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休八写真館資料室

ロシアカメラの系譜



■1.ロシアのカメラ事情

世界のレンジファインダーの流れは大きくふたつあります。Leica (ライカ) を手本とするものと、Zeiss Contax (ツァイス・コンタックス) を手本にするものです。日本ならば、Canon がLeica、Nikon が Contax を手本に作られていることはよく知られていますし、ロシアならば、FED (フェド) と Zorki (ゾルキー) が Leica、Kiev (キエフ) が Contax を手本にしています。 また、第3のカメラとしてはスポールトを源流とする、Zenit があります。

光学(レンズ)技術は、もともとは戦車や戦艦の測距や弾道計算のために発達したため、当時のロシア(ソ連)は世界最高峰のレンズ技術を持っていま した。世界中の光学研究者やカメラ技術者たちは、こぞってロシア語を勉強して、ロシアの光学技術論文を読んでいたといいますし、ガガーリンの有人 宇宙飛行が成功したのも、打ち上げたロケットを望遠鏡でずっと追い続けられる優れた光学技術があったからだともいわれています。

したがって、カメラレンズでも非常に優れた設計や製造を誇っていましたが、その分、ボディの発達を促す素地が少なかったと見え、いつまでもまるま るコピー機というデザインが続きましたし、デザインはできるだけシンプルにしようとする傾向があり、作りが粗造という悪い面もあって、なかなかよ いカメラが出てきませんでした。そうした中で、Zorki と Zenit は独自性を早くから模索していたカメラであり、注目に値するカメラであったと思うのです。


■2.Zorki のカメラ

FED は Leica II の模倣というか複製機として生まれました。その後、初期型 FED から分かれたのが Zorki であり、ファインダーや距離計などの改良を繰り返し、独自の進化を遂げました。

Zorki は1951-56年に小刻みにモデルチェンジをして(1c, 1d, 3, 3C, C, 2C)、決定版ともいうべき、Zorki 4 に到達しました。Zorki 4 は、ファインダー部などの変化、ロゴの変化、記念モデルなどで多くのバリエーションがありましたが、長く製造・販売されたベストセラー機といってよいと思 います(1956 年〜1973年)。このあと、トリガー式の巻き上げに切り替えた Zorki 5 や 6 が出ますが、故障が多く、結局、Zorki 4 の製造が長く続くことになりました。ただし、Zorki 4 のクオリティは年とともに低下したというのが定評で、初期のものほど作りがよく、故障も少ないようです。


■3.Zenit のカメラ

Zenit は、FED や Zorki とは違い、スポールトという全く独自に開発された一眼レフを源流として作られた一眼レフのシリーズです。デッドコピーやフェイクの多いロシアカメラの中で は、唯一といってよいオリジナルシリーズ。そのデザインはひどく不細工なものが多く、また、性能もさほどではないのが残念ですが、ごく初期の Zenit C から 3M までは見るべきものがあります。

M39マウントは独自の規格でしたが、1971年にM42 マウントに変更。M42 になってからの最高傑作が Zenit 122 で、もっとも長く大量に作られ、いわばロシアの国民機だったと言ってよいでしょう。 ただし、機械としては、ZenitTTL のあたりでほぼ進化がとまってしまいました。


■4.主なカメラの流れ


<ライカ型>












1932 Leica II
 
    <独自路線・一眼レフ>
   ↓        

1935
FED 1b
   
1936
Sport 世界最初の35mm判一眼レフ
1940
FED siveria
       ↓
1949
FED 1f  →→→ 1951
Zorki 1c/3  →→→ 
1953
Zenit
独自のM39マウント
   ↓
1955
Zorki 2C/3C
1955
Zenit C

   ↓ 1956
Zorki 4
   ↓
1958
FED 2
1959
  ↓   Zorki 5/6 1959
Zenit 3

1961
FED 3

 ↓
 ↓

 ↓
 ↓ 1962
Zenit 3M

1964
FED 4
   ↓ 1965
Zenit E
外部測光式の露出計組み込み。

 ↓
 ↓ 1969
 ↓ Zenit 7
専用スピゴットマウント。

 ↓ 1972
Zorki 4K
1971
MeproZenitE
マウント変更。M42マウントになる。
1977
FED 5


1977
ZenitTTL
TTL測光式の露出計組み込み。




1983
Zenit12
ZenitTTL の改良型




1990
Zenit122
Zenit12 の後継機。




1990
Zenit122K
マウント変更。Kマウントになる。




1995
Zenit212K
外装が丸っこくなる。




2000
Zenit412
M42マウント。さらに丸くなる




2002
Zenit Km
Kマウント。自動巻き上げ。


■参考

島 和也, 「私のロシア・旧ソ連製カメラのコレクション」, クラシックカメラ専科 No.40 pp42-81 (1996年)

菊池芳文, 「私のソ連/ロシアカメラとレンズ」, 写真工業 2003年7月号 pp40-41

「ハラショー ロシア&旧ソビエトカメラの世界」 日本カメラ社 2003

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