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休八写真館資料室

Borg レンズの使い方



Borg レンズとは、トミーテックの 天体望遠鏡である。

カメラを装着する と正立正像が得られることから、超望遠レンズとして使うことがで き、鳥や天体の写真を撮るの に重宝する。しかも、明るい単焦点レンズなので、撮れた写真の解像力は高く、Nikon や Pentax のカメラならば、AF化も可能。ただし、元々は天体望遠鏡であり、システム化さ れていることもあって、カメラレンズとは異なる知識も必要。そこで、Borg レンズをカメラで使うためのノウハウをまとめる。


■1.天体望遠鏡のレンズ設計

天体望遠鏡は、レンズ群が大きく前端と後端に分かれている。

前端が対物レンズ、後端が接眼レンズで、 間に長い鏡筒がある。鏡筒はただの空洞なので、非常に簡単な構造。顕微鏡、 双眼鏡なども同じような光学設計であり、接眼レンズの代わりにカメラボディを付けると、大判カメラとも同じような光学設計になる。

Borg system


単焦点なので、焦点距離を変えたい時は、対物レンズを取り替えるか、焦点距離を伸ばすエクステン ダー、焦点距離を縮める(=F値が明るくなる)レデューサーを組 み込む*1

鏡筒の長さは、焦点合わせのために、伸縮できる仕組みが必要である。単純に内筒と外筒がスライドするだけのドローチューブを組み込むだけでもいいのだが、精度をあげるためには、ヘリコイド式やラックピニオン式の合焦装置を組み込む。

カメラを付けるためには、接眼レンズ(=アイピース)の代わりにカメラアダプタを付 ける。カメラアダプタは、ニコン(F)、キャノン(FD, EF, RF)、ペンタックス(K, Q)など、各社マウントがある。また、Pentax や Nikon ならば、さらに AF コンバー タ*2を 付けるこ とで、AF化できる。

なお、Borg の場合、鏡筒直径に種類があって、直径115mm、80mm、60mm(M57)、45mm、32mm(ペンシルボーグ)など、使いたい対物レンズに合 わせて選ぶ。鏡筒の長さもレンズの焦点距離に合わせて適切なものを選ぶ必要がある。

*1 明るくするためには、クローズアップレンズの組み込みも可能。カメラはF値が小さいほど(=明るいほど)、合焦しやすいのと解像度が上がるので、レデュー サーやクローズアップレンズの使用は割とよく行われる。逆にエクステンダーは暗くなるので、望遠鏡の世界ではあまり好まれていない様子。

*2 AFコンバータは、MFレンズをAF化するために
各カメラメーカーが作っているアダプタで、Nikon と Pentax の製品がある。MFレンズとカメラの間に入れて使うのであるが、Borg レンズの場合も、ほぼ同様で、鏡筒部(または合焦部)とカメラの間にいれて使う。マウント部の加工が必要な場合もあるので注意。


■2.Borg レンズの特徴

軽量 構造が単純なので軽量となり、手持ち撮影や一脚などでの使用も可能。三脚利用にしても軽量のもの でよい。機材全般を軽くできるので歩き中心の 撮影行に重宝する。
分解できる もともと、パーツを組み合わせて天体望遠鏡を作る設計(Borg 独自の設計思想)なので、カスタマイズが容易であり、収納時にはばらばらにできる。ゆえに
  1. 防湿庫などで保管するのにもレンズ部だけを取り出せばよいのでとても便利。
  2. 寒冷地での撮影後、室温に戻すと結露するので、チャック袋などに入れ、密閉状態で室温に戻す。この時も分解できるの は便利。
正像で写る 望遠鏡は、天地左右が逆像になる。しかし、Borg + カメラでは正像になるし、ピントのヤマも捉えやすく、天体や野鳥を撮るのに好適。
像がシャープ 超望遠に特化した設計で、かつ単焦点なので、驚きのシャープネス。
AF化できる ニコンやペンタックスなどは、AF コンバータ(MFレンズをAF化できるアダプタ)*2を 販売しており、これを Borg に組み合わせるとAF化できる(AF-Borg)。


■3.Canon カメラの使用

Canon からは AFコンバータが出ていないので、AF-Borg としての使用ができない。EOSシリーズ(EFマウント)が始まったとき、それまでのFDマウントのレンズが使えなくて多くのユーザーががっかりしたはず だが、それを思い出す。とはいえ、古くからの Canon 党で機材はそろっていたので、まずは、EOS Kiss X5 や、Kiss X7 を装着して使用。

フォーカスは手動。絞りは無いので、自動で開放絞り優先AE になるようだ。

EOS
              Kiss X7 / 東京クルーズ、ヒミコ号

隅田川のヒミコ号。手持ち撮影。奥行き感がいい。
Canon EOS Kiss X7 +
Borg 67FL 300mm F4.5 *3
EOS
              Kiss X7 ー 隅田川テラスで休むカモメ

隅田川テラスで休むカモメ。一脚使用。
Canon EOS Kiss X7 +
Borg 67FL 300mm F4.5 *3

*3 焦点距離は、APS-C で 1.6倍のびるので、480mm 相当になる。


■4.AF-Borg

2007年、藤野孝之さんという方が、Pentax + Borgで 撮った素晴らしいカワセミの写真を価格コムに次々と発表し た。これが、衝撃的な「写り」だったため、多くの野鳥愛好家 の心を掴み、新しい Borg ユーザーや Pentax ユーザーを生んだ。

さらに、この年の12月、藤野さんは AFコンバーターを挟むことで、Borg を AF 化できることにも気づいた。"AF-Borg" の誕生である。

ただし、AF コンバーターを作動させるにはふたつの課題があった。次のようにクリアされた。
  1. Borg レンズの最後端にK マウント用のカメラアダプタをつけ、AF コンバーターをつけ、カメラを付けるのだが、普通にやっても AF コンバーターは作動しない。作動するには、Kマウントにある信号ピンが装着を検出できるようにする必要があり、カメラアダプタの塗装を落とす(信号ピンが あたる部分の)簡単な工作をする。これに対して、後に塗 装のないマウントも商品化された。
  2. AF コンバーターの作動には F2.8 以上の明るさが必要。ただし、Pentax カメラのAF機能が向上して F4.5 付近でも合焦できるようになった。それで、これに応じた明るさ(F4.5 以上)の Borg 製品を使うか、レデューサーやクローズアップレンズを入れて F値をあげる工夫をする。

■5.Pentax カメラの使用

Pentax カメラの K シリーズは、次のような特徴もあって、Borg との相性が非常によい。

  1. 防塵防滴なので、天体写真や野鳥撮影など、野外撮影に向いている。
  2. ボディ内手ぶれ補正があるので、Borg を手持ち撮影しやすい。
  3. AFコンバーターを付ける と  Borg を AF化できる。
  4. EV -3 から測光でき、F4.5 から合焦するので、木陰などに居 る鳥や天体を撮るのに好都合。
それで、Pentax カメラ+ AFコンバーター + Borg レンズ = AF-Borg で写真を撮るようになった。Pentax 2台、Borg 2台 での体制である。

野鳥を撮る時は、Pentax K-5II + Borg 67FL (300mm f4.5) がメインである。Borg 67FL は軽い(689g)ので手持ち撮影が主である。焦点距離が伸びて 720mm相当にもなるが*5、SR(手ぶれ補正)のお かげでほとんど手ぶれはない。ビューファインダーのみで写真を撮るから、液晶ファインダー固定であっても支障がない。もう1台の Pentax K-70 には通常のズームレンズを付けて、より近距離の写真や飛翔の写真を撮れるようにする。

天体を撮る時は、Pentax K-70 + Borg 77EDII (510mm f6.6) がメインである。Borg 77EDII は重い(1.9kg)し、焦点距離が伸びて1320mm相当にもなるので*6、三脚撮影が主である。液晶ファインダーがバ リア ングルになっているので、天頂付近などの写真を撮るのに都合がよい。もう1台の Pentax K-5II は広角や標準レンズを付けて、夜景や星空写真を撮るのに使う。

なお、AF-Borg として使う時は、概ねマニュアルで合わせてから、シャッターボタン半押しでAFを作動させる。仕上げのフォーカスをAFで行うような(いわゆるAFエイ ド の ような)使い方をする。また、カスタムメニューの「 絞りリングの使用」 をオン (2) にする必要がある。

カワセミ

カワセミ。手持ち撮影。
Pentax K5II + Borg 67FL 300mm F4.5 *4
奥日光でサル

ニホンザル。手持ち撮影。
Pentax K5II + Borg 67FL 300mm F4.5 *4
Moon elilipse

2022年11月8日の皆既月食。三脚使用。
Pentax K70 + Borg 77EDII 510mm F6.6 *5
Moon elilipse

左の写真の拡大。天王星が見える。15分後に天王星食も始まった。
Pentax K70 + Borg 77EDII 510mm F6.6 *5

*4 焦点距離は、AF-コンバータで1.7倍、APS-C で 1.5倍のびるので、720mm 相当になる。
*5 焦点距離は、AF-コンバータで1.7倍、APS-C で 1.5倍のびるので、1300mm 相当になる。


■6.周辺機器

照準器 広い視野を確保できるので、鳥が飛ぶところなど撮るのに便利。アイサイトが付いているものが よい。取り付け方には何通りかあるが、ホットシューの上に付けた照準器を覗きながら撮るのが好み。使用前のていねいな照準合わせは必須。
レリーズ
三脚などに付けて撮影する時は必須。JJC のタイマーレリーズを愛用。
赤道儀
天体を撮るときに使う。ケンジさんのハヤブサIIを愛用。
三脚 Borg 67FL は軽いので(670g)手持ちメインだが、Borg 77EDII は重いので(2.2kg)、堅牢な三脚が必須。長らく愛用していた LPL テクノボーイでは強度が足りず、Manfrotto の耐荷重 8kg の三脚に変更。
リュック
登山用のリュックの中に補強材と緩衝材をいれ、カメラと Borg レンズを組み合わせたまま運べるようにした。予備のカメラやレンズもいれるとそれなりの重さとボリュームになるが、登山用のリュックは背負いやすく、腰の 負担も軽い。
小物
天体観測の時は、小さなライト、コンパス、星座早見表などが必要。予備のバッテリーも必須。天気 の急変に備えて、ポンチョもあると安心である。


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