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休八写真館資料室

M42 レンズとは



■1.M42 レンズ

M42 lens1949年、KW の Praktica 用に作られたレンズマウントがM42である。直径 42mm、ピッチ 1mm、フランジバック 45.46mm という規格であった。KW は一眼レフに注力していたメーカーで、先行機 Praktiflex の規格 (直径 40mm、あとは同じ)を改善したものである。

当時は、Leica や Contax などのレンジファインダー機が全盛であったが、こうしたレンジファインダー機のレンズマウントはフランジバックが短すぎて(例えば L39 ならば 28.8mm)、一眼レフにとって大事な部品であるミラーが収まらない。だから、M42 のフランジバックは 45.46mm と深いのである。

この規格を日本の旭光学も採用した(1957年頃から)。Pentax シリーズで次々と機能を加え、一眼レフを今のかたちにしたのである。


■2.旭光学と一眼レフ

一眼レフは、もともと大判や中判の時代からあった形式であるが、さまざまな課題があった。35mm 判にしたのは KW であるが、旭光学が次のような技術革新をして課題を解決した。
  1. ミラーにペンタプリズムを組み合わせて、ファインダーに正像が映るようにした。
  2. シャッターを押した瞬間にミラーが跳ね上がったままになるのを瞬時に戻すようにした(=クイックリターン機能)。
  3. レンズを通っ てきた光を測光するようにした(=TTL測光)。
  4. カメラだけでなく、タクマーという優れたレンズ群も作った。
特に1と2は初期の一眼レフ発展に大きく貢献し、一眼レフがレンジファインダーを性能でしのぐようになった。 また、自動露出 (AE)を実用化したのはオリンパス、自動焦点 (AF) を実用化したのはコニカやミノルタである*1。 2000年ごろから、フィルムカメラがデジタルカメラとなり、センサーの高解像度化と高感度化、高度なレンズ設計、手ぶれ補正、防塵防滴、顔認識、追尾 AFなどの技術革新が積み重ねられて、今に至っている。

だが、新たに生まれたミラーレスカメラ(パナソニック Lumix やオリンパス Pen など)によって一眼レフの座もあやうくなりつつある。カメラ事業そのものも、徐々に縮小傾向にあり、旭光学(Pentax)は 2006年に Hoya の子会社となり、2011年には Ricoh に統合された。幸いにも、Pentax ブランドは継続され、意欲的な製品作りが続いている。

*1 AE対応などのためには、レンズとカメラの間での信号ピンや電子接点が必要である。そこで、旭光学でもバヨネット式の Kマウントに移行した(1975年)。このKマウントは、デジタル化の後も継続されている。


■3.ペン タックスの35mm判レンズマウントの変遷(参考)


カメラシリーズ
マウント名
対応レンズシリーズ
備考








Asahiflex
M37

Takumar スクリューマウント。
Pentax (初代)
M42

Takumar
ボディと連動しない。単純なスク リューマウント。
Pentax K

Auto Takumar
半自動絞り機能を実装。
Pentax S3

Super Takumar
完全自動絞り。
Pentax ES

smc Takumar 開放測光、絞り優先オート露出機 能。
K シリーズ
K

smc Pentax
バヨネット式のφ45mmマウント。
M シリーズ

smc Pentax M
小型軽量設計。
A シリーズ
KA
smc Pentax A
電子接点が6つできる。AE機能が充実。
SF シリーズ
KAf
smc Pentax F
オートフォーカス機に対応。
Z, MZ シリーズ
KAf2
smc Pentax FA
HD Pentax FA
オートフォーカスをさらに最適化。




istD, K シリーズ
KAF3
smc Pentax DA
HD Pentax DA
デジタル機に対応。
K シリーズ
KAF4
smc Pentax DFA
HD Pentax DFA
フルサイズ機に対応。電磁絞り


■4.さまざまなM42レンズ

レンジファインダーであれば L39、一眼レフであれば M42 がユニヴァーサル・マウントになった。

M42 マウントカメラとしては、KW の Prakitica と旭光学の Pentax で二分していたが、レンズについては、ロシアなども加わって、さまざまなレンズが市場にあふれた。ヤシカ、富岡光学、Zeiss、Meyer などである。

KW Praktica / プラクチカ - Primoplan
              58mm F1.9

門前仲町のすずしろ庵の店先。みずみずしい大根に惹かれる。
KW Praktica + Primoplan 58mm F1.9 / RDPIII
KW Praktica / プラクチカ - Primoplan
              58mm F1.9

カワヅザクラ。隅田川テラスの春。このレンズもいい。
KW Prakitica + Primagon 35mm F4.5 / RDPIII
Asahi Pentax SP / 旭光学 ペンタックスSP
              & Induster 61L/Z 50mm F2.8

隅田川の西岸から相生橋方向を見る。
Pentax SP + Induster 61L/Z 50mm F2.8
/ RDPIII
Pentax MZ-30 / ペンタックス MZ-30

ロバート・インディアナ作の「LOVE」。新宿で。
Pentax MZ-30 + Fish-Eye Takumar 18mm F8 / RDPIII




■5.Tマウント(参考)

T-lensT は泰成光学(現在のタムロン)にちなむ。直径42mm ピッチ0.75mm フランジバック 55mm のスクリューマウントである。

レンズマウントとしては、それほど普及しなかったが、Tマウントは、フランジバックが長いため、Tマウント用に光学設計しておけば、ほとんどのカ メラに流用できるという利点がある。このため、天体望遠鏡や顕微鏡などで普及し、今でも使われている。

例えば、望遠鏡の鏡筒後端を T マウント(オス)にして、ここにアダプタをはさんでカメラやアイピース(=接眼レンズ)を付けるのである。このアダプタを T マウントアダプタまたは T リングという*2。アダプタの厚みは10mm程度のものが多く、これをはさんでもフランジ バックはまだ 45mm もあって、大概のレンズ マウントがフランジバック 42-45mm であるから、対応できるのである。

なお、直径 42mm の鏡筒を M42鏡筒というので、Tマウントのことを M42 マウントと表記していることがあるが、ピッチが異なるため、カメラマウントの M42 ではない。混乱しやすいので注意。

*2 このアダプタは、前方がTマウント(メス)、後方が各社のマウントになっている。ケンコー・トキナー、ビク セン、ボーグなど天体望遠鏡を作っている会社や カメラレンズのメーカーから各種出ている。


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