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休八写真館資料室

C レンズとは



■1.C はシネマのC

C-lens
図 1.C & CS レンズの規格

ビジコン管

図2.ビジコン管

C
                  レンズの投影サイズ
図3.投影サイズ
C レンズ/C マウントなんて知らないよ、という人も多いと思うが、工業カメ ラや監視カメラなどで広く使われているユニヴァーサル・マウントである。事実上の統一規格といってもよいほどだ*1

もともとはシネカメラ用の規格で、C は Cinema から来ている。1920年以前に作られた
マウント規格であり、100年以上も前*2の マウントが いまだに現役なのである。
  1. 直径 25.4mm (1 inch)ネ ジピッチ 0.794mm (1/32 inch)、フ ランジバック 17.526mm (0.69 inch) *3スクリューマウント(図1)。
  2. シネカメラの時代は フィルム、TVカメラの時代はビジコン管(図2)、現在の工業カメ ラ や監視カメラでは CCD や CMOS と変遷したが、撮像のサイズはいつも同寸。
  3. 16mm や 8mmフィルム向けに作られたので、イメージサークル(撮像円)が小さく、マウント径も小さい。ゆえに、大 口径レンズを作りやすく、しかも、安価である。
  4. シネカメラ用であったの で、絞りがついていないレンズも多い。レ ンズが小さいの で、3-5本を素早く切り替えられるようにターレットなどを つけたシネカメラもあった。
  5. 規格はオープンなので、多くのメーカーが製 造に参加した。
フィ ルム時代のCマウントレンズには、アンジェニューやシュナイダーなどが名玉を作っていて、オールドレンズファンには人気である。また、現 在の工業用 C レンズは、シャープで明るいレンズが多く、これらで撮影した風景には独特のよさがある。

*1 顕微鏡に取り付けるカメラも実はC マウントで接続する。顕微鏡の三眼鏡筒の先にCマウントのアダプタを付けて C マウントカメラを取り付けるのである。
*2 1920年代のCマウントは、フランジバックが統一されていなかった。1932年のコダック 35mmフィルム発売に合わせて、フランジバックが 0.69 inch と定まったようである。
*3 フランジバックとは、マウント面からフィルム面までの距離をいう。また、フランジバックが短い(12.5mm)、CS マウントもある。CS マウントにCレンズを着けたいときは、5mm 厚の中間リングを入れて使う。


■2.Cレンズの楽しみ方

マイクロフォーサーズ・カメラのおかげで、オールド レンズのブームが来た。フランジバックが短いため、さまざまなレンズを装着して、撮影できるようになったからである。そして、C レンズ・アダプタもあって、シネカメラ時代のオールド C レンズを楽しむ人も現れた。

だが、実際に撮影すると真ん中に小さく像が写るだけである。「あれ れ、何か設定を間違えたかな」と思うけれど間違っていない。Cレンズの投影サイズ(
1/2型 と2/3型の2つが多い*4) は、APS-C やマイクロフォーサーズと比べるとずっと小さいからである(図3)。

つまり、Cレンズの投影サイズ(イメージサークル)と同じか、ちょっと小さいぐらいが丁度よいのである。

そこで、1/2.3型のセンサーを使っているコンデジのレン ズを外して、C/CSアダプタリングを取り付けてみた。いい具合にCマウント・カメラができたEZ F928改EZ F531改改造手順)。いろいろ なC レンズを楽しむことができるようになり、大変、喜んでいたのだが、使っているうちに、ボディの 剛性が足りないことや、工作やレンズ交換の時 にセンサーにゴミが付きやすく、除去するのが難しいことがわかってきた。もっといいカメラが欲しい、と思うようになった。

そんなところに、Pentax Q の登場である。Pentax Q のセンサーは 1/2.3型 (後に1/2型も出た)であり、ボディ剛性も電子シャッターの性能も申し分ない。さっそく、Pentax Q で C レンズを使うようになった。
ボディも レンズも小さいので、交換レンズを5-6本持ち 歩いても、かさばらないし重くない。 監視カメラや工業カメラなどに固定して使われているCレンズたちを自由に持ち出して、撮影に使えるのは楽しいし、ちょっとした爽 快感がある。

*4
Cレンズには、1型対応、2/3型対応、1/2型 対応、1/3型対応などがある。広角レンズでは1/3型対応になることが多く、それらを使って の撮影は画像周 辺に影が出るので注意。解像度はせいぜい 5 メガピクセル(500万画素)であるから、Q 専用レンズなどと比べるとシャープさに欠ける。


■3.よく使うブランド

旭光学の Cosmicar (コズミカー)
一番使うレンズ。そのまま では距離が合っていないことが多く、購入後にレンズを分解して調整するのが常である。しかし、同じペンタックス製品だからか、デザイ ンや大 きさが Q にぴったりで一体感がある。しかも、大口径などは、前玉が大きく、なかなか見栄えがよい。撮れた写真はM42時代の Takumar レンズの色調や解像感を思わせるもので、ちょっと懐かしい。レンズの解像度が撮像素子の解像度よりも下回るからか、画像がやや粗い。 しかし、決して荒れた 感じではなく自然なボケ具合であって、人間の目で見たものに近いような感じがする。
中外貿易の Computar (コンピューター)
安くて高品質。ヤフオクなどでは、Cosmicar と並ぶ人気ブランドだと思う。メーカーは読みを「コンピューター」としているが、コンプターと読む方が自然な気がするし、Computer との区別もつく。
日東光学 Theia (シーア)
Theia の超広角レンズ (1.3mm F3.0) は、超広角でありながら、直線性が見事に維持されていて、面白い写真が撮れる。Cosmicar の人間的な視界とは違って、ロボット的な視界といえるかもしれない。ただし、天地左 右逆像になるので、撮影時は慣れが必要だし、F3と明るいので、フォーカスが意外とシビアで、精細な液晶でないとピントの甘い写真になってしま う。ただ、そうした難しさもカメラの楽しみでもあって、シーアはお気に入りのレンズ。1/3型対応なので、四隅にケラレが少しでるが そんなこ と は 些細なことだと思えるほど、シーアで撮るのは楽しい。天地左右逆 像の動画でもムービーメーカーで簡単に正像にできることがわかってからは、動画も楽しんでいる。マウントアダプタは、Kipon 製を使っているが、工作精度が高く、質感もあり、レンズとのデザインバランスも良いと思う。
Pentax Q / Cosmicar
              50mm F1.4

柘榴の実。
マクロ撮影のような使い方ができる。色もいい。
Pentax Q + Cosmicar 50mm F1.4 (
35mm換算 275mm)
Yashica EZ F531C

相生橋から見た永代橋。
Yashica F531改 + Cosmicar 16mm F1.4

(35mmカメラ換算で90mm)

C-mount Yashica EZ F928

佃から見た中央大橋。背景に完成間近のスカイツリー。
Yashica F928改 + Computar 8mm F1.4 
(35mmカメラ換算 45mm)
Pentax Q / Theia 1.3mm F3

稲森神社で
1/3 型対応なので、四隅に小さなケラレが出る。
Pentax Q + Theia 1.3mm F3
(C35mm 換算 7mm)

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