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2009/01/22 |
■1. 概要
「展覧会の
絵」はムソルグスキーが 1874年に作曲したピアノ譜が原曲です。この自筆の譜面を自 筆譜(後 に複写譜が出たので、ファクシミリ版とも呼びます)といいま
す。また、譜面として出版されたのは1886年(ムソルグスキー没後5年)のリ ムスキー=コルサコフ校訂版が最初でした。また、自筆譜に忠実なラム校訂版(原典版とも呼ばれる)の出版が1931
年です。そして、これ以外のアレンジを加え
たものもあるので、全部で 4種となります。
ただ し、演奏レベルでは、自筆譜と原典版の違いは僅少なのでひとつに見なすことができ、
の3種類の演奏に分ける方が現実的だと思います。
ところで、演奏家の使用譜や意図がCDのライナーなどに明記してあることは稀です。また、実際の演奏では折衷も珍しくなく、自筆譜にあ
る異稿部分を
弾く場合もありますし、同じパッセージでも演奏者の解釈の違いによって、大きな差がでる場合もあります。こうした現象の要因としては、ム
ソルグスキーの譜
面にあまり細かな演奏指示がないことも大きいように思います。R=コルサコフ版ピアノ譜やラヴェル版オケ譜など見ると音の強弱や速さなど
が細かく指示して あり、こうした違いが明白です。
■2.自筆 譜 (1874年)
1874年7月4日にムソルグス
キーは「展覧会の絵」をスターソフに献呈しており、現在はレニングラード国立公共M.J.サルティコフ・シェッシュドリン図書館に保存さ
れています(手稿
本部門、M.P.ムソルグスキー基礎資料502番、文書番号129)。この複写譜が、エミリア=フリードの校訂(解説を付けたにすぎな
い)で1975年に モ
スクワのムジカ社から「ファクシミリ版」として出版され、広く世に知られるようになりました。このため、自筆譜とかファクシミリ版と呼ば
れています。
なお、自筆譜の譜面には、何カ所かに修正や「またはこのように弾いて良い」といったコメントとともに異稿が書かれてい ましたが、ラム校訂版(原典版の項を参照)にこれらは詳しく紹介されています。異稿譜部分は上から紙が貼ってあったりするのですが、ファ クシミリ版ではこ うした貼り紙の下になっている部分の紹介はないので、ちょっと残念に思います。
この自筆譜/ファクシミリ版を使った演奏としては小川典子さんのものが有名です。
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小川典子の
自筆譜版
|
ワー
レンベル グの R=コルサコフ版 |
リ
ヒテルの 原典版 |
た
だ、実際にリムスキー=コルサコフ版の譜面を見ていくと、(ラヴェル版などと比べ)むしろ自筆譜に忠実であり、違うのは強弱や速さの指示がか
なり細かく書 いて
ある点だと思います。リムスキー=コルサコフは、ムソルグスキーと親しい間柄でしたから、彼自身による演奏も聴いており、その時の演奏速度や
強弱などをメ モに遺しています。こうしたことから、ムソルグス
キーの意図も十分 に
知りつつ行った演奏指示だと思います。ただ、これによってリムスキー=コルサコフ色が強くなったことは否めません。また、ラヴェル版はこ
のリムスキー=コ ルサコフ版を基に作られたことが知られています。![]() |
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| ブ
レンデルの R=コルサコフ版 (1955年) |
ブ
レンデルの 原典版 (1985年) |
ホ
ロヴィッツ の オリジナルアレンジ |
江
口玲の ホロヴィッツ版 |
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