻してから、前半分を金鋸で切り落とし、あとはひたすらヤスリで削った。 断面を均一にし、 フランジバックがぴったり合うように研磨しないといけない。きれいな平面を出すのに案外時間がかかった。

第2段階は改造。ボディの天板部はピントグラスがあったため何もない。そこで、朴の板を使って天板部を作った。そして、アクセサリーシューと 水準 器をとり つけた。右側板にはフィルムの自動巻止め解除用の小さなレバーを作成して取り付けた。底部には三脚取り付けのためのねじ穴 (W1/4の六 角ナット)を取り付けた。内部は、レンズボード装着用のナットの取り付けと補強。

第3段階は組立と調整。実際に組み立てて、各部の寸法を測り、平面をとりなおしたり、研磨し直したり、パッドの厚みを変えたりした。実際に試 写す るとレン ズボードの取り付け部からわずかな光線漏れがあったので、パーマセルテープで補修。フランジバックの再調整やがたつきの出た部分の補強も行った。 最後に グッタペルカを貼り 直し、レンズボードを堅締めした。

F.フィルムバック: ZenzaBronica 6x6 Film Back

最初は、構造が簡単なスプリングカメラのボディ部分を使うことも考えたが、ボディの背面近くにフィルム面があるため、レンズを沈胴にしない とフランジバックを確保できない。フィルム面の位置、120フィルムを使用すること、マガジン部だけで巻き上げがで き、フィルムカウンターがあること、本体との接続形式が単純なもの、できるだけコンパクトなもの、安く入手できるもの、といった条件でブロニ カSQになった。フィルムの巻き上げは右側のノブを使用。

ブロニカSQのフィルムバックは多彩で、6x6、6x4.5、35mm、35mmパノラマなどがある。このうち、6x4.5 が使えたら・・・と試したが、円周は意外と大きくはみ出てしまうことがわかり、6x6を使うことにした。

G.ファインダー: 自作 

最初は Lomo FishEye2 のファインダーを流用するつもりだったが、実際に付けてみると使えないことがわかった。フィルムバックが後ろにでっぱっているため、ファインダー まで目が 届かない。それに高さが無いとボディやレンズが写り込みすぎて視野がとれない。そのうえ、このファインダーは160度程度の視角しかないことがわ かった。 そこで、ドアスコープにステーを付けて、使うことにした。他の自作魚眼カメラでもよく使われている材料だ。実際にいろいろと見比べて、視野が明る く視角 180 度のものを選ぶ。

ステーは 3mm パンチングの 0.5mm厚アルミ板と3mm厚ゴム板を組み合わせた。ステーは直立しているものが普通だが、少し後ろに傾斜させて、ファインダー位置がフィルム バックの 真上あたりに来るようにした。これで、覗きやすくなったし、ボディなどの写り込みも減った。180度の視角のため、ボディも視野に入ってしまう が、水準器 が視野に入るので、便利でもある。


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