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2015/10/30 |
シャリャーピンが演じるボリス・ゴドゥノフ (ポスター 1912) |
第1稿はわずかに5ヶ月ほどで仕上げられましたが、民衆の蜂起を主題としている
こと、女声が少ないということもあって棄却されました。スターソフらの説得もあって、ムソルグスキーは2稿を仕上げ、これが1873年に
マリインスキー劇場(現キーロフ劇場、於ペテルスブルク)で一部が上演さ
れました。さらにスターソフらの懸命な支援活動が功を奏して、1874年2月にやっと全編の上演となりました。従って、この日がボリス・ゴドゥノフの
初演日とされています。また、ロシア映画「夜明け」は、このボリス・ゴドゥノフ
上演までの苦労、成功、喜びを描いたものです。
ただ、ロシア国外でも知られるようになったのは、リムスキー=コルサコフ版を用いたデアギレフによるパリ公演(1908年)の成功によ
ります。現在の主流はふたつあり、マ リインスキー劇場が使っているショスタコーヴィチ版と、
ボリショイ劇場が 使っているリムスキー=コルサコフ1906年版とイヴァーノフ編曲のボ
リショ イ版です。
ムソルグスキーの第1稿と第2稿の大きな違いは、最後の終わり方です。第1稿はボリスが死ぬところで幕となります。このストーリーを
ベースにしたのが、ボリショイ版であり、希代のオペラ歌手、シャリャーピンの演じるボリスが人気を博して定番となりました。
一方、第2稿はボリスの死を前に持ってきて、聖愚者の歌を最後に持ってきています。聖愚者とは、ロシア正教独特の僧位ですが、その
聖愚者にロシアの行く末の暗雲を歌わせて幕としているのです。これは、ボリスよりもむしろ愚かな民衆が主人公のような終わり方であり、こ
ちらの方がムソルグスキーの意図に近いと考える専門家が近年増えてきました。ラム校訂のピアノ譜をショスタコーヴィチが管弦楽に編曲した
もので、現在、標準原典版とも呼ばれる主流の版で す。
■3.年表
1866年 |
プーシキンの戯
曲「ボリス・ゴドゥノフ」(25年作、30年発行)が発禁を解かれ、ロシア演 劇界に広まる。 |
1869年 |
12月15日、原典版初稿(1869年 版)。プーシキンの23場のうち、10場を選んでの作 曲。[終 わり方はボリスの死] |
1870年 | マリイ
ンスキー劇場が初稿を却 下。 9月15日、プーシキンのボリス、マリインスキー劇場で初演。 |
1872年 |
7月23日、原 典版二稿(1872 年版)。[終わり方は民衆蜂起] |
1873年 | 2月17日、マ リンスキー劇場(ペテルスブルク)で、二稿 の一 部が上演された。[終わり方は民衆蜂起] |
1874年 | 1月15日、ピアノ版が刊行される。1872年版とは第2幕が異なる。 2月27日、二 稿改訂版が、マリインスキー劇場でついに初 演。 大変な成功であり、ムソルグスキーは20回ものカーテンコールを受ける。上演はその後、マリインスキーで断続的 に行われた。 |
1881年 | 3月28日、ムソルグス キー死去 |
1888年 |
12 月18日、ボリショイ劇場 でも上演される(モスクワ初演)。 |
1896年 | リムスキー・コルサコフ版が 完成。11月15日、マ リンスキー劇場(ペテルスブルク)にて上演。[終わり方はボリスの死] |
1898年 |
12月 7日、RK版の第1稿改訂版がモスクワ初演。ボリス役のシャリャーピンがデビュー。 |
1908年 | 5 月19日、リ ムスキー・コルサ コフ版 (1906年改訂版)が、デア ギレフ率い るオ ペラ座(パリ)によって上 演される。ボ リス役のシャリャーピンの好演で人気を博す。[終わり方はボリスの死] |
1926年 |
聖ワシリー寺院の場がリーゼマンの著書で公開される。 |
1927 年 | 1月30日、RK版に聖ワシリー寺院の場を加えたイッ ポリ ト・イヴァーノフ版がボリショイ劇場で上演される。イヴァーノフはリムスキー・コルサコフの弟子。この後、ボ リショイ劇場版として定着する。[終わり方はボリスの死] |
1928年 |
ラ ムが ムソルグスキーの残した全ての関連譜を校訂し、全4巻で刊行する。2月16日、1稿を基盤に2稿のポーランドの幕と革命 の場を加えた構成として、レニングラード(=ペテルブルグ)で上演される。[終わり方は民衆蜂起] |
1940年 |
ボ リ ショイ劇場からの依頼で、ショスタコービ チがラムのピアノ譜をもとにオーケストラ曲に編曲。ただし、世界大戦のため上演が長いことされなかった。[終わり方は民衆蜂起] |
1954年 |
ボリショイ版をベースに作られた映画版が公開される。 |
1959年 | 11月4日、ショ スタコーヴィチ版(1940年)がレニング ラード のキーロフ劇場(マリインスキー劇場)にて上演される。以降の標準原典 版として定着。[終わり方は民衆蜂起] |
1975年 |
ロイド・ジョーンズ編纂により、ボリスのスコ アすべて とその異稿がオックスフォード大学出版局から刊行される。 |
1983年 |
映画監督のタルコフスキーが舞台演出をつと め、以降の キーロフ劇場での演出のスタンダードと なった。ロイド・ジョーンズ版とも呼ばれる。[終わり方は民衆蜂起] |
場 | 1稿 |
2稿 |
ラム改訂 ショスタコ編 (キーロフ版) |
リムスキー= コルサコフ編 |
イワーノフ改訂 (ボリショイ版) |
主な楽曲 (2稿・標準原典版での配置) | |
1 |
ノヴォデヴィチ修道院の中庭 |
第1部 |
序章 |
序章 | 序章 | 序章 |
前奏 「私たちを誰のもとへお捨てになるのです」(民衆の合唱) 「正教徒たちよ。公は聞き入れて下さらない」(シチェルカーロフのアリア) |
2 |
クレムリン・大聖堂での戴冠式 (このあと5年が経過して3場へ) |
前奏 「空には既に輝く太陽が」(民衆の合唱) 「わが魂は悲しむ」(ボリス独唱) 「ボリス皇帝に祝福あれ」(シェイスキー公爵、合唱) |
|||||
3 |
クレムリン・チュードフ修道院の僧坊 |
第2部 |
第1幕 |
第1幕 | 第1幕 | 第1幕 |
「あと一つ物語を書き終えて」(ピーメン独唱) 「いつも同じ夢だ」(グレゴリー) |
4 |
リトアニア国境の旅籠で |
「私は捕まえた鳩羽色の雄ガモを」(宿の女主人) 「昔カザンの町でイヴァン雷帝は」(ヴァルアラームのアリア) 「私は馬で走る、走る」(ヴァルアラーム、女主人、グレゴリー) 「なぜかって? 異端者が逃亡した」(警官、グレゴリー、ヴァルアラーム) |
|||||
5 |
クレムリン・皇帝の居間 |
第3部 |
第2幕 |
第2幕 | 第2幕 | 第2幕 |
「あなたはどこに、私の婚約者よ」(クセーニャ) 「私は最高の権力を得た」(ボリス独唱) 「陛下、お目どおりを」(ボリス、シュースキィ) 「苦しい息をつかせてくれ」(ボリス) |
6 |
ポーランド・サンドミェシュ城内のマリーナの部屋 |
なし |
第3幕 | 第3幕 | 第3幕 | なし | 「なんて悩ましく物憂く」(マリーナのアリア) |
7 |
同城内・噴水のある庭園 |
なし |
第3幕
|
「おお皇子様、お願い」 (偽ドミートリィとマ
リーナの二重唱) |
|||
8 |
モスクワ・聖ワシリー寺院前 |
第4部 |
なし |
第4幕 |
なし |
「ドミートリィ」 (マリーナと偽ドミートリィ) 「ロシアのすみずみから首領たちが集まった」(偽ドミートリィ) 「流れよ、流れよ、苦い涙!」(聖愚者) <1稿のみ> |
|
9 |
モスクワ・クレムリン内の貴族会議とボリスの死 |
第4幕 |
第4幕 (10, 9 の順) |
第4幕 (10, 9 の順) |
「さて諸君、票決と行こう」(貴族たちの合唱) 「ある日の晩のこと」(ピーメンのアリア) 「さようなら、我が子よ。私は死にゆく。」(ボリス) 「聞け、とむらいの鐘が鳴る」(ボリス、合唱) |
||
10 |
クロームイ近郊の森の空き地での民衆蜂起 |
なし |
「何だお勤めは終わったか?」 (民衆) 「トルル鉄のかぶと」 (子供たち、聖愚者) 「連れてこい」 (民衆) 「太陽も月も光を消した」 (ヴァルアラーム、ミサイール) ----映画版ではここに9.ボリスの死が入る 「怒りたけり暴れまわり」 (民衆) 「主よ救いたまえ」 (イエズス会僧) 「われデドミートリィは正統な」 (偽ドミートリィ、民衆) 「流れよ、流れよ、苦い涙!」(聖愚者) <2稿〜> |
||||
標準時間(参考) |
2h |
3h5m |
3h15m |
ボリス・ゴドゥノフ (Bs) |
1549年または1552年頃の生まれの実在の人物。ボリース・ゴドゥノーフとも。父はヴャジマという地方領主。ボ
リスは15歳の頃より、雷帝イワ ン4世のオブ
リーチニク(近衛兵)となり、徐々に頭角を現す。やがて、自身はオブリーチニナ(近衛隊)の実力者の娘マリアと結婚し、妹イリーナが雷帝の息子、フョード
ルに嫁いだことなどもあって、雷帝の寵臣となっていく。舞台は、イヴァン4世の跡を継いだフョードルも世を去ったこと
から始まる。なお、雷帝の後継者であったドミートリィは不審な死に方をしており、ボリスが私欲のために暗殺したと当時う
わさされていた(現在の史実としては事故死であったと考えられている)。このオペラでもそうした前提になっていて、偽ド
ミートリィの出現で、精神的に混乱していく様子が描かれている。 |
フョー ドル (MS) |
ボリスの息
子。ロシアの将来を担うために勉強している。 [注: イヴァン4世の息子にもフョードルがいるが(後のフョードル1世)、無論、別人。ただ、後にボリスの皇位を継いで、 フョー ドル2世と称せられる。ロシア人には同じ名前がたくさんあって混乱する] |
ク セーニャ (S) |
ボ リスの娘(=ボリス帝の皇女)。婚約者 を失う不幸に見舞われる。 |
シェ イスキー公爵 (Tn) |
ボ リスの側近。もともとボリスの政敵で あった一族の生き残り。ボリスに忠誠を尽くしているようで、いろいろと情報操作をするようなところがあり、ボリスが 苦しむきっかけを作っていく。 |
シ チェルカーロフ (Ba) |
ボリスの書 記官。 |
イヴァン4世 |
雷帝とも呼ばれた偉大な皇帝。しかし、感情の起伏が激し
かったことでも知られており、長子のイ
ヴァンを自ら殺害してしまう。また、末子のドミートリィは不審な死に方をする。やむなく、精神遅滞のあったフョードル1世を後継
者とし、5人の寵臣を摂政として指名する。この5名の中のひとりがボリスであったが、 5名は激しい権力闘争を行う。[注:オペラには登場し
ないが、この人物を知らないとストーリーがわからない] |
フョードル1世 | イヴァン4世の皇子。精神遅 滞があったという。ボ リスの妹が嫁いだので義弟でもある。 しかし、若くして亡くなり、リーリフ朝が途絶えることになった。[注:オペラには登場しない。オペラはフョードル1世の死後の混乱から始ま る] |
ドミートリィ | 雷 帝イヴァン4世の子供のひとりで、フョードル1世の異母弟。フョードル1世には子供が居なかったことから、皇位継承者の 第一と されたが、奇妙な事故死を遂げる。世間ではボリスの指しがねにより死にいたったと噂されるが、史実としては事故死であったと考えられている。いずれにせ よ、この不審な死に方ゆえに、実はホンモノは生きているのではないか、と考えられ、後に僭称するものが数人あらわれる。 [注: オペラには登場しな いが、この人物を知らないとストーリーがわからない] |
マリーナ (So) | ポー ランド軍司令官の娘でロシア皇后を夢見る。偽ドミートリィの妻になろうとする。 当時のロシアの地を欲していた列強のうち、最大の勢力であったポーランドの思惑を代表するような人物。 |
ランゴーニ (Bs) |
カ トリックの僧でロシアのカトリック化を目論む。偽ドミートリィを改宗させようとす る。当時のロシアを宗教的に征服しようとでも考えていたような陰謀の人物。 |
偽ドミートリィ (グレゴリー) (Tn) |
ロシア正教の修道僧グレゴリーが、ピーメ ンの話を聞
いて、ドミートリィ皇子に成りきること(=僭称)を思いつく。なお、グレゴリーの愛称、グリーシュカも劇中に使われる
こともあるので、混乱に注意。修行僧(というか堕落した浮浪の僧)の仲間、ヴァルアラーム、ミサイールと共に修道院
を逃亡する。後にポーランドの後ろ盾を得て、ポーランドがロシアに侵攻する旗頭のような役割をになうことになる。ロ
シア正教の宗教者でありながら、ロシアを救うのではなく、危機にさらすことになる人物。 [注: ロシアには、僭称者が出てきた時、それを僭称と知りつつ、うまく利用するような独特の風土がある。ドミートリィは不審な死に方をしたこともあって、グレゴ リーの僭称以降も、数人の偽ドミートリィが現れ、民衆の支持を得て政治的混乱をもたらした。] |
ヴァ ルラーム (Bs) |
グ レゴリーと行動を共にする浮浪の僧。 |
ミ サイール (Tn) |
グ レゴリーと行動を共にする浮浪の僧。 |
ピー メン (Bs) |
ロシア正
教の老僧。年代記作者。ドミートリィ の死の真相を 語る。 [注: 当時は歴史を記録するこ とが政府によって禁じられていたので僧となって、隠棲しつつ記録を書いていたようである。なお、プーシキン の戯曲では、プーシキンという人物−プーシキンの先祖にあたる者−がやはり歴史の記録者として登場して役割 を演じるが、ムソルグスキーのオペラでは歴史を語る者をピーメンひとりに委ねている] |
聖愚者 (Tn) | ロシア正教の修行僧。本オペラでは、いく つかの重要
なアリアを歌うが、特に第2稿型の筋立てやタルコフスキー演出の舞台では最後のアリアを歌い、大きな役割をしている。 [注:: 解説書によっては、白痴としているが、ロシア独特の文化 ともいえ る僧位。みすぼらしい乞食のようななりをしており、時には裸同然であり、人前では狂人のよ うに振る舞い、貴族や王に対しても無礼講が許されているという。しかし、人の居ないところや、日が暮れると敬虔な祈りを ささげる聖者の顔に戻る。こうした 行為はキリストの「物を持たない、欲を持たない」という教えを究極まで突き詰めたものであるらしい。そして聖愚者にこ そ、ムソルグスキーが自分を重ねてい た節があり、当時のスターソフへの書簡などから窺い知れる。] |
標準原典版 |
ボリショイ版 | 映画版 |
|
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演
出・監督: |
Andrei Tarkovsky | Leonid Baratov | Vera Stroeva |
指揮: | Varely
Gergiev |
Alexander Lazarov | V. Nebol'sin |
演奏: | キーロフ歌
劇場管弦楽団 ・合唱団 |
ボ
リショイ 劇場管弦楽団 ・合唱団 |
ボリショイ劇場管弦楽団 ・合唱団 |
ボ リス(Bs) | ロバート・ ロイド | エフゲ ニー・ネステレンコ | ア レクサンドル・ピロゴーフ |
グ レゴリー(Tn) | アレクセ イ・ステブリアンコ | ウラディス ラフ・ピアフコ | G. ネーレプ |
シュ イスキー公(Tn) | エフゲ ニー・ボイツォゾフ | ウラジーミ ル・クドリャショフ | N. ハナーエフ |
マ リーナ(So) | オリガ・ボ ロディナ | タマーラ・ シニャフスカヤ | L. アヴデーエヴ |
上演 日・制作日 | Mariinsky Theatre
1990 |
Moscow 1987/1 | 1954 |
RK版 |
ラム校訂・ショスタコーヴィチ編 |
1869年版&1872年版 |
Issay
Dobrowen w/ O. Nat. Radio Francais |
Abbado w/ Berliner Ph. |
Valery Gergief
w/ Kirov Opera & O. |
Melodiya SUCD 10-00044 | Real Sound RS 051-0145 |
Grammofon BIS-CD-905
|
1952 | Italy 2001/6/16-18 |
Sweden 1997/8
|
注) 第4幕は1869年版&1872年版の2種が録音されている。 |
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Igor Khudolei | Nami Ejiri (江尻南美) | Valery Kuleshov |
Noriko Ogawa (小川典子)
|
Melodiya SUCD 10-00044 | Real Sound RS 051-0145 | Piano Classics
PCL0079 |
Grammofon BIS-CD-905
|
1988 | Italy 2001/6/16-18 | Moscow 2010/5/25 |
Sweden 1997/8
|
ボリス・ゴドゥノフ |
オペラのイコロジー1 ボリス・ゴドゥノフ |
名門オペラ・ブックス24 ムソルスキー ボリス・ゴドゥノフ |
ボリス・ゴドノフと 偽のドミトリー: 動乱時代のロシア |
図説・ロシアの歴史 |
ロシア音楽 事典
|
ロシア 音楽 史 I |
ブーシキン (佐々木彰訳) |
桑野隆 |
アッティラ・チャンバイ ティートマル・ホラント編 |
栗生沢猛夫 |
栗生沢 猛夫 |
日本・
ロシア音楽家
協会編 |
ホ
プローヴァ他著 森田稔・梅津紀雄訳 |
1957 | 2000 | 1988 | 1997 |
2010 |
2005
|
1995 |
岩波文庫 |
ありな書房 |
音楽之友社 |
山川出版社 |
河出書房 |
カワイ出版社 |
全 音楽譜出版社 |
プーシキンの戯曲は、それ自体で演劇の台本として使われてるが、23場もあるので、ムソルグ スキーはオペラ化にあたっては、このうち10場を選んでいる。ただ、最初のうちは「オペラ」という言葉を使っていなくて、 ミュージカルのようなものを考えていたようである。 | ボリスはきわめて難解だったが、この本を読むことで、やっとさまざま
なことが明瞭になってきた。興味深いのは、この本がロシア文化史の立場で書かれていることである。たとえば、(1)
偽ドミートリィを受け入れる風土、(2) 聖愚者という聖職者の姿、 (3) ロシア正教とカトリック教の対立、(4)
ロシアとポーランドの当時の情勢、(5)
ボリスという政治家の立ち位置、などが見えてくる。オペラの中身よりも周辺を知るのに大変有効な本。ボリスの理解、ムソルグスキーの理解に必
読ともいえる本。 |
あらすじ、リブレット(台本)対訳などが載っていて、ポケット
スコアのような重宝さ。後半はさまざまな資料集で、作曲者らの書簡ややりとりなどが豊富に取り上げられている。多くの専門家による分析が載っているが、あ
る事象に 肯定的な評論も否定的な評論も取り上げられていてバランスよい。ボリス・ゴドゥノフ
の音楽性についての理解には必読の1冊。 |
スムータ(動乱)の時代の解説本。当時の人々の暮らしや考え方、政治の仕組みや人物たちの様
子がよくわかる。僭称者がなぜ出てくるのか、そしてその僭称者がどうして本当にツァーリにまで上りつめてしまうのか、などの
分析に引き込まれていく。歌劇とはやや距離を置くものにはなるものの、ボリスの時代を知るには格好の書である。 |
ロシアの全歴史をコンパクトにまとめた本。簡潔な文章と豊富な写真(絵)が、読む者を飽きさ
せない。個人的には絵の多くが、トレチャコフの時代の画家の代表作であることがありがたい。当時の画家たちの主要なモチーフ
がロシア史なのだが、ロシア史を学びつつ、ロシア芸術への理解を深めることができた。ロシア音楽だけでなく、ロシア絵画の探
究にもこの本は手放せない。 |
ボリース・ゴドゥノーフという項目があり、見開きの2頁でコンパクトにまとめられている。執
筆は一柳富美子氏。実に要領を得た内容で、この歌劇を理解するために必要なロシア史なども盛り込みつつ、1稿と2稿の構成の
差などにまで言及している。 |
30頁がムソルグスキーに割り当てられているが、この内の16頁がボリス・ゴドゥノフを作曲 し、上演するまでの話になっている。また、これによると晩年、プガチョーフシチナの作曲も手がけようとしており、ボリス、ホヴァーンシチナと合わせての三作でロシアの150年史を描くことを予定して いたらしい。 |
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