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休八写真館工作室

コンデジのCマウント化  (ヤシカ EZ F928)



ビジコン管

図0.ビジコン管


改造前のノーマル F928
図1.改造前の F928

レンズユニット見える

図2.ノーマル状態で撮った写真。

レンズユニット見える

図3.真ん中の黒い筒がレンズユニット。

レンズユニットはずす

図4.レンズユニットを取り外す。センサーがある。

フロント部の改造

図5.Cマウントを取り付けるために穴を大きくする。

赤外写真になっていた

図6.色がおかしい。赤外線カットが必要だった。

完成
図7.改造終了。


完成

図8.Cレンズを装着したところ。
Cマウントレンズは、もともとシネカメラ用である。

16mmや8mmフィルムに投影できればよいので、レンズ径を小さくでき、マウントも小さい。それゆえ大口径や高倍ズームでも、比較的安価に 作る ことがで きる。

また、単純なスクリューマウントであり、規格がオープンになっている。それゆえ、多くのメーカーが製造していて、現在では、TVカメラ、工業 カメ ラ、 監視カメラなどで広く使われるユニヴァーサル・マウントになっている。像を結ぶ先がフィルムから、ビジコン管(図0)になり、さらに CCD や CMOS となっても、撮像のサイズがほぼ同寸であるため、80年以上も前のマウントがいまだに現役なのである。

フィルム時代のCマウントレンズには、アンジェニューやシュナイダーなどが名玉を作っていて、オールドレンズファンには人気である。このた め、 APS-C やマイクロフォーサーズのカメラ用にCマウントレンズを付けられるアダプタが市販されているが、実はこれらで撮影すると真ん中に小さく像が写るだけで、肩 すかしをくらう。APS-C やマイクロフォーサーズの撮像サイズは、Cマウントレンズには大きすぎるのである。

では、手頃な大きさの撮像素子は? と探してみると、コンパクトデジタルカメラ(以下、コンデジ)の大半がほぼ適正サイズであった。それで、 コ ンデジのCマウント化 を考えるようになった。残念ながら、Cマウント・コンデジがなかったからである。

追記1: ケンコーが試作機を作ったが(2011 春)、販売にはこぎ着けていない。また、Pentax Q も発売されていなかった(2011 秋)。Q マウントの口径とフランジバックならばCマウントレンズとぴったりだと思っていたら、やはり、QマウントをCマウントに変換アダプタがサードメーカーに よって発売 された。Pentax Q の記事はこちら

追記2: ビジコン管のサイズは、直径のインチによって表される。すなわち、1型は直径1 インチ、2/3型は直径2/3インチのビジコン管に対応する。そのため、Cマウントレンズも1型対応、2/3型対応、1/2型対応な どと表現される。同じマウントでありながら、撮像サイズにあわせて、レンズ径などを作り替えており、イメージサークルの直径が異なるの だ。

追記3: ちなみに、テレビの19型、23型などというのは、対角線のインチ数を示しており、ビジコン管と共通の表記法である。イン チといわずに、型と表現するのは、メートル法によりインチ表示を認められないことが理由だという。

以下は製作の覚え書き。操作や作例はこちら


A.カメラの選択

ありがたいことに、先達が居た(こ ち らこちら)。そこ で、 これらのサイトも参考にしつつ、母体となるデジタルカメラを探した。次のような条件のカメラである。

1) 1/2型や1/3型のCMOSを持つ。

2) 単焦点であること。レンズ前のバリアが無いこと。

3) 加工しやすい形状のボディ。特にレンズ周囲がフラットであること。

4) 分解しやすい構造であること。ネジなどの位置を画像で確認。

5) フランジバックが 17.5mm とれること。

6) 安いこと。

最初は古い機種も視野にいれていたが、SDカードが使えないものや300万画素程度のものが主になってしまうのであきらめた。アジア製の現行 機種 で条件に 合うものを探した。エクゼモードの出している YASHICA EZ F928 を使うことにした(図1)。

なんと Amazon で \2,980。SDHC対応で、900万画素、デジタルズームも使える。しかも単3電池2本で動く。ノーマルの F928 でとりあえず試写(図2)。

少し光量が足りないと、ぐにゃり写真が撮れる。撮像素子の読み込み速度が遅いために歪みが起こるのだ。しかも、シャッタース ピードや絞りが段階的に調節されているようだが、その段数も少ないために、露出がちょっとあやしい時がある。

でも、乗りかかった船だ。改造開始。


B.レンズの取り外しとボディの加工

1) 6カ所のネジをはずす。簡単にボディを開くことができた(図3)。真ん中にレンズユニットがある。小さいレンズだ。ヤシカブランドで出 すカ メラとしては非常に物足りない。

2) レンズをはずす(図4)。センサー(CMOS)が見える。汚れやゴミに注意。

3) フラン ジバックを確保するためにセンサーの位置(配置されている深さ)を調べる。センサー部は結構深くにある。CSマウントにすることも考えていたが、 この時点 でCマウントのみ対応のカメラにすることを決定。

4) フロントカバーのレンズ周辺を飾っていたアルミ部分を剥がす。レンズの覗いていた穴が小さく開いているのだが、これをテーパーリーマー で大 きくしていく(図5)。

5) 大きくなった穴に、C/CSマウント・アダプタをはめる。

追記: C/CSマウント・アダプタは、CS マウントのカメラにCレンズを取り付けるためのアダプタで、両者のフランジバック差を埋めるだけの単純なリングである。比較的入手は簡単で、私は秋葉原の ユニエル電子で購入。



C.マウントアダプタの加工

6) 仮組してレンズの焦点が合うかどうか調べる。何度か試して、アダプタの位置を決めた。

7) アダプタ自身の形状(厚み)を削る必要が出てきたので、ヤスリで加工することにした。アダプタの雄ねじ部分の大半 を削り落として基板やレンズへの干渉がないようにした。また、ベゼル部分は四方に平面部を作り、回転しにくい形状にした。

8) ボディにリーマーで開けた穴をさらに加工して、このアダプタがきっ ちりと入るようにする。

9) ツラ位置でアダプタがボディに入るようにしたら、少しフランジバックが足りない。そこで、エクステンションリングを一枚いれることにし て、 これをマ ウント部に接着することにする。


D.組み立て

10) アダプタとリングを接着し、これをボディに接着。加工でできたすきまはパテで埋める。

11) パテが見えている部分はエナメル塗料で黒く塗る。

12) Cマウントレンズの装着を試す。うまくできる。室内で試写をするかぎり、うまく写る。完成かと思われたが・・・

13) 外で試写。植物などの葉っぱが赤茶けて写っている。色再現がおかしい(図6)。


E.赤外線カットフィルターの再装着

14) はずしたレンズユニットの最後方にフィルターがついていることに気づいた。これを丁寧に剥がして、センサー部の上にとりつけた。木工用ボンドをごく少量使 い、センサー部の外枠部に接着する。

15) 組み立て直して(図7)、再試写。うまく写った。フィルターは赤外線カットフィルターだった。操作や作例はこちら

追記: CMOS はもともと可視光だけでなく、赤外光にも反応する。このため、普通のカメラでは、赤外線カットフィルターがセンサーの前に入れてある。逆に、このカット フィルターをはずせば赤外光カメラになる。


F.改造を終えて

センサー部にゴミが付着すると、除去はなかなか難しい。噴射、吸引、アルコール洗浄などを試したが、どうしても、除去できないゴミがあった。 ゴミ 付着を防ぐのが第一である。

また、F928は、センサーの記録速度が遅いために、ぐにゃり写真が撮れやすいカメラだった。グリップ部の形状がよく出来ていてフォールドし やす く、Cレンズを付けた時のバランスもよくて気に入っていただけに・・・・実に残念であった。

続けて、F531 を改造してやっとぐにゃり写真から解放されたが、やっぱり、残念である。


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