Canon FX

文化祭や運動会の時に持ち歩き、高価なフィルムを惜しむようにしながら、友達や気になる女の子の写真を撮った。結構、いい写真が撮れた りし たのだ が、失敗も多くて、この頃は偶然に頼るところが大きかった。

狙って撮れるようになったのは、高校時代から。交換レンズなし、ストロボなし、三脚なしで、いつでもどこでも手持ち撮影だった。しか し、こ のシンプ ルな状況ゆえに、被写体との距離のとりかた、フレーミングの仕方、光の 入れ方と露出のテクニック、低速でも手ぶれをしない技術、早くて適切なピント合わせなど、基本的なことを覚え、それなりの写真を撮れるように なっていっ た。モノクロフィルムの現像、焼き付け、引き伸ばしも覚えたし、顕微鏡撮影も経験した。いろんなカメラやレンズに興味を持つようになり、カメ ラ店がよいも するようになった。

このカメラはキャノンＦシリーズの第一号機で、FDにもつながるレンズマウントFLを確立し、TTLでは無いが、露出計 を 内蔵したカメラだった。私にとってこのカメラでスタートしたことは幸運だったと思う。このカメラで中学校時代、高校時代のさまざまなイベント を写した。決 して大げさでなく、青春時代を記録してくれたカメラであり、写真の面白さを教えてくれたカメラだ。

大学に入ってから、オリンパス XA、キャ ノ ン Ａ−１、キャノンＴ７０ といったカメラを使うようになり出番は殆ど無くなったが、フィンランドではオーロラ撮影に使用した。

元々は、母が私のために武者人形を買うつもりで貯めていたお金で買ったのだという。母はずいぶん憤慨したらしいし、今でも、恨めしい言 い方をする。父はいいカメラだったんだ、といいわけをしていた。母には悪いが、父が武者人形よりもカメラをしかもＦＸを選んでくれたこと に感 謝している。 私 にとってかけがえのない カメラになっているからだ。